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古内一絵『マカン・マラン 二十三時の夜食カフェ』中央公論新社 2015.11  『女王さまの夜食カフェ マカン・マラン ふたたび』2016.11  『きまぐれな夜食カフェ マカン・マラン みたび』2017.11  『さよならの夜食カフェ マカン・マラン おしまい』2018.11



古内一絵『マカン・マラン 二十三時の夜食カフェ』
西淑 装画 中央公論新社 2015年11月刊
2018年1月26日読了
https://www.amazon.co.jp/dp/4120047881


「元エリートサラリーマンにして、今はド派手なドラァグクイーンのシャール。そんな彼女が夜だけ開店するお店がある。そこで提供される料理には、優しさが溶け込んでいて――。早期退職者候補になった、仕事一筋の40代キャリア女性へは「春のキャセロール」を。手料理を食べなくなった中学生男子には「金のお米パン」。仕事に夢を見られない、20代のライターには「世界で一番女王なサラダ」。そして、病を抱え、倒れてしまったシャールへ、彼女に助けられた人々が素材を持ち込み、想いを煮込めた「大晦日のアドベントスープ」。じんわりほっくり、心があたたかくなる至極の4作品を召し上がれ!」

「ある町の路地裏に元超エリートのイケメン、今はドラッグクイーンが営むお店がある。そこには様々な悩みをもつ人が集まってきて?

古内一絵
東京都生まれ。映画会社勤務を経て、中国語翻訳者に。
第五回ポプラ社小説大賞特別賞を受賞し、2011年『快晴フライング』(ポプラ社刊)でデビュー」

「春のキャセロール」
「金のお米パン」
「世界で一番女王なサラダ」
「大晦日のアドベントスープ」
の四話、書き下ろし265ページ。

季節は春の連休前から大晦日まで。
インドネシア語で「夜食」を意味する「マカン・マラン」という店名の深夜営業カフェに集う人たちの物語。

マクロビオティック
https://ja.wikipedia.org/wiki/マクロビオティック
に基づく美味しそうな料理が頻出する食べ物小説で、
第四話のスープは昔『美味しんぼ』で読んだ
佛跳牆(フォーティァオチャン)です。

「カウンターに出し直してもらったシシカバブに齧りつく。ひと晩特製のハーブオイルに漬け込んだ後、オーブンで焼き上げたというシシカバブは、野菜だけとは思えない風味とボリュームがあった。

肉厚のパプリカは甘く、大きなマッシュルームは弾力があり、表面がカリッと焦げたじゃが芋は中身がホクホクだ。他にもトウモロコシや茄子やピーマンといった夏野菜がふんだんに串にささり、色とりどりの見た目も美しい。

動物性蛋白質を極力使わないシャールの料理を、普段柳田は物足りないと感じることが多いのだが、こうして食べるとやはり他店ではお目にかかれない格別の味わいがある。」
p.96「金のお米パン」

「「悪いけど、今日はいつもの賄いとは違うわよ。本当に自分のためだけに用意した夕食だから、えらいこと粗食よ」

カウンターの上にのせられたのは、ほうれん草のお浸し、里芋と油揚げの味噌汁、それからおからの煮つけだった。炊きたてのおからは素朴ながら滋味深い味わいで、五分搗きの玄米ご飯との相性が抜群だった。」
p.232「大晦日のアドベントスープ」

古内一絵『女王さまの夜食カフェ マカン・マラン ふたたび』
西淑 装画 中央公論新社 2016年11月刊
2018年1月27日読了
https://www.amazon.co.jp/dp/4120049108



「お待たせしました。シャールさん&「マカン・マラン」復活です! 病に倒れていたドラァグクイーンのシャールが復活し、いつものように常連がくつろげるお店に戻った「マカン・マラン」。そこには、やはり様々な悩みを抱えた人たちが集ってきて? 〈擬態〉だけ得意になるランチ鬱の派遣社員へ「蒸しケーキのトライフル」。夢を追うことを諦めた二十代の漫画家アシスタントに「梅雨の晴れ間の竜田揚げ」。子供の発育に悩み、頑張り続ける専業主婦へ「秋の夜長のトルコライス」。そして親子のあり方に悩む柳田とシャール、それぞれの結論とともに食す「再生のうどん」。共感&美味しさ満載、リピート間違いなしの1冊です。」

「蒸しケーキのトライフル」
「梅雨の晴れ間の竜田揚げ」
「秋の夜長のトルコライス」
「冬至の七種うどん」
の四話、書き下ろし268ページ。

季節は二月から十二月。

第三話の主人公、伊吹未央の名前から連想した
『BAR追分』の伊吹有喜さん(1969年生まれ)は、
2008年第3回ポプラ社小説大賞特別賞受賞で、
古内一絵さん(1966年生まれ)は、
2010年第5回ポプラ社小説大賞特別賞受賞なんですね。

2015~2017年の三年間に、お二人とも食べ物小説を三冊刊行されたのはシンクロニシティかなぁ?

猫に導かれてお店に辿りつくという同一の展開は、
『ランティエ』2015年1月号掲載の
「BAR追分 プロローグ」の方が、書き下ろしの
『マカン・マラン 二十三時の夜食カフェ』中央公論新社 2015.11
より先の発表のようです。

ガムラン・ドゥグン
Degung Sundanese Music of West Java 59:37
https://www.youtube.com/watch?v=2nrgTossoB0
を聴きながら読み終えました。

「さやいんげんと絹ごし豆腐の味噌汁に、五分搗きの玄米ご飯、ミョウガと若芽の甘酢和え、生姜がたっぷり載った冷やっこ、莢付きのソラマメとアスパラガスとピーマンのソテー、それから、からりと揚げられた飴色の竜田揚げが、お皿一杯に綺麗に盛りつけられていた。

ミョウガと若芽を二くち、それから赤だし味噌汁を啜った。ミョウガは歯ごたえがよく、若芽は柔らくて爽やか、味噌汁からは、ふわりと丁寧な出汁が香った。同じように見えた緑の夏野菜のソテーは、ひとつひとつ微妙に形と味が違う。「ピーマンと獅子唐と万願寺唐辛子よ。辛みが少しづつ違うでしょう」
p.130「第二話 梅雨の晴れ間の竜田揚げ」

古内一絵『きまぐれな夜食カフェ マカン・マラン みたび』
西淑 装画 中央公論新社 2017年11月刊
2018年3月9日読了
https://www.amazon.co.jp/dp/412005022X


「元超エリートのイケメン、今はドラァグ・クイーンのシャールが夜だけひらくカフェ「マカン・マラン」。今回のお客様は、匿名のクレームを繰り返すアラサーOL、美味しさがわからなくなってしまった若手料理人など。彼らにシャールが用意した《きまぐれ》料理とは――?
圧倒的人気のお仕事&お料理小説、リクエストにおこたえして第三弾が登場です!

著者について
東京都生まれ。映画会社勤務を経て、中国語翻訳者に。第五回ポプラ社小説大賞特別賞を受賞し、二〇一一年『快晴フライング』(ポプラ社刊)でデビュー。他の著書に『風の向こうへ駆け抜けろ』『蒼のファンファーレ』『痛みの道標』(小学館)、『花舞う里』(講談社)、『フラダン』(小峰書店)、『マカン・マラン 二十三時の夜食カフェ』『女王さまの夜食カフェ マカン・マラン ふたたび』(中央公論新社)がある。」

毎日新聞 2018年1月30日
『サンデー毎日』2018年2月11日増大号
SUNDAY LIBRARY 著者インタビュー 古内一絵 『きまぐれな夜食カフェ マカン・マラン みたび』
https://mainichi.jp/articles/20180130/org/00m/040/032000c

「取材で書くと決めています。自分一人でできることなどなくて、話を聞いていると想像が膨らみ、人物が動き出す。」

「恨みの苺シロップ」
「藪入りのジュンサイ冷や麦」
「風と火のスープカレー」
「クリスマスのタルト・タタン」
の四話、書き下ろし277ページ。

物語の語り手は、
26歳の女性、
27歳の男性、
47歳の女性、
76歳の女性。

季節は三月から十二月。

2010年第5回ポプラ社小説大賞特別賞受賞な古内一絵さん(1966年東京都生まれ)によるマカン・マランシリーズ三冊目は、前二冊
『マカン・マラン 二十三時の夜食カフェ』中央公論新社 2015.11
https://www.amazon.co.jp/dp/4120047881
『女王さまの夜食カフェ マカン・マラン ふたたび』2016.11
https://www.amazon.co.jp/dp/4120049108
に登場した人達のその後も描かれていて、読み応えがありました。

四冊目も読めるといいなぁ。

「キャベツと厚揚げとエリンギの炒め物、蕪とさやえんどうの味噌汁、山芋のソテー、鶏肉の唐揚げのような揚げ物、桜の花の玄米丸麦ご飯」
p.31「恨みの苺シロップ」

「グリーンピースご飯と春野菜のレモンシチュー。鮮やかな黄緑色のグリーンピースがたっぷり入った炊き込みご飯とキャベツや新玉葱やじゃが芋がとろとろに煮込まれたシチュー」p.40

「粒マスタードのソースがかかったエリンギとさやえんどうのソテー。エリンギもさやえんどうも艶々と輝いている。大振りのマッシュルームに、真っ赤なパプリカ、新鮮で柔らかそうなアスパラガスが豪快に載った、大きなフライパンいっぱいのサフラン色のパエリヤ。」p.56

https://twitter.com/gunei19/status/1024938222386798592
古内一絵 @gunei19 2018年8月2日 17:41
11月「さよならの夜食カフェ マカン・マランおしまい」が発売になります。ついにマカン・マランシリーズ完結です。これは悲しい「さよなら」ではありません。「また逢う日まで」のさよならです。



古内一絵『さよならの夜食カフェ マカン・マラン おしまい』
西淑 装画 中央公論新社 2018年11月刊
2019年1月6日読了
https://www.amazon.co.jp/dp/4120051404

https://twitter.com/gunei19/status/1028634709738237955

https://www.netgalley.jp/catalog/book/146047

「「好きなもののある私たちは、強いはずよ」ラジオ化&重版続々の大人気シリーズ、遂に完結! これまで、苦しんできた人達を救ってきた「マカン・マラン」の店主・シャール。今回、シャールを訊ねてきたのは謎の美青年。彼の決意や未来の話を聞く中で、シャールはこの夜食カフェを始めたきっかけを思い出す――。

古内一絵
[1966年]東京都生まれ。映画会社勤務を経て、中国語翻訳者に。第五回ポプラ社小説大賞特別賞を受賞し、二〇一一年にデビュー。二〇一七年『フラダン』で第六回JBBY賞(文学作品部門)を受賞。他の著書に『赤道 星降る夜』(小学館)、『キネマトグラフィカ』(東京創元社)、『マカン・マラン 二十三時の夜食カフェ』『女王さまの夜食カフェ マカン・マラン ふたたび』『きまぐれな夜食カフェ マカン・マラン みたび』『十六夜荘ノート』(中央公論新社)等がある。」

書き下ろし287ページ
「第一話 さくらんぼティラミスのエール」
「第二話 幻惑のキャロットケーキ」
「第三話 追憶のたまごスープ」
「第四話 旅立ちのガレット・デ・ロワ」

物語の語り手は、
16歳の女子高二年生、
31歳の料亭オーナーシェフ、
25歳の「トロフィーワイフ」、
と中年なマカン・マラン店主・シャール(年齢は?)

季節は四月半ばから大晦日。

1966年東京都生まれな古内一絵さんが四年間執筆してきたマカン・マランシリーズ四冊目は、前三冊

『マカン・マラン 二十三時の夜食カフェ』2015.11
https://www.amazon.co.jp/dp/4120047881

『女王さまの夜食カフェ マカン・マラン ふたたび』2016.11
https://www.amazon.co.jp/dp/4120049108

『きまぐれな夜食カフェ マカン・マラン みたび』2017.11
https://www.amazon.co.jp/dp/412005022X

に登場した人達のその後も描かれていて、読み応え十分な最終巻でした。

第四話 p.269 に登場する「ものすごい美青年」は,

2010年11月第5回ポプラ社小説大賞特別賞受賞作https://www.poplar.co.jp/award/other/award3/5.html

『銀色のマーメイド』中公文庫 2018.9
https://www.amazon.co.jp/dp/4122066409

(単行本書名は『快晴フライング』ポプラ社 2011.4 )
https://www.amazon.co.jp/dp/4591134334

の重要なキャラクタらしいので、中学校同級生だった柳田とシャールの再会も描いているという受賞作を読んでみたくなりました。

「今夜のメニューは、
春菊とわかめとクルミの生姜オイルあえ、
茄子の柚子胡椒炒めと、
根菜[里芋や牛蒡やニンジンや蓮根 p.247]たっぷりの白味噌のお味噌汁、それから、
風呂吹き大根と、
大根の葉を使った菜飯だ。

ご飯の土鍋を強火にかけ、風呂吹き大根を作ったときに切り分けた大根の葉を手に取った。鮮やかな緑の葉をみじん切りにし、フライパンにゴマ油を引いた。ゴマ油の香りが立ったら大根の葉を投入し、酒と塩をふって煎りつける。酒煎りをする一手間で、仕上がりの旨みと香りが格段によくなる。」p.238

「土鍋の火をとめ、ご飯を蒸らしている間に、味噌汁をあたためておかずを盛りつける。料理に合った器を選ぶのも、シャールは好きだ。
春菊のあえものには丸い備前焼,
茄子の柚子胡椒炒めには光沢のある青磁、
白味噌仕立ての根菜味噌汁は、豪快に鍋ごと。
 … 
土鍋で炊いたご飯はなによりの御馳走だ。酒煎りにした大根菜と合わせてさっくりとかき混ぜると、たちまち、ふっくらした艶やかなお米に鮮やかな緑がちりばめられた、なんとも美しい混ぜご飯になった。」p.243

https://twitter.com/gunei19/status/1330525639602933760
古内一絵・感謝御礼「マカン・マラン」シリーズ12万部突破
@gunei19 2020年11月22日 午後11:56
「マカン・マラン」にはモデルになったカフェがありました。
実際はランチカフェのお店でしたが、本当に路地裏の奥の奥。
知る人ぞ知るのお店でした。
オーナーと常連さんとの関係が最高で、心からくつろげました。
小説同様、都市開発の波に飲み込まれ、今はもう跡地も残っていないのです。

https://book.asahi.com/article/11945257
朝日新聞社 好書好日 2018.11.19
悩める人びとを夜食カフェがあたたかく迎える
「マカン・マラン」シリーズ完結 古内一絵さんインタビュー

http://www.chuko.co.jp/boc/column/interview/post_35.html
つながる文芸Webサイト「BOC」ボック 2018.12.18-20
古内一絵さんインタビュー 第一回~第三回 
11月のインタビューとはヘアスタイルが違いますね。
ページ末尾の「インタビューバックナンバー」をプルダウンすると、
第一回~第三回が表示されます。使いにくい画面だなぁ。


http://www.webdoku.jp/rensai/sakka/michi201_furuuchi/
WEB本の雑誌 作家の読書道 第201回:古内一絵さん
2018年12月22日 取材・文 瀧井朝世

読書メーター 古内一絵の本棚(登録冊数7冊 刊行年月順)
https://bookmeter.com/users/32140/bookcases/11229889






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