アイドルの初恋って実らないものですか? #1 リメイク版
(21/9/14 公開作品)
ガタンゴトン…
○)…やっぱりダメだったか…
とある大会に出場した俺はうなだれながら帰りの電車に揺られていた
十年弱前に上京してからこの日のために頑張ってきたのだが完全な努力不足だった…
○)…一応就職先は決まってるけど…どうしよっかなぁ…
満員電車に押されながら今後のことを考えていると…
?)うぅ…
隣で小さな呻き声をあげているマスク姿の女性がいた…
大丈夫かと声をかけようとしたとき、ふと下の方を見ると
サワサワ…
痴漢に遭っていた…
○)(全く…)
ここで○○のワンポイント講座~痴漢に遭っている人を見たら編~
痴漢が触っている手と反対側の手で手の甲を鷲掴みします
○)ガシッ
痴)!?
?)え…?
そしてつかんだ相手の手の小指を起点に思い切りひねってあげます
○)ぐるっ
痴)いだだだだ!
?)…あ
最後に反対の手で持っていた相手の手首を固定させたまま持ち、先ほどひねった方と同じ方向にひねり上げてこう言います
○)この人痴漢です!
――
警)ありがとうね
○)いえ、自分は特に何も…
警)それで、被害者の方がお礼をしたいと
○)そんなのいいのに…
警)まあまあ、そんなこと言わずに、ガチャ、お入りください
?)あ、あの…先ほどはありがとうございました…
○)い、いえ、わざわざご丁寧に…
警)あ、自分は少し業務があるので話が終わったら勝手に出て行ってください、では
○)あ、え?
バタンッ
○)行っちゃった…
?)あの…○○さん…ですよね?
○)はい、警備の方に聞きましたか
?)い、いえ
○)?じゃあ何で俺の名前を…
?)あ…私小坂菜緒って言うんですけど…覚えてませんか…?
○)…?ごめんなさい…ちょっと覚えてないです…
菜)ですよね…かなり昔の話ですから…
○)いやそれでも忘れるのは失礼なことで…
菜)いえ、いいんです
○)えっと、いつお会いしましたか…?
菜)○○さん大阪の小学校ですよね?
○)そうです
菜)○○さんが6年生のとき私が1年生でした
○)うん…
菜)入学したての頃、私たちの学校では6年生の方々が一か月ほど学校に慣れるようにお世話をしてくれます
○)え…
菜)そして私の世話をしてくれたのが…チラっ
○)俺ってことは…もしかして…菜緒ちゃん!?
菜)思い出してくれましたか…?
○)思い出したとも!っていうか、逆によく覚えてたね!
菜)忘れるわけないですよ、だって…
○)だって…?
菜)いや、何でもないです!
○)そ、そう?
菜)はい、そういえば○○さんは今何してらっしゃるんですか?
○)今は…ちょっととあるスポーツをやってたんだけど、大会負けたし今日で引退かな…って
菜)あ、ごめんなさい…ナーバスなこと聞いちゃって…
○)ううん、全然いいよ、だからこれからはそのスポーツつながりで自衛隊とか色んな段位を持ってるから警察官かなぁ
菜)え、凄いじゃないですか!国を守る仕事なんて
○)うん…でも他に自分にとっていい仕事もあるかなっていろいろ探してるんだよね
菜)そうなんですね…
○)菜緒ちゃんは何してるの?
菜)私は…アイドルやってて…自分でこういうのあれですけど…知りませんかね…?
○)ごめん…練習ばっかでテレビとか全然見てないんだ…
菜)そうですか…それなら仕方ないですね…
○)…というか今日は仕事じゃないの?喋ってて待たせたりしたら…
菜)いえ、今日はオフなんでメンバーと遊ぶ約束してるだけなので大丈夫です
○)…結局待たせちゃうことになってない?
菜)…あ、そうか…
○)大丈夫かよ…
菜)じ、じゃあ待たせちゃってるので私行きますね
○)うん、頑張ってね
菜)はい!あ
○)ん?
菜)連絡先交換してもらってもいいですか?
○)え、いいの?そういうの
菜)多分大丈夫です、なのでお願いします!
○)わ、分かった…
菜)ありがとうございます!
結局菜緒ちゃんの圧に押され連絡先を交換してしまい、その日はそこで解散することに
そしてそれから連絡もないまま数週間がたった…
ピロンッ
○)ん?誰からだろ…
携帯を開くと、菜緒ちゃんから連絡が来ていた
○)…急だな…どうしたんだろ
菜L)お久しぶりです!突然ですがお会いすること出来ませんか?○○さんにとっても私にとっても大事な話があります
○)…お互いにとって大事な?何だろ…
特に断る理由がなかったので日程を合わせて、待ち合わせ場所に向かう
菜)○○さん!こっちです!
菜緒ちゃんに手招きされて席に着くと、正面に菜緒ちゃんといかにも偉そうな方が座っていた
○)…えっと、失礼します
?)ははっ、そんなかしこまらなくても大丈夫だよ、私は今野と言います
○)はぁ…今野さん…
今)彼女が所属している事務所の代表をしてるんだ
○)あ、そうなんですか…
今)でだ、今日お越しいただいたのは、小坂のマネージャー兼ボディーガードになっていただきたくお呼び致しました
○)…え?
今)これは小坂たっての希望でもあり、○○さんの能力を見ても適任ということで…
○)いやでもマネージャーとかになると素人ですよ?
今)それが、お恥ずかしい話、彼女たちの人気が上がるとともに我々スタッフの人でも足りなくなり、猫の手も借りたいと思っていたところで…
○)…
今)もちろん研修の面ではしっかり対応していきます
菜)それにボディーガードは大丈夫でしょ?○○さん身体能力が高いですから
○)う~ん
菜)私、あれから調べたんです○○さんの事、そしたらこの前の大会でも日本2位になってて、結構その界隈では有名だって
○)ま、まぁ…それなりには
菜)それで前に会ったときに色んな仕事を探してるって言ってたので、私のことを守ってほしいなと
○)…そういうことか
今)でも何でもうやめちゃったの?
菜)そんなストレートに…
今)2位ということは全然これからも可能性があったはず、そんな簡単にやめられるものじゃないと思うのです…
○)…
今)差し支えなければお話し願いたいのだが…
○)…2位というのは今回だけじゃないんです
今)ほぉ…
○)以前から同学年で常に俺の上を行く選手がいるんです
菜)えっと…サトウ選手だっけ
○)そう、左の東の左東、十年ほど前にこっちに上京してから公式戦であいつに勝ったことがない
菜)…
○)それで一か月弱前くらいですかね、勝てなかったら最後と決めていた大会の決勝でまたあいつと顔を合わせて惨敗したんです…
今)…
○)…それで俺の中で何度も挑戦してやり切ったというか最後って決めてもいたので、もういいかなって思えたので…
菜)そういうことだったんですね…
今)すまんな、話してもらっちゃって
○)…いえ
今)…どうする?職がないというわけではないから○○さんがやりたいようにでいいよ
菜)…
○)…分かりました
今)本当ですか?
○)はい、謹んでお受けいたします
今)ありがとうございます
菜)良かったぁ…安心したらちょっと…お花を摘みに行ってきます
今)行ってらっしゃい
○)…
今)…実はね?この数週間ずっと小坂にお願いされてたんですよ、○○さんを会社にって
○)そうなんですか…?
今)あぁ、熱心にプレゼンしてくれてね、最初は素人の子なんてとみんな言っていたが、彼女の熱に全員が負けたんだ
○)…だから調べてくれていたのか
今)そうだね、彼女のためにもしっかり頑張ってね
○)…はい!
菜)お待たせしました!
今)うん、じゃあ行こうか
○)行くって、どこに?
今)早速だが、メンバーに挨拶をしてもらう、今レッスン場にみんないるから
○)…そんな急に
菜)大丈夫です、私がついてますから!
○)菜緒ちゃんだから不安なんだけど
菜)何を~
今)まぁまぁ、じゃあ行こうか
二人に連れられ、メンバーがいるというレッスン場に
今)じゃあ行くね
ガチャッ…
今)お疲れさま~
メ)お疲れ様です!
今)ちょっとみんな集合!
メ)はい!
Prrr…
今)おっとすまん、電話だ、後は小坂頼む
菜)え!?
今)すまんがすぐ戻ってくるから、頼んだ、ガチャッ…
菜)えぇ…
○)…
菜)えっと…まずはみんなに紹介したい人がいます!こちらの○○さんです
○)○○です、よろしくお願いいたします
久)えっと…どういう方?
菜)この方は、私のマネージャー兼ボディーガードで、そして…
菜)私の初恋の人です!
○)…え?
メ)えぇぇぇ!?
to be continue…