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【KOGURE FUTSAL ACADEMY】第4回レポート「守備の狙いを明確にするのは監督の重要な仕事」

「自分は周りから攻撃的なスタイルの監督だと思われているし実際に攻撃的なフットサルが大好きなんですけど、今日は良い意味でサプライズというか、“あ、守備もしっかりしてるんだな”って思ってもらえるように一生懸命喋ります(笑)」

第4回は木暮氏のこんな言葉からスタートした。確かに、木暮氏の志向するフットサルは誰が見ても攻撃的だ。Fリーグを制した16-17シーズンのシュライカー大阪がまさにそうだったように、破壊的な攻撃力で相手を圧倒する印象が強い。

だが、フットサルだけでなくサッカーも含めて、フットボールの攻撃と守備は常に表裏一体だ。相手を圧倒する攻撃も、良い守備があってこそ初めて可能となる。言い換えれば、「良い攻撃をしたいのなら良い守備をしなければならない」ということになる。木暮氏も「“ゴールを守るため”に守備をするのではなく、“ボールを奪ってゴールするため”に良い守備をする」ことを常に念頭に置いているという。攻撃的なフットサルを志向するからこそ、攻撃に繋がる守備の構築にも余念がない。
ではそもそも、「良い守備」とはどんな守備のことだろうか。木暮氏は「僕の考えでは、どんなシステムを使うかとかいう以前に、まず“ボールへのプレスがしっかりと掛かっている”のが良い守備の第一条件」と見解を述べた。

ボールへのプレスがしっかりと掛かったディフェンスというと、真っ先に思い浮かぶのは前線からのプレス(通称:前プレ)だろう。相手のゴレイロが手前にパスを出した際などに、ボールホルダーに対して猛然とプレスを掛けてボールを奪いに掛かる。たとえ一発目で奪えなかったとしても、相手のパスコースを限定することで次の選手が狙いやすい状況を作り、ボールが移動する間に一気に寄せてボールを奪取する。あるいは相手のパスミスを誘う。典型的な「しっかりとプレスが掛かっている」状態だ。

だが木暮氏は、必ずしも高い位置からのプレス=良い守備というわけではなく、「守備ラインが低かったとしても、ボールホルダーに対してしっかりとプレスが掛かっていれば良い守備と言える」と説明した。

「自分としては、例えゴールから10mの位置まで引いて守っていたとしても、しっかりとしたシステム、規律があって、守備に対する良い姿勢(モチベーション)があって、全員がハードワークをしてボールにプレスを掛けて、その先にゴールを奪うためのアクションに移行するという狙いがあれば、それは“ボールへのプレスが掛かっている勇敢なチーム”という解釈になります。逆に例え守備のスタートラインが高くても、ボールホルダーへのプレスが甘ければ良い守備とは言えないと考えています」

確かに、フットサルでもサッカーでも時折「ただ何となく前から行っている」という守備を目にすることがある。ラインは高いのに、アグレッシブさに欠ける。あるいは1人の選手が猛然とボールを追い回すも、味方と上手く連動できておらず、空回りしてしまう。典型的な「チームとして狙いが統一できていない」状態だ。ピッチの味方同士で同じ狙いを持てていなければ、闇雲なプレスはただの無駄走りに終わってしまう。そうならないためにも、「守備の狙いを明確にするのは監督の重要な仕事」だと木暮氏は語る。

「どんな監督さんも守備のラインは設定するんですよね。前からとか、ハーフからとか。けどそこで終わってしまっていて、“じゃあハーフで守るとして、どこでどうやって限定して、どこで奪ってどういう形で攻撃に繋げるのか”というところまでが決まっていない場合が多いのかなと感じています。相手はこういう形でボールを回してくるから、サイドにボールが出たら中を切りながら寄せて限定して、縦に出させたところをフィクソが狙うとか、その時逆アラはどこまで絞るとか、そういったガイドライン(明確な基準)をしっかりとチームに落とし込む必要があります」

木暮氏のいう“ガイドライン”を監督が明確に示すことで「チームとしてこうやって守るんだ」という狙いが共有できていれば、選手たちはそれぞれのポジションで約束事に則って自信を持ってプレーすることができる。「この位置ではまず、優先順位として第一にピヴォへのコースだけは絶対に消す」「今もし味方が縦に抜かれたら自分のマークを捨ててカバーに行く。自分が捨てた選手は逆アラが絞ってケアしてくれるはず」といった具合に、だ。頭の中が整理されていれば必然的に球際はアグレッシブになり、しっかりとプレスが掛かった守備となる。

だが、具体的なガイドラインが決まっていなければ、選手たちはそれぞれが描く別々のイメージで守備をするしかない。どのポジションでどこを消してどこで奪うのかが明確になっていなければ、寄せる角度やコースの切り方も曖昧になる。当然連動性は生まれないし、「ここは寄せて良いのかな? 次の選手は狙えている(寄せる準備ができている)のかな?」と迷いながらプレスを掛けることにもなる。これではたとえディフェンスのスタートラインを前からに設定したとしても、前述した「ただ何となく前から行っている守備」となるだけだ。その状態で「球際をもっと激しく!」とか、「もっとアグレッシブに!」と檄を飛ばしたところで、「気合いでボールを奪え」と言っているのに等しく、精神論の域を出ない。連動性の乏しい闇雲なプレスになってしまい、空走りが増えるだけだろう。

木暮氏はスペイン時代の恩師から「特に守備においては、選手全員が疑問なくプレーできる状態を作れているかが大事だ」と言われたことがあったそうだ。試合に向けて相手を分析し、どの守備システムがベストかを選択し、狙い所を明確にして練習で選手たちに落とし込む。そういった論理的な根拠に基づいた準備があって初めて、選手たちは試合でアグレッシブなプレーができるようになるのだ。これまでの3回の講義でも感じていたことではあるが、フットサルという競技における監督の重要性を改めて痛感させられる講義となった。

文:福田悠

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