In Stars And Time 感想
プレイタイム約19時間+エンド分岐見るためにAct4からやりなおして4時間
クリアまで
いわゆる「ループもの」のナラティブRPG。
ナラティブの定義については置いておく
俺もなんかストーリー重視のやつ 程度の認識しかない
つまりところUndertaleとかOmoriみたいなのが楽しめればいけます
評価は10/10
誰かにとってはLifetime best gameの一つになり得る。
プレイには苦痛を伴うが、この手のゲームが好きならエンディングまで辿り着けるはず。
■「本物」のループものの"体験"とは
以下それなりにネタバレあり
ゲームはラストダンジョン突入前日から始まり、いわゆる「決戦前夜」の各イベントを経て、翌日のダンジョン突入~攻略までの2日間を、主人公であるシフランだけがループし続けることになる。この手の話のお約束として、仲間たちはループの記憶を持たない。
ループの条件は、死ぬか、それに類する状態になること。
最初こそ死んだ瞬間に驚愕したりするものの、プレイヤーもシフランも死に対して急激に鈍感になっていき、「ちょっとショートカットしたい」みたいなふざけた理由で雑に自殺するようになる。
このゲームではループ脱出の糸口を探す中で、同じようなイベントや会話を執拗に繰り返すことになる。もちろん、ループを重ねて情報が蓄積される毎にじわじわと展開は変わっていくものの、仲間達と最後の時間を過ごし、さあ行くぞ!となる流れはほぼ変わらない。
イベントはこちらからアクションを変えない限りはほぼ1周目と同じ形で進んでいく。シフランはいわゆる「喋らない主人公」ではないので、同じ反応・会話を返すことに段々と苦痛を感じ始める。もちろん、そのようなイベントは面白くなく、退屈であり、発生させたそれらを実際にボタンを押して「処理」するのはプレイヤーなので、シフランとプレイヤーが受ける苦しさはかなり高いレベルでシンクロしている。
街を出る前に仲間をより強化したいのであれば、必須のイベントに加えて、いわゆる「覚醒イベント」をこなしてもよい。ループを進めていくつかのイベントをクリアし、仲間の本音を聞き出し、相互理解を深めることで超強力なスキルが手に入る………が、このスキルはループの度に失われるので、ダンジョンに覚醒スキルを持ちこむのであれば、その度に同じ(味のなくなったガムのような)感動的なイベントを「こなす」ことになる。
この覚醒イベントに対しては通常の既読メッセージの早送り機能である「聞き流す」を超えた「イベントごとすっ飛ばしてスキルだけもらう」が使えるので、2回目以降は別に見なくても済むのだけど……本当にそんなことができますか? 仲間は お前と 話してるんだぞ
また、ラストダンジョンの中でもループを脱する手がかりを探すため、館の中を血眼になってうろつくことになる。それでも大半は同じイベント、同じ会話が発生し、どんどんうんざりしていく。試行錯誤したり、明確に「これをやってみよう」という目標が示されているうちはまだ希望を持てるが、あれこれと手を回した末に街に戻された瞬間の絶望感、全てを忘れている仲間たちとのやりとりを再度こなすうちにずしりとのしかかってくる虚脱感は、すぐにシフランだけのものではなくなる。
創作において「ループもの」は人気のジャンルだとは思うのだけど、あれは摂取に耐えうる状態になるまで大幅にカット・編集されている。同じ状況を何度も何度も繰り返しているのを見るのは退屈だから。同じセリフを聞かされるのは苦痛だから。ループを打開する瞬間にこそカタルシスがあり、あんまり"溜め"られすぎても困るから。それはそう。だから編集されている。でも、それでコンテンツの消費者は主人公が苛まれている苦痛の何割を受け取ることができるのか?
退屈と苦痛の真綿でゆっくりと首を締めあげられる感覚は、もはや「体験」のレベルと言っても過言ではなく、それだけに、ループを重ねてどんどんボロボロになっていくシフランに対する感情移入が素晴らしい深度で完成している(これは間違いなくゲームの翻訳精度の高さにも起因していると思う。ゲームに翻訳の賞があるのなら間違いなくブっちぎりで2023年度優勝。架け橋ゲームズさんありがとうございます)。
この手のゲームで最後まで辿り着く動機として、「主人公やその仲間がいいやつだからグッドエンディングまで連れて行ってやりたい」というのがあり、その条件についてはプレイすればあっという間に満たされるので、全体的には割としんどいゲームなんだけど最後までプレイしきれると思います。
全体的に非常に高いレベルでまとまっている本作、プレイしない理由はどこにもありません。MUST BUY
とは言えNot for youになりうる可能性はあるので、まずは体験版からでも
どこかでバズって300万本位売れてくれねえかな…
■以下エンディングまでの内容を含む雑感・ネタバレ
◯戦闘
・ループするとシフラン以外はレベルがリセットされること
・シフランだけが強くてもそこまでゲームの難易度が下がるわけではないこと(特にラスボスはグー属性なので、どちらかというとイザボーとオディールのサポートや、アイテムを投げまくったりする役割になりがち)
・味方に自分のターンを渡せるキャラが2人いて、戦略性があること
・ジャックポットスキルで全体のHPが大回復すること
・仲間の覚醒スキルを持ち込むのがめんどくさい(特に一番強いイザボーの覚醒スキルは他の仲間の覚醒スキルを全部開放しないといけないので…)上に罪悪感で縛られており、更に雑魚や道中ボスに使うにはオーバーキルすぎる性能なので、実質ラスボスに勝てない・苦戦する場合の救済要素でしかないこと
・アイテムの所持個数がセーブポイントに記録されるので、ループの度に使いまくっても困らないこと
などなど、戦闘そのものは割とシンプルなツクール製ATBバトルながらも、各要素がちゃんと練られているので全体的にはバランスが取れていて好評価。同じ敵を相手にするのは退屈で苦痛だけど、つまらなくはない。
ラスボスは結構強くて、勝てないと進行が本当にスタックしてしまうので、サクっと勝ちたいのであれば「爆弾」を持ち込むのが良い。街の東のブラインドさんの家…というか物置の中に「長い何か」が、館3Fのミラベルの部屋、ルームメイトのクローゼットに「短いガジェット」が、ラスボス直前の通路、時が止まっているミラベルのルームメイトの手に「秘密の素材」があり、爆弾を作成できる。
爆弾を投げると敵全体に約3500ダメージが入るので、ラスボスが時の雫を召喚したタイミングで放り込めば一撃で処理しつつラスボスのHPも大幅に削れてかなり楽になる。爆弾をどのタイミングで作れるようになるのかは知らないんだけど、多分「合言葉で開くドア」を開けられるようになったタイミングでもう作れるはずではある。
あとはイザボーに紙細工グローブを装備させて通常攻撃をパー属性にすること、アイテム(特にしょっぱスープ)をケチらず使いまくること、ラスボスにスローをかけると解除時に全体大ダメージが発生するので、スローを入れるのであればHPを削られた状態で放置しないこと…あたりを気にしていれば勝てるはず。
むしろ5人で戦うラスボスより、ラストバトルのシフラン一人で戦う状況のほうがキツかった。Lv99のHP1500とは言え、防御属性的に不利なことは変わらないのでHPとスキルのクールダウン管理をしっかりしないと普通に負けると思う(追記:死んでもその場で復活するイベントバトルでした)。館にビンの形で落ちているアイテムはシフランが無視するので拾えないけど、イベントを伴う形のアイテムや、かつて装備品が収納されていたクローゼットに入っているアイテムは拾えるものもあるので、それらを回収しておかないとかなりカツカツかも。
◯探索
館の構造自体はそこまで複雑ではないのでマップはすぐに覚えられるが、どこに何があって、それをいつ使うのか?はゲームの進行によってまちまちなので、ある程度マッピングというか、何階に何があったか程度のメモ書きをしておくと楽。この辺りは「脱出ゲーム」っぽさがある。
敵はシンボルエンカウントなのに視野が360度で、かつ動きも素早いのでかなり回避しづらい。ボスだけ倒せばラスボスを撃破するのに十分な量の経験値を貰えるのだから、雑魚と戦う必要なんか全くないんだけど、これも「うんざり感」を演出するための要因の一つなんだろうな……
敵とシフランが接触しないと戦闘にならず、敵は仲間を乗り越えることができないので、仲間を使って敵とシフランのあいだに壁を作ると敵避けしやすくなるが、これはこれでそこそこ難しい。中盤を過ぎたあたりで敵が逆に逃げていく「記憶」が手に入るが、手に入るのが若干遅いのと、逃げていく敵の軌道があんまりよくなくてエンカウントしてしまったり、そもそも記憶の付替えがめんどくさかったりと中々もどかしさがあった。
◯LGBTQ+
Steamのタグにもある通り、要素あり。
ただ、舞台となるヴォーガルド自体が多様性の理想郷のような国(変化・流動性・破壊を良しとする教義を国教としている)なのと、身体的特徴を後天的に変容させる「体のクラフト」が存在していることから、要素として驚く程自然に溶け込んでいる。
実際エンディングのイザボーとシフランの会話はかなり感動的というか、ここまで来た以上「良かったね!!!!!最高!!!」以外言うことが無い。
以下画像
以下追記
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