【KOGURE FUTSAL ACADEMY】第6回レポート「セットプレーの得点率を上げるには?」
セットプレーに関して、木暮氏は「コーナーキック」、「コーナーキック・キックイン(0-6m)」、「キックイン(6-10m)」、「キックイン(JOGADA)」、「キックイン(プレス回避)」、「フリーキック」、「キックオフ」の7項目に分類。その中でも、試合中の頻度が高く得点率も高いコーナーキックについて重点的に解説が行われた。
木暮氏がまず強調したのはキッカー選定の重要性だ。
「監督がボード上で“こう動いて次にこう動けばここがフリーになるよ”と説明するのは簡単です。しかしいざ試合になったら、狙い通りにフリーの選手を作れたとしても、そもそもそこに良いボールが入らなければ意味が無いですよね。敵・味方両方のポジショニング、駆け引きの状況などを見て、どこにどのタイミングで出せば得点になる確率が高いかをキッカーが瞬時に認知・決断し、ベストなパスを送れないといけません」
キッカーが決まったら次に見るのは他の3人のFPのタレント(個性・特徴)だ。
「セットに右利きしかいないのか、それとも左利きもいるのかとか、セット内にどんな特徴を持った選手がいるかを確認します。例えば右利きの選手4人の時に右コーナーを得たとしましょう。ループからの逆サイドでの左足ボレーは難しいですよね。また、同じ4人で左コーナーを得た場合、同サイドのアウトサイドからの左足シュートもやはり確率的には難しい。あるいはピッチにいる4人全員がシュートの弱い選手だったら、遠めからのシュートを狙うこと自体がそもそもどうなのかな?という話になる。どういうタレントがいるかによって攻め方は当然変わります。なので仮に“木暮がよく使うセットプレーのやり方を教えてよ”と言われたとしても、すぐには答えられません。“あなたのチームにはどんな選手がいるの?”とか“左利きはいるの?”と確認しないと。チームのタレント次第でベストなやり方は変わりますから」
この話を聞いて思い出されたのが、第3回目で行われたオフェンス戦術の講義だ。
引いた相手を崩すためのジョガーダなど、あらゆる戦術を熟知している木暮氏。戦術家のイメージの強い木暮氏ですら「戦術ありきではなくて、まずチームにどんなタレントがいるか。それを見ないとプレーモデルは決められない」と話していた。
例えば木暮氏は「ピヴォを使った攻撃が好き」だというが、かといって必ずしもそれを攻撃の軸にするわけではない。チーム内にどんなタレントがいるかに合わせて最適なやり方を選んでいく。そしてその考え方はセットプレーでも同じだ。
「セットプレーもまずキッカーも含めたタレントがあって、それから戦術を選びます。もちろん監督にもいろんなスタイルの監督がいて、例えばボレーを教えるのが得意な監督もいれば、ブロックプレーを落とし込むのが得意な監督もいる。ですがチームにどんなタレントがいるかに関係なく、監督がただ自分の得意なやり方を押し付けたのでは得点の確率は上がりません。チームのタレントと監督自身の持っているスタイルを総合的に考慮して決めていく必要があると思います」
全6回の講義を受講した中で、筆者の印象に残ったことの一つが木暮氏のこの一貫性だ。理論が完璧に体系立てられているため、そのどこを切り取っても同じコンセプトで話が展開される。どこを見ても論理的な矛盾が一切なく、一貫性があるのだ。
あらゆる決まり事を同じプレーモデルに基づいて決めていくことでよりチームのスタイルに一貫性が生まれ、選手への落とし込みがスムーズになる。また、エラーが起きたときにも立ち返る基準があることで修正が早くなるのだ。それだけ突き詰められているからこそ、トップレベルの選手たちも木暮氏に納得してついてくるのだろう。名将の名将たる所以をまざまざと見せ付けられた、実り多い全6回となった。
文:福田悠
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