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妊娠中のトレーニングガイドライン

10ヶ月間のマタニティスポーツライフで,一番悩んだのが『負荷量の設定』。

妊娠前と違い,もう一人の命を抱えている身体なので,自分の思うがまま!という訳にはいきません。自分で日々仮説検証の繰り返しでした。自分の周りにアクティブに動くプレママさんがいなかったので,参考にできる情報が少なかったのも事実。もっと妊婦さんに運動が広がれば良いのに。

妊娠に関係なく,運動の負荷量には個人差があります。トレーニングの目標や目的,身体組成,運動に割ける時間によっても変わりますしね。ただ,どの人でも抑えておかなければならないさポイントがあって

・やってはいけないこと[禁忌]
・(客観的なデータとして)やったほうがよいこと[効果]

この2点を前提に,個別に運動プログラムを立てることが大事です。

ということで,今回は私が参考にしている,妊婦のためのエクササイズガイドラインをご紹介します。

※注※
妊娠中の運動に関しては,必ず産婦人科の主治医と相談の上実施しましょう。運動が妊娠中の身体へリスクとなる場合もあります。今回紹介するガイドラインも(明記されてはいませんが)運動許可があることを前提だと思います。


▶︎NSCAジャパンのガイドライン

今回参考にしたのは,NSCAジャパンのガイドラインです。NSCAはトレーニングやコンディショニングに関する情報の発信やトレーニング指導者の育成を行う団体です。

PDFはこちらから読めます。

このガイドラインは,まず妊娠中のエクササイズを推奨するというスタンスを取っています。

妊娠中の女性は、毎日ではなくてもほぼ毎日、約30 分程度から1時間まで、中強度のエクササイズを行なうことが推奨される。

妊婦がトレーニングを行う効果としては次のように述べています。

レジスタンストレーニングと有酸素性トレーニングを合わせて行なうことは、単に有酸素性トレーニングだけを行なうよりも利益が大きいことが示されているため、レジスタンストレーニングを取り入れる必要がある。特に、妊娠糖尿病と妊娠高血圧症の危険性が有意に低下することは注目に値する。

さらに,妊娠期間別のエクササイズのポイントも言及しています。

妊娠初期には筋力に重点を置くことが重要である。クライアントが体幹深 部筋の連動に気付き、良い姿勢を保てるように手助けすることで「身体意識」 を育む。(中略)自体重、フリーウェイト、エクササイズバンドなどを用いて、大筋群をトレーニングすることが重要。
妊娠中期に関して)レジスタンストレーニングと有酸素性エクササイズの両方を含むワークアウトを作成する。妊娠中の女性が 第 2 期(※注:妊娠中期)に運動を始めた場合でも、運動と胎児の酸素供給量には正の相関関係がある。胎児への酸素供給量の改善は、血管内皮の機能障害に関連する妊娠合併症のリスクを低下させる。
妊娠後期に関して)妊娠の最終段階に近づくにつれて、 リラクゼーションエクササイズをい くつか奨励し取り入れる。リラックスすること、特に骨盤底筋を緩める方法をクライアントに指導する。 筋力のある女性は痛みを感じたときに、骨盤底筋に力をこめる傾向があると思われる。分娩に備えリラックスすることを意識するように奨励することが重要である。クライアントは出産直前まで、レジスタンストレーニングと有酸素性トレーニングを継続できる

負荷量の決め方で挙げられていたのは

・トークテスト(会話不能なほどのエクササイズは高負荷→負荷を下げる)
・主観的疲労度(RPE)で中程度

の2点です。個人的に気になっていた『心拍数』に関しては,このガイドラインでは言及されていませんでした。本文中では”中強度”という言葉が多用されていますが,個人差があるので数値化するのが難しいのでしょう。

エクササイズで注意すべきポイントも紹介されています。例えば,

リラキシンホルモンのため、過度のストレッチングは避ける。心地良く感じるが決して痛みを感じることのない範囲でストレッチングをすることを促す。恥骨結合部と周囲の骨盤周辺を過度にストレッチする運動を制限する。
妊娠中期以降)仰臥位で 2 分以上長く横になる回数をできるだけ減らす(※注:仰臥位低血圧症候群予防のため)。クライアントが仰臥位で横になると気分が悪い場合や仰臥位をとらないように医師から指示されている場合は、仰臥位は完全に避ける。
仰臥位で横たわることを避けるべき徴候: 
・目まい
・吐き気
・陣痛
・ただ単に「気分が悪い」

といったところです。

情報量がたくさんのガイドラインなので,個人的に重要だと感じたところを中心に引用しました。詳細はエクササイズガイドラインを見てみてくださいね。

▶︎おわりに

ガイドラインを通して,改めて「妊婦にはエクササイズが推奨される」という確信が持てた一方,「外国ではこれだけ運動が推奨されているんだ」と日本との差を感じたのも正直なところ。

今回紹介したNSCAはアメリカの団体のため,このガイドラインは日本人に焦点を当てたものではありません。より安全にスポーツを楽しむため,また妊婦スポーツの普及のため,今後日本発信の情報も増えてほしいな,と感じます。

ということで,今回は私がマタニティスポーツを実践する上で参考にしている,妊婦のためのエクササイズガイドラインをご紹介しました。

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