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【UCHIYAMA GOLEIRO ACADEMY】第3回レポート「GKにもプレーモデルが必要な理由」

この日解説が行われたのは①状況判断と技術②プレー分析③日本のGKを取り巻く環境(及び対策)の3つ。

その中でも最も長い時間を割き重点的に解説がなされたのが①だ。内山氏は「プレーモデルを持つべき守備局面」を以下の8つ(①②=インプレー、③④⑤⑥=セットプレー、⑦⑧=特殊局面)に分類。一つ一つ実際の試合中の映像を交えながら詳細な解説が行われた。

①システム守備
②トランジション守備
③キックイン守備
④コーナーキック守備
⑤フリーキック守備
⑥PK・第2PK守備
⑦パワープレー守備
⑧3×4守備(退場)

実戦において、GKの状況判断能力は非常に重要だ。展開が速いフットサルでは常にコンマ数秒ごとに状況が変化していく。チームで定められた守備の決まり事をベースに、GKは常に敵・味方の両方を見ながら次の展開を予測し、ポジショニングを微調整しながら最も失点確率が減るプレーを選択し続けなければならない。

システム守備の具体的な事例を一つ挙げてみる。ハーフウェイライン付近、守備側から見て左サイドで相手の右アラがボールを持ったとしよう。この時点で縦にスペースがあり、そのスペースへ相手選手の1人が斜めに走り込む。典型的なパラレラの形だ。

この場合、まずGKはあらかじめペナルティエリアのライン付近まで出ておくべきだろう。アラからの縦パスが長くなった際などに前に出てカットするためだ。言うまでもなく、シュートを打たれてそれを止めるよりも、その前の段階でピンチの芽を摘む方がより良いプレーだ。だからこそゴール前に張り付いているのではなく、相手右アラから縦パスが出そうだと認知した時点で少し高いポジションを取って「狙っておく」必要があるのだ。

では次に、縦のスペースで相手選手にボールを受けられてしまった後はどうするべきか。ここでGKがまず確認すべきポイントの一つは、パスを受けシュート体勢に入ろうとする相手に対して味方のFPがチェックに行けているか否かだ。

味方が追い付いておらずGKと1対1になりそうな状況であれば、そのままペナルティエリア前方に留まってコースを消しに行くのがベストだろう。だが、味方FPがシュート際のタイミングで寄せられそう(間に合いそう)なのであれば後ろに下がって反応で対応する方がより確率が高い場合もある。

走り込んできた相手のファーストタッチの質や利き足、ゴールまでの距離、角度なども含め常に様々な情報を認知し考慮に入れ、最善と思われるプレーを選択しなければならない。どのポジションでどの形で止めに行くのか。その判断が正しく行えれば、シュートストップの確率を飛躍的に高めることができる。

加えて言えば、トップレベルではこうした瞬間にこそフットサルの醍醐味とも言える緻密な駆け引きが行われているのだ。

残念ながら日本ではGKは未だに「FPが突破されてシュートを打たれた時の最終手段」という前時代的な考えが根強く、シュートを打たれる以前にFPと連動してどのような準備ができていたか、いかに失点確率を減らした状態でセービングに入れていたかといった部分までフォーカスされることが非常に少ない。

これはサッカーにおいても同様で、敵・味方のポジショニングやシュート以前のGKの働きかけなどには一切着目されず、ただ派手に見える横っ飛びでのセーブが印象論だけで「スーパーセーブ」と呼ばれてしまう。

一見反応が速く見えるGKであっても、実は味方を動かすコーチングに長けており、状況やコースを上手く限定できているから結果的に反応が速く見えている、というケースもある。逆に反射神経は素晴らしいにも関わらず的確な局面の察知ができないことで対応が常に後手を踏んでしまい、本来の持ち味を発揮できない選手もいる。

チームの守備システムの中で常に的確な判断ができるか否かは、GKのパフォーマンスを大きく左右する重要な要素なのだ。

ここで挙げたのはあくまでも一例だが、たった一つの事例の中にもこれだけ多くの発見と学びが存在する。講義の中では実に数多くの事例を映像で確認しながら、内山氏の詳細な解説とともにご覧いただくことができる。

また、最後の「日本のGKを取り巻く環境」の項では、「ゴールが使えない」「ボールが1球しか使えない」「GKが1人しかいない」といった限られた環境下でも着実にスキルアップできるトレーニングメニューの数々が映像付きで紹介された。GKは2人1組、あるいは3人1組であればトレーニングのバリエーションも広がるが、「チームにGKが1人しかいない」といった事情によりそれらの環境を手に入れられない状況は珍しくない。だがそんな中でもポイントをきちんと押さえることで、1人でも効果的な練習を行うことは可能だ。練習メニューの作成に苦慮しているGKコーチや選手にとっては大変有益な情報となったことだろう。

文:福田悠

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