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Who am I①

ねぇ、素朴な疑問なんだけどさ

それでいいの?私。



■超さらっと自己紹介


私って在日朝鮮人。

幼稚園から高校までを朝鮮学校で学んできた。

とは言っても
どうにもこうにも不真面目な学生で
どの科目も全然ダメ。

でもなぜか
言葉を覚えることや文学に関心があったので
国語は大好きだったし、自信もあった。
(ちなみに国語とは
一般的に皆さんが思い描く、
日本学校と同じような内容の国語と
韓国語の国語
(基本的なハングル、文法、表現力、文学など)の
二種類)

日本語も韓国語もどっちも大好きだったけど
特に、
慣れないハングルで作文を書けというなら
腕が鳴ったし
新しい単語を覚えるのも楽しかった。


■社会人になって


正直なところ、
差別って蔓延してるし
ただでさえ生きにくい現代社会で
朝鮮人として生きるのは
かなりハードモードだと思う。

なので

朝鮮人であることを明かさないということは
自己防衛するうえでは必要なことかもしれない。

しかし、心に狼を飼っている私は
たとえ不利になろうと、異端に思われようと
頑なに本名を名乗り続け、
朝鮮人として、
そこそこの誇りを持って生きてきた。



ところがどっこい!



■BTSと出会って絶望した


BTSと出会ったのは
2020年11月の中頃。

沼に落ち、
たくさんのarmyに囲まれ
曲や過去のエピソード、
バラエティー番組の存在などを
徐々に知っていく一番楽しい時期に私はあろうことか


酷く絶望していた。




まずひとつ。
学校で学んだはずなのに
BTSの発する韓国語が完全には聞き取れない

そしてふたつめ。
彼らに愛のメッセージを送りたくても
不自然にすら思える堅苦しい文章しか書けない




・・えっと

朝鮮人として
そこそこの誇りを持って生きてきたんですよね?

ネイティブを前にすると、この程度なのに?

「教科書」から抜け出せもしないのに?





「わぁー!ご立派!」


散々自分自身に皮肉られ腹が立った私は
Twitterでハングルを勉強している人がいるか
探してみた。

好奇心ではなく
プライドを保つためだったように思う。

安いプライドでも
崩れる時の音は大きいもので
半ば焦燥していた。



そうして出てきたのは

ノートやテキストにびっしり書き込まれたハングルと

「トピック6級合格しました!」
「ハングル検定1級所持」などの声。


しかも
ほとんどが日本の方で
中には独学の人もいて。


根がヤンキー気質の私は
すぐさま勝負と結び付けた。


「負けたの・・?この私が・・?」

「学校に行ってたのに・・?」

「国語が得意だったのに・・?」

次から次へと沸き出てくる自問は
答えを見つけることもできず
無惨に散っていく。





私は呆然としながら考えてみた。


私って何者なんだろう

日本で生まれ育ったものの
日本は自分の国ではない。

だからと言って
自国の言葉も流暢に操れない。




なにもしらない。
ネイティブならではの文化や風習なんかも。

このまま中途半端なまま
安い誇りを掲げて生きていくの?

そもそも誇りって?
本名でただ生きてるだけが誇り?

私は小さな怒りと大きな悔しさを原動力に
自らを奮い立たせることにした。


ーーーーーーーーーーーーーーー

数日後。


ℚ、自信をつけるために、
ハングル検定を受けられるとお聞きしました。
一度絶望されているわけですから
受験も決して楽ではないと思います。
今の率直なお気持ちをお聞かせください。

A、ま、合格するよね。


ℚ、随分と強気な発言ですが、
何か根拠はあるのでしょうか・・?

A、私だから、かな。


ℚ、と、言いますと・・?

A、あのさぁーー
この私が落ちると思う?私を誰だと思ってんの?

(脳内独占インタビューより一部抜粋)



勉強?
やればいいだけじゃん。


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ハングル検定は
最高難易度が1級。
これがどれほど難しいかというと

①相手のみならず、場面や状況までを考慮した上で、的確に意図の実現ができ、報告書やエッセイなど、ほとんどのジャンルを考慮したスタイルの選択も可能である。
②職業上の業務遂行に関連する話題についても取り扱うことができる。
③幅広い話題について書かれた新聞の論説・評論などの論理的にやや複雑な文章や抽象度の高い文章、様々な話題の内容に深みのある文章などを読んで、文章の内容や構成などを理解できる。
④要約や推論、論証や議論など、情報処理的にも高度なレベルが要求される処理を、韓国・朝鮮語を用いて行うことができる。
⑤類推の力を働かせて、知らない単語の意味をだいたい把握できる上、南北の言葉の違いや頻度の高い方言なども理解することができる。
連語や四字熟語、ことわざについても豊富な知識と運用力を
持ち合わせており豊かな表現が可能である。
(公式より引用)

一級は、ネイティブにとっても難しいと聞いたことがある。
しかも一級のみ、筆記の他に面接もあるとか。

つまり、
翻訳家とかの専門職を目指す人や、
変態級の韓国語オタクじゃないと
かなり厳しい。


てことは…


一つ下の2級が妥当かしら・・!




某:突然すみません…。
私は通りすがりの、ちょっとだけ
ハングル検定に詳しい者です。
いまあなたの脳内に直接語りかけています。
聞こえますか?

聞こえますよー。


某:大変申し上げにくいのですが
せめて準2級にされたらどうでしょう・・?
準2級と2級の間には
超えられない程の高い高い壁がありまして
並大抵の努力では受かりません・・。
翻訳の難易度もそうですが、
一級同様、ことわざや慣用句、
南北の言葉の違いも絡んでくるので、、


えっ。そんなに難しいんですか…!

じゃ私が2級に合格したら
レジェンドってことですよね!
ありがとうございます!奮い立たせてくれて!



某:いや、あの、、、



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ハングル検定2級を受験すべく
最初に買ったのがこれ ↓

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文法、語彙、表現、読解
それから
翻訳、作文、書き取りなどが
この一冊にまとめられている。


お?模擬テストがついてる!
やってみよ!
まずは己の力量をチェックしなきゃね!





数分後、

私は膝から崩れ落ち
ひどい現実を容赦なく叩きつけられた。


ひとっつもわからなかった。


まず、問題文に出てくる単語や表現が
全然わからない。


翻訳問題では
文法力、語彙力のなさから
たった1文字も書けない。


私はこれまで何を学んできたの・・?

かなり動揺したが
大きな敗因は語彙力のなさにある。

ならば
まずは語彙力よ!


勉強の方向性がわかっただけでも
勝利は我にあり!



それから私は
本に掲載されている、
聞いたこともない動詞や形容詞、
単語などを
片っ端から単語帳に書き

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全て丸暗記した。

毎日、少しだけ早起きをして
暗記をすることから1日が始まる。

仕事中は単語帳をポケットに忍ばせ、
エレベーターの中、トイレ、
事務仕事の合間にも暗記をし(働け

帰宅後もひたすら覚えた。


その多くが初めて覚える言葉だったが
元々暗記は得意なので
苦ではなく、
楽しみながら覚えたように思う。


さらに語彙力を深めようと
こちらも丸暗記。

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これは
鬼の1級も範囲に含まれてはいるが
ついでに覚えたらいいじゃん!と
超前向きに取り掛かった。

ことわざや慣用句を除いての語彙だけで
約300ページ。
1日5ページをスマホのカメラで撮影し

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おなじように合間合間にひたすら暗記し続けた。


時折、あまりの多さに挫けそうになったが
覚えたばかりの言葉を
BTSがバラエティー番組などで使ってたりすると
勉強の成果が目に見えてわかって
心から嬉しかったし
大きなモチベーションにつながった。


しかし

語彙が増えていく喜びと半比例に
疑問と不安も増えるのだった。


つづく。

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