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潤いが大事

先日、タミオくんのお休みに合わせて私が定時脱獄を図り、私が間違えて買い足した豆乳の消費を理由に、おうちで豆乳坦々鍋パーティーをした。

言わずもがな、タミオ君は喜んでくれた。


帰ってから一緒に作った豆乳鍋はとても美味しくて
ずり落ちそうなズボンをガニ股で支えながら洗い物をしてくれたタミオ君はとても可愛くて

私も喜んだ。



その前に。

ひとつだけ私の方が恥ずかしくてここに書き記せなかった事があるんだが

どうも彼は性欲が強いらしい。
誰と比べて強いんだか、強いんだとどうなるんだか実際のところ良くわからないんだけど、強いと思っているらしい。


そして、交際を開始したあの日

私がカミングアウトした複数の子宮疾患や服用中のピルについて自分なりに調べたようで、行為に痛みが伴う可能性があることや、性欲がなくなる場合がある事を知ったようで

どうもその後、自分の欲望を抑えるために
性欲抑制の薬があることまで調べたものの売り切れで買えなかった、病院に行けば処方して貰えるけどそこまでするのもな、と言って私に暴露トークをかましてきた。


待て、ネットで買う前に言ってくれ。



確かに人より欲望は少ないかもしれないし
病気が発覚して以降はそのような機会がなかったために私も痛みについては未知なる世界となるわけで

そもそも致すこと自体が久しぶりすぎて
その行為自体に不安がないと言えば嘘にはなるけど


決して性欲がないわけではないし
そう言う事をしたくないわけでもないし
健康体な貴方にあえて薬を飲んでまで欲望のレベルを合わせてもらうのは本望ではない。


と、熱く説得した。




タミオ君が家に来て、私に何の手も出さずに帰って行くのは、超奥手なだけが理由ではなかった。


好きだと言えない事件についてもそうだけど
私は悉く、タミオ君から与えられる愛情に度肝を抜かれては、自分の不甲斐なさを情けなく思う。


不甲斐なさって表現は合っているのかな。

好きだと伝えられなかったのも、そういう引け目が心のどこかであったのかな。


そこまで大切に思ってくれて
それでも諦めないでいてくれて
ありがたい気持ちと嬉しい気持ちと、この上ない幸せな気持ちを、『好き』だという言葉と一緒に、自分の口から素直に伝えられた。



その日
それまでほんの一瞬別れ際のハグだけを交わすプラトニックな恋愛から、ハグの時間を伸ばすという進展を果たした。
(充分プラトニック)


そのまま一体化してしまうんじゃないかと思うぐらい、長く身体を寄せ合って
手を繋いだり、髪を撫でて貰ったり、引っ付いて横に並んだり、恥ずかしくて目を合わせる時間こそ少なかったけど、すぐそばにいる事を実感するように、お互いの手をさすったりした。



タミオ君の後日談『本当は蛇の生殺し』だったというその時間は、不思議なほどに一瞬で過ぎ去ってしまい

でも今まで感じたことのない満たされた時間だった。
そしてありがたいことに、タミオ君も同じ気持ちでいてくれた。


生殺しだったのは実に申し訳ないけど

大人になってからでも、こんなにプラトニックな関係は成立するんだなって
実際に一線を超えなくても、心が繋がっている感覚になれるんだなって 思ってしまいました。


帰り際、お見送りの時
ちょうど玄関の段差を使って最後にもう一度ハグをして


どちらからともなく

いや、どちらかと言うと私から少しだけせがむような素振りを見せて


二人の唇が重なった。



それはまさに
【ぎこちない】という言葉が何よりも良く似合う
一瞬のキスで

互いの温度や感触を味わう隙もないぐらい
二人とも乾燥していた。

もはや 音がするぐらいガサガサだった。


信じられない感覚と、照れと、喜びで
一緒に声を出して笑った。



まだまだ少しだけ緊張してしまうおうちデートで
たくさん喋ってたくさんひっ付きすぎて

もう二人ともいい年なのに
こんなにも恥ずかしくて、嬉しい。



そしてとても、愛おしく感じた夜でした。

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