近藤史恵(1969.5.20- )『ときどき旅に出るカフェ』双葉社 2017.4 280ページ
近藤史恵(1969.5.20- )
『ときどき旅に出るカフェ』
双葉社 2017年4月刊
280ページ
2017年6月13日読了
https://www.amazon.co.jp/dp/457524029X
http://www.futabasha.co.jp/booksdb/book/bookview/978-4-575-24029-0.html
「平凡で、この先ドラマティックなことも起こらなさそうな日常。自分で購入した1LDKのリビングとソファで得られる幸福感だって憂鬱のベールがかかっている。そんな瑛子が近所で見つけたのは日当たりが良い一軒家のカフェ。店主はかつての同僚・円だった。旅先で出会ったおいしいものを店で出しているという。苺のスープ、ロシア風チーズケーキ、アルムドゥドラー。メニューにあるのは、どれも初めて見るものばかり。瑛子に降りかかる日常の小さな事件そして円の秘密も世界のスイーツがきっかけに少しずつほぐれていく―。読めば心も満たされる“おいしい”連作短編集。」
「氷野(ひの)照明に勤める奈良瑛子が近所で見つけたのは、カフェ・ルーズという小さな喫茶店。そこを一人で切り盛りしているのは、かつての同僚・葛井円(まどか)だった。海外の珍しいメニューを提供するカフェ・ルーズ。旅を感じられる素敵な空間をすっかり気に入った瑛子は足しげく通うようになる。会社で起こる小さな事件、日々の生活の中でもやもやすること、そして店主の円の秘密――不思議なことに世界の食べ物たちが解決のカギとなっていく。読めば心も満たされる“おいしい"連作短編集。
著者について
1969年大阪府生まれ。大阪芸術大学文芸学科卒。1993年、『凍える島』で第4回鮎川哲也を受賞。2008年、『サクリファイス』で第10回大藪春彦賞を受賞。『モップの精は旅に出る』『スティグマータ』『シャルロットの憂鬱』など著書多数。」
『小説推理』2016年2月号~2016年11月号連載十章
近藤史恵さんのビストロ「パ・マル」シリーズ三冊の次に、
新作食べ物小説を読んでみました。
2017年6月13日
福岡市総合図書館予約52人(複本2冊)
語り手は1LDKマンション(中古購入)に暮らす
37歳の独身女性奈良瑛子(氷野(ひの)照明に新卒で勤務して十五年)。
近所で発見した二人掛けテーブル四・カウンター五席の
小さなカフェ・ルーズはかつての同僚・葛井円(まどか)
一人のお店でした。
食べたことのない、世界のあちこちのお菓子が登場します。
私は酒飲みで甘いものはまったく食べませんから、
特に食べてみたいと思うものはありませんでしたけど。
物語には甘味だけじゃなくて、悪意の苦さも描かれてます。
第一話 苺のスープ
アルムドゥドラー
(ハーブレモネード オーストリアの炭酸飲料)、北欧(フィンランド)の苺の冷たいスープ。
第二話 ロシア風チーズケーキ
ロシア風ツップフクーヘン
(ココア生地をのせて焼いたドイツのチーズケーキ)。
第三話 月はどこに消えた?
チェー
(ココナッツミルク・小豆・フルーツの入ったベトナムのかき氷)、
アヒルの卵黄の塩漬け入りな北京の月餅。
第四話 幾層にもなった心
バングラデシュの大根カレー
(ミキサーで細かくした玉葱・人参・トマト入り)、
ドボシュトルタ
(バタークリーム・スポンジ生地をキャラメリゼしたハンガリーのお菓子)。
第五話 おがくずのスイーツ
ガラオン
(グラスで飲むポルトガル式エスプレッソに泡立てたミルクのカフェラテ)、
セラドゥーラ
(おがくずの意。ゆるめに泡立てた生クリームにコンデンスミルクを混ぜ砕いたビスケットと交互に重ねたポルトガルのお菓子)。
第六話 鴛鴦茶のように
凍檸茶
(ドンレンチャ レモン半分ほどのスライスを入れた香港式アイスレモンティ)、
鴛鴦茶
(ユンヨンチャー 香港で飲まれるエヴァミルク入りコーヒーと紅茶のブレンド)。
第七話 ホイップクリームの決意
砂糖を入れない生クリームをのせて食べるザッハトルテ。
第八話 食いしん坊のコーヒー
茹で卵を潰して混ぜて食べる南インド風卵のカレー、
カフェ・グルマン(食いしん坊のコーヒーの意。
ミニサイズのツップフクーヘン・セラドゥーラ・ザッハトルテ・苺のスープとコーヒーカップをのせたプレート。
第九話 思い出のバクラヴァ
バクラヴァ
(トルコの頭が痛くなるような甘さのクルミ入りパイ)。
最終話
アロス・コン・レチェ
(スペインの牛乳で軟らかくなるまで煮た甘いお米のデザート)。
「この世でいちばん好きな場所は自宅のソファだ。
超高級品ではないけれど、瑛子にしては頑張った。
たしか三十万円ほど。
二人掛け、オットマンもつけて、セミオーダーで。
そこにクッションを四つも置いた。
片方にクッションを重ねて、身体を預けてテレビを見る。
…
土曜日と日曜日、
ソファの上でゆっくりと本を読んだり、
借りてきたDVDを見るときは、
この上ない幸福を感じる。」
p.8 第一話 苺のスープ
「おっくうなのは、自転車を引っ張り出すまでで、
乗ってしまえば遠くまで行きたくなる。
似たようなことはたくさんある。
分厚い翻訳ミステリに手を伸ばしたときとか、
寒い日にお風呂に入るときとか。
最初のおっくうささえ乗り越えてしまえば、
そのあとは素敵な体験が待っている。
いつもと違う道を通り、
住宅街をふらふら走っていると、
ふと一軒の店が目にとまった。
白い一軒家で、木の看板が出ている。
カフェ・ルーズという名前が目についた。
店の前にはハーブらしきプランターが並んでいる。」
p.18「第一話 苺のスープ」
http://www.hatirobei.com/ブックガイド/作家から/近藤史恵/雑誌掲載記事
読書メーター
近藤史恵の本棚(登録冊数5冊 刊行年月順)
https://bookmeter.com/users/32140/bookcases/11091415
https://note.com/fe1955/n/n5f867db127f5
近藤史恵(1969.5.20- )
『それでも旅に出るカフェ』
双葉社 2023.4
240ページ
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?