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中秋の名月

びっくりするような大きくて赤い月でした。


私は昔から天体観測が好きだ。


望遠鏡を持ってるとか、星に詳しいとかそういうのは全然ないんだけど

ロケット関係の仕事についてから
宇宙に興味が沸いたのもあると思う。


単純に 空は、癒される。


宇宙だとか星だとか月に捕らわれず
空が好きなのかも。


なかなか大人になると
ただ空を見てるなんていう時間もないし
どんなに綺麗な空でも気付かなかったりするし

今日の夕焼けは美しいとか
今日は星が綺麗に見えるとか

そんなことを共有できるような人に
安心感を覚えたりした。


ある意味

自分と近い感覚を持っている人を見つける
バロメーターになっている気がする。



今同じチームで働いている年上男性で
とてつもなく教育に手こずっている人がいて

結果その人は来週から別のチームに引き渡すことになり
3か月という短い付き合いを経て
仲間としては別れを告げることになった。


毎日のように
社会人として根本的な事を教えるかのような
レベルの低い説教をしたし

その日も例の如くそうした後に
定時後の暗くなった社内にある郵便ポストを案内するべく建物の外に出たら

目の前に現れたのは、大きくて赤い中秋の名月だった。



彼は言った。

「今日は酒飲むしかないですね」



「・・・どういう意味?」


説教の直後である。


頼んだこともやれてない、教えたことも聞いてない
言い訳は二転三転する上に
朝一で聞けと言った社内便の出し方を
夜中に案内する羽目になった私は疲れていた。


彼のおかげで定時後になっても
自分の仕事を片付けられない

捗るはずの夜中に
毎日言い訳を繰り返す彼に説教しなければならない日々に

救いの手を差し伸べてくれたのは仲間たちであった。


コロナ対策で同じ部屋にいない同僚を含め

みんながこぞって上司に掛け合ってくれたおかげで
彼のチーム移動が決まった。



これまで何度もSOSが届かなかった経緯から
私は自ら上司に助けを求めなかったけど

長年の努力で築いた仲間との信頼関係が
実を結んだと改めて思った。



「中秋の名月だからです。」


説教の直後だとは到底思えない
酒を飲む理由を述べた彼は楽しそうに言った


「本当は皆さんと酒を交わしたかったんですけどね~成長した姿も見せたかったし。」



どういう気持ちでそんなことを言ってるのか
どこがどう成長してるんだか説明して欲しかったけど



私は大人なので


「チームが分かれるだけで同じ部署なんだし、会社の飲み会があれば一緒になるよ。そもそもコロナ対策で完全に退職する人の送別会もできないって部長が嘆いてたじゃん?」



コロナ禍の自粛期間を理由にできる今

この状況が有難い場合もある、って噛みしめる次第。




今我がチームには7人仲間がいるんだけど

そのうちの3人が近所に住んでいて

地名をそのまま名前にしたLINEグループがあって


毎日のようにそのグループで
仕事が終わってからも連絡を取り合ったりしている。


先日、なんとか流星群が見られると言った日(失念)
たまたま別の話で連絡が来ていたそのグループに

「私は流星群を見るために今ベランダに出ています」

と返信をしたところ


それぞれ自分の家のベランダから
各々が酒を片手に流星群を見るという

ロマンティックな展開になった。


実際はロマンティックでも何もなく

お互いに飲んでいる酒や何も見えない空の写真を送り合いながら
結局流れ星にも気付けない頻度でLINEを交わすことになり

1人の寝落ちをきっかけに解散するという

楽しい夜を過ごした。


流れ星は見えなかったけど

ひとりじゃない って感じられることが

こんなにも幸せなんだと実感した夜でした。



中秋の名月はとても美しかった。

心は穏やかではなかったけど、綺麗で見惚れた。



流星群は見れなかったけど

顔も見えず声も聴かずにではあれど
一緒に流星群を見てくれた人がいて

嬉しかった。




早くコロナは終息してほしいけど

おかげで気付いたことも沢山あります。


大切にして過ごそう、と思った 

下半期の始まりでした。


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