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「不確実性」を提供するビジネス

J1浦和レッズは今でこそ戦力が充実しているが、1993年にJリーグがスタートした頃はお荷物と揶揄されるような下位チームであった
にもかかわらず日本一とまで言われるほど熱狂的なサポーターが多く、観客動員数はナンバー1! 1993〜2012総計で約1千万人と、2位の横浜M(7百万人)を大きく引き離している

2005年以来優勝から遠ざかっているプロ野球の阪神タイガースしかり、
似たようなケースはいくらでもある

私はFC東京のサポーター 転勤などもあり現在は足が遠のいているが、
以前はホームゲームは全てといっていいくらいスタジアムに足を運んだ
自分の安月給をはたいてチケットを買い、勝利を信じて足を運び、にもかかわらず負けてしまってはストレスを抱えながらそれ後の一週間を過ごしたものだ(笑)

不思議なことに、たとえ欲しいもの(勝利)が手に入らなくても、私はクレームを出すことなくお金を払い続けていた 通常の商取引ではありえない
同じように何度も焦燥感を味わいながらもお金を払い続けているのが、浦和レッズサポーターや阪神タイガースファンである

逆のケースもある 1986年からの森監督率いた西武ライオンズは年間で8度のリーグ優勝と6度の日本一を達成する黄金期を謳歌した
しかし観客動員数は頭打ちとなってしまい、それは森監督の解任自由の1つとなった たとえ勝利を重ねても、ファンの心をうまく惹きつけられなかったのだ

以上からわかることとは…
ファンは応援するチームの勝利を求めているが、勝利すればするほど満足度が高まるわけではないということ

これがスポーツビジネスにおける、他の産業にはない特異性である
要は、ファンはチケットで勝利を買っているのではない

「夢(ゆめ)」を買っている

もし勝利が100%確定している試合であれば、誰もが興味を失うだろう
例えば、結果がわかっている試合を録画で見ても特別な感情が湧いてこない

勝ってほしい!と思うからドキドキする
万年下位でも今年はもしかしたらと思えばワクワクする
1997ジョホールバルで日本サッカーは岡野のゴールで永年の夢をかなえることができた
2015日本ラグビーの南アフリカ戦の勝利はラグビーブームを巻き起こした
2019FC東京は最終節までサポーターに夢を見させてくれた

そうしたロマンを感じられるのがスポーツなのである

スポーツビジネスもサービスを顧客に提供するという意味で、他のビジネスと変わらない
しかし人生における夢と同じく、顧客に「不確実性」というとても魅力的なサービスを提供する素晴らしいビジネスだ
世界が深刻な状況に置かれている今、あらためてその必要性が再確認されてほしいと感じている

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