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小林信彦『パパは神様じゃない』晶文社 1973年11月刊  『ドジリーヌ姫の優雅な冒険』文藝春秋 1978年7月刊   『超人探偵』新潮社 1981年3月刊


小林信彦(1932.12.2- )
『パパは神様じゃない』イラストレーション小林泰彦
晶文社 1973年11月刊
https://www.kosho.or.jp/products/detail.php?product_id=84263861

『ミステリ・マガジン』1972年8月〜1973年12月号連載
はじめに
第一章 受胎告知
第二章 出産前後
第三章 父親へのパスポート
第四章 夏の父親
第五章 旅に出た父親
第六章 続・旅に出た父親
第七章 年年歳歳
第八章 戦後疲れ
第九章 二月は残酷な月
第十章 子供のいる風景
第十一章 一歳の誕生日
第十二章 囲いはきらい
第十三章 ハートブレーク・キッド
第十四章 またしても夏
第十五章 夏の終わりに
第十六章 動物のぬいぐるみ
第十七章 わが顔は緑なりき
第十八章 父親の祈り
あとがき

明治大学文学部学生の頃(1973-77)、購読していた雑誌
『ニューミュージックマガジン』に編集長の中村とうようさん(1932.7.17-2011.7.21 小林信彦さんと同年生まれだったんだなぁ)が毎号連載していたコラム「とうようズ・トーク」で本書を知ったような記憶があります。

「戦後疲れ」「二月は残酷な月」「わが顔は緑なりき」など章題が上手です。エッセイ自体が面白いことは(捧腹絶倒! もありますよ)、言うまでもありません。

「……さて、とにかく夫人が妊娠した。…

器用な人は、若いころのジェームズ・スチュアート[James Stewart 1908.5.20-1997.7.2]が就職の知らせを受けたときの <まさか> といった、あのボウッとした表情と手つきをつけ加えられれば最高である。

おことわりしておくが、ジェームズ・スチュアートである。ジェームズ・キャグニイ[James Cagney 1899.7.17-1986.3.30]ではない。また、当人はスチュアートのつもりでも、マーロン・ブランド[Marlon Brando 1924.4.3-2004.7.1]のように見える笑いだったら、初めからやらない方がいい。…

スチュアート(ふたたび念を押すが、スチュアート・グレンジャー[Stewart Granger (1913.5.6-1993.8.16)]ではない)の <感じの良さ> をふんわりと出したい。」p.18「第一章 受胎告知」

私が初めて小林信彦を読んだのは大学生の頃(1973-77)でした。
最初に読んだ本が何だったのか、もう今では記憶が定かではありませんけど、明大文学部担任・卒論指導担当だった
小野二郎先生(1929.8.18-1982.4.26)
https://ja.wikipedia.org/wiki/小野二郎
が創業した晶文社から刊行された、
『オヨヨ島の冒険』(『怪人オヨヨ大統領』との合本)
中原弓彦『世界の喜劇人』
中原弓彦『日本の喜劇人』
あたりだったのかなぁ。

『キネマ旬報』の連載コラム「架空シネマテーク」、「小林信彦のコラム」と、父が買っていた『別冊文藝春秋』の連載「唐獅子株式会社」を、毎号、貪るような気持ちで読み耽っていたことは、はっきり憶えています。という訳で、五十年ぐらい読み続けてきたのでした。

「ギリシア神話のミダス王よろしく小林信彦さんは、おのれにふれるものことごとくをギャグに化せずにはおかぬ。アハアハと笑いながら、「パパは神様じゃない」をよんでしまった。

ミダス王の手にふれたものは黄金と化して動かぬが、小林さんの手にかかってギャグと化したものは、心のなかにはいって、糖衣錠のとけるように現実の虚無をにじみださせる。

虚無のなかに成長する生命を凝視すること、それが父親にとっての育児というものだろう。」松田道雄 単行本帯

これは帯裏。松田道雄推薦文は帯表。

『パパは神様じゃない』という書名が『スポック博士の育児書』中の章題に由来するのは周知のことでしょうけど、本書に座右の育児書として登場する『育児の百科』 岩波書店 1967 の著者、松田道雄さん(1908.10.26-1998.6.1)に帯文を依頼することを企画した編集者は誰なのか?

小野二郎(1929.8.18-1982.4.26)、
津野海太郎(1938.4.6- )
長田弘(1939.11.10-2015.5.3)
かなぁ。

「「ツノ出せ、オノ出せ、オサダ出せ」の晶文社」
https://www.msz.co.jp/topics/archives/08097.html

みすず書房 トピックス(アーカイブ)
小野二郎『ウィリアム・モリス通信』川端康雄編

川端康雄さん
https://www.youtube.com/watch?v=iPjv07N6lHM
@acropotamia
は明治大学文学部同級生です。
1977年以来一度も会っていませんが。

小林信彦(1932.12.2- )
『ドジリーヌ姫の優雅な冒険』文藝春秋 1978年7月刊
https://www.amazon.co.jp/dp/B000J8NL3G

『クロワッサン』1977年5月号〜1978年4月号連載
第一話 夜霧に消えた東坡肉(トオンプオロウ)
第二話 ババロアばあさん
第三話 一品料理のシャリアピン
第四話 アボカドの街角
第五話 どぜう相手のドジリーヌ
第六話 ダイエット・ビスケット
第七話 麺から出た面倒(トラブル)
第八話 しちめんどくさい七面鳥
第九話 雑煮とスーパーマン
第十話 餅は餅屋の春の宵
第十一話 玄人うなぎ
第十二話 スモーガスボードで終幕(フィナーレ)

日活無国籍アクション映画風料理冒険小説。
主人公敏子の夫、二階堂秋彦の苗字は、もちろん、
『銀座旋風児(ギンザマイトガイ) 二階堂卓也・銀座無頼帖』日活 1959.9 監督 野口博志
原作・脚本 川内康範
出演 小林旭 浅丘ルリ子 宍戸錠
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=139021
に由来します。1959〜1963年に六本公開されたシリーズです。

小林信彦のユーモア・どたばた小説はたくさんありますけど、私はこの『ドジリーヌ姫』が一番好きです。

L'aventure gracieuse de la Princesse De Djirine
という仏文題名にまず笑いました。
そんなところで笑うのは私だけなのでしょうか?

この作品は1980年頃、NHKのラジオドラマになっていたそうで、
最終回「ダイエットビスケット」出演 藤村有広 林隆三
がユーチューブにあります。
https://www.youtube.com/watch?v=eqw508pZ_Kc 25:24

「林[りん 神戸「湾仔(ワンチャイ)飯店」経営者]のもったいぶった仕草は、敏子の眼にはテレビの深夜映画の藤村有弘のように映じた。」
小林信彦『ドジリーヌ姫の優雅な冒険』文藝春秋 1978.7
p.14「第一話 夜霧に消えた東坡肉(トオンプオロウ)」
初出『クロワッサン』1977年5月号


小林信彦(1932.12.2- )
『超人探偵』新潮社 1981年3月刊
http://www.amazon.co.jp/dp/B000J80AO4

『太陽』1978年12月号
『小説新潮別冊』1979年冬号~180年秋号掲載
連作九篇
第一話 ブルー・トレイン綺譚
第二話 帰ってきた男
第三話 悪魔が来たりて法螺を吹く
第四話 きみとともに島で
第五話 大阪で起った奇妙な出来事
第六話 クアラルンプールの密室
第七話 ヨコハマ1958
第八話 ボガートになりたかった男

『神野推理氏の華麗な冒険』平凡社 1977.9 新潮文庫 1981.9
の続篇。

私は小林信彦の「真面目な」作品よりもこの手のが好きです。

脇役の旦那刑事が、いつも通り、いいなぁ。
鮎川哲也『黒いトランク』他に、鬼貫警部とともに登場する丹那(たんな)刑事をもじった命名ですけど、勿論、まったく別人で、彼の上司は鬼面警部です。

「デスクの向う側には、小柄で、貧相で……と、男性のマイナスの条件を一身に背負った警視庁捜査一課の旦那刑事がいた。

久しぶりに私は彼を食事に招待し、大きなステーキを食べて、局に戻ってきたところだった。大蒜(にんにく)をたっぷりのせたステーキを食べれば、たいていの男は、明るい表情をするものだが、この刑事に限っては、そうしたことがなかった。

ざるそばを急いで食べたあとと同じで、顔色は冴えず、視線も力がないのだ。こういう人間は根が暗いのであろう。

旦那刑事はトレンチコートを無造作に着て、襟をハンフリー・ボガート風に立てている。」
p.241「第八話 ボガートになりたかった男」

「推理小説のパロディは推理小説になる宿命にあるし、また、そうならなければおかしい」p.255

「小林 推理小説のパロディというのは推理小説になるという宿命があって、滅茶苦茶になって終る、つまり床を踏みぬくような羽目のはずしかたができないんです。それで非常に苦労しました。」
『波』1981年3月号 p.95
「対談 小林信彦・椎名誠 パロディ=感性のリトマス試験紙
 笑いの領域を拡げ続ける <ゲリラ戦> の歴史とこれから」
小林信彦(1932.12.2- )
椎名誠(1944.6.14- )
https://www.bookbang.jp/review/article/637140


読書メーター 小林信彦の本棚(登録冊数134冊 刊行年月順)
https://bookmeter.com/users/32140/bookcases/11091202






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