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アミクとカンズのクラシック音楽の旅【6】〜バロック音楽の完成~

松田 亜有子「クラシック音楽全史ビジネスに効く世界の教養」を参考にしております。

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Q:Quinze(カンズ)さん

A:Amique(アミク)さん

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Quinze(カンズ)さんとAmique(アミク)さんは最近バーで知り合った友達。Amique(アミク)さんがクラシック音楽を教える大教授であることから、彼から色々クラシック音楽について教わるQuinze(カンズ)。アミクは今日締め切りの新学期の授業カリキュラムを提出し、いつものバーへと向かう。「今日は、モスコミュールの気分かな…」バーに踏み込んでいく、するとカンズの隣に素敵な女性がいるではないか…

A:やあ、カンズさん。また出会えたね。今日は…素敵な方ともご一緒で。

Q:アミクさん!待ってたよー!彼女はミウさん。

A:こんばんは、ミウさん。

(ミウは少し照れながら笑顔で応える)

Q:彼女は生まれた時から、おしゃべりができないみたいでね。でもうちの会社では一番よく働くんだ。本当に毎日助かっている。今日はそのご褒美で連れてきたよ。アミクさんの楽しいクラシック音楽の講義にも、興味があるみたいでね。

(ミウがうんうんと頷き、小さい耳にかけられた白いお花が繋がっているイアリングも一緒にふんわりと揺れた)

A:それは大変光栄です。ミウさんは、クラシック音楽をよく聞かれるんですか?

(ミウは右手の親指と人差し指を丸めて、「少しだけ」と言おうとした。相変わらず、照れながら。それから、耳を指し、その後、心に手を当てて、肩をぐんと落とした。)

A:音楽が安らぎを与えてくれる、そうだね。僕もそう思うよ。

(ミウは笑顔で頷いた)

Q:さあ、そろそろ始めよう!今日はどんなお話かな?

A:今日は、もっと北に行って、ドイツの話をしようと思うんだ。ドイツというと、たくさんの有名な作曲家が生まれたと頃だけれど、一番有名なのが「バロック音楽」なんだよ。

Q:聞いたことある!

(ミウもうんうんと頷く)

A:これまで、イタリアとフランスのお話をしてきたんだけどね。イタリアは、東方貿易からの繁栄で音楽が栄え、フランスは一人の非常に権威強い王のもとで一代の文化が花びらいた。しかしこの時のドイツがどうだったかというと、30年戦争でひどく荒廃していたんだ。

Q:30年戦争か。あれだよな、ハプスブルク帝国内でカトリックとプロテスタントが戦ったみたいな。人口が極端に減ったと読んだことがあるぜ。

A:そうそう。30年戦争が停戦した後、オランダとスイスは独立されたけど、ドイツは1つの国となったのではなく、300以上の領邦の主権が認められ、神聖ローマ帝国は有名無実化するんだ。そうすると国のまとまりがなく、経済社会はひどく停滞したままになってしまった。そこで、17世紀末にやっと復興。バッハとヘンデルは生まれ、18世紀前半に活躍する。

Q:国の興亡ってのは、歴史の常なんやな。

A:でね、ここでもかなり属人的な要素が強く働くんだ。ヘンデルは、音楽家でありながら、豪快でやり手のビジネスマンだったんだよ!幼い頃は父から音楽家になることに反対され、それでもこっそり曲を作っていたのだとか。大学でオルガン奏者に勤めて、大学卒業後は世界を旅立ち、その中で音楽を書き続け、どんどん有名になったのがヘンデル。例えば、ハンブルクでは最初のオペラ「アルミーラ」を発表。イタリアではオペラを書き、「アグリッピーナ」をヴェネツィアで初演。その後ドイツに戻ると、ハノーヴァー宮廷楽長に就任し、イギリスへ渡る、その後、完全にイギリスに活動拠点を移して、42歳でイギリス人へと帰化するんだ。

Q:ヘンデルっつううのは、「私を泣かせてください」っていうのが有名だよな。

A:そう、それもイギリスで書いた音楽なんだよ!

Q:ちなみに、彼はなぜイギリスに??イギリスっていうのは同じくそういう文化が栄えていたのかな?

A:イギリスももちろん、オペラなどが栄えていたんだ。でももっと大きな理由は、ハノーヴァー時代の雇用主である選帝侯が後にイギリス国王ジョージ1世として即位したために、一緒にイギリスに移り、帰化したというのが考えられているね。きっと、とても気に入られていたんだと思うよ。

Q:なるほどな。で、なんでヘンデルはビジネスマンって言ったんだい?今までの話だと、そんな気はしなかったが…

A:ちょうど話そうとしたところだよ!彼は初めて、音楽界の予約料・入場料を得る方法を導入したんだよ。「王立音楽アカデミー」という工業組織を作って、会員は「シルバー・チケット」を購入でき、シーズン中でも毎晩オペラを鑑賞できる特典がついていた。当時のロンドンは投機ブームで、株投資で富を増やす実業家の貴族が多かった。だから、彼のそう言ったビジネス手法も評価されていたんだな。

Q:なるほど。今でいうVIPクラブみたいなもんか。音楽家がそういうの考えるのはおもろいな。

A:コスト削減っていう面でも、彼はよく考えているんだ。彼はビジネス収益が不調になると、「オラトリオ」という英語で歌われる宗教音楽を作るんだ。これは独唱や合唱、管弦楽で演奏するため、オペラよりは上演費用を抑えられたんだ。

Q:なんだか今でいう、村上隆みたいな芸術家かな。ビジネスとして芸術を考える芸術家というか、ビジネスマンというか。ちょい夢が薄くなった気がするけど…

A:少し、悲しさもあるが、世の中はお金で回っているからね。ちなみに、「メサイヤ」は知ってるかい?これも必聴だよ。

Q:ハレルーヤ!!

(ミウは相変わらず、微笑んで二人を楽しそうにみていた)

A:ところで、ヘンデルはこの通り、音楽とビジネス両方できる肩だったので、ひどく忙しく、生涯独身を貫いているんだ。

Q:自由人やな、俺と一緒じゃないか!(笑)

A:今日も遅くなったのでここまでとしようか。バッハは次にお話するよ。ミウさんも、おじさん二人の間にいて、疲れたでしょう。

ミウは、いえいえと頭を軽く振り、手を胸に当てて腰を曲げた。「ありがとう」と言っているのだ。アミクは、なんていい子なんだと感心した。

(続く)

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