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就活生は人事部と恋愛してはダメです!...よね? #5 リメイク版

(21/9/28 公開作品)

――時は流れて5月

4月下旬からのES審査のピークが少しだけおさまり、本格的な面接も少しずつスタートした

以前言っていた通り面接によっては自分も一次面接の担当をしていた

そしてとある日の昼休み、俺は最寄駅近くのチェーン店に来ており、仕事場に戻ろうとしていた

○)スタスタ…ん?あれは…?

遠くの方で見覚えのある人物が覇気なくトボトボと歩いていた

○)あれは…加藤さん?

声をかけようと思ったが、自分も昼休憩の時間が無くなっていたので会社に戻ることに

ピンポーン…

そして、仕事が終わった俺は帰って荷物を置いた後、いつの間にか加藤さんの家のインターホンを押していた

○)…

ガチャッ…

加)あ…○○さん…

ドアが開けられると、寝間着姿で昼に見たような憂いに満ちた加藤さんが立っていた

○)…どうも

加)…どうされたんですか?

○)いや、ちょっと今日駅で加藤さんを見かけてさかなり落ち込んでたようだったので…

加)え…

○)遠くからだったから加藤さんじゃなかったかもしれないけど、どっちにしても様子が気になって…

加)そうなんですね…ありがとうございます…じゃあどうぞ上がってください

○)ありがとうございます

加藤さんの家に上げてもらい、お茶を用意していただく

加)どうぞ、コトッ

○)ありがとうございます、綺麗にしてるんですね

加)そんなにですよ、○○さんが来るならもっときれいにしていたのに…

○)全然大丈夫ですよ?

加)それなら良かったです…

○)…じゃあもう聞いちゃうけど…就活上手くいってない?

加)…はい

○)…そっか

加)ぐすっ…

○)…スッ、ギュッ…

加)うぅ…

○)…今くらいは頼ってください、就活の失敗は加藤さんが思ってる以上に精神的にくるものなので

加)うっ…うぅ…ギュッ…

○)…

胸の中ですすり泣く加藤さんを抱きしめながら頭をなで続けること数分…

加)…っふぅ…

○)…だいぶ落ち着きましたか?

加)はい…本当にありがとうございます

○)俺でよかったら聞きますけど…

加)…実は本格的にESとか面接始まったんですけど…上手くいかなくて…

○)…実はってうちにES出してくれたんだから…

加)え、○○さん見たんですか!?

○)そりゃ人事部なんだし…

加)恥ずかしぃ…

○)でもしっかり書けてましたよ?問答無用で通過しましたし

加)ありがとうございます!

○)面接の予約、来月にしてたんでしたっけ?

加)はい、第一志望の前に面接経験して練習しようと思ってたんです…でもその前に心が折れました…

○)…どの段階でダメなんですか?

加)ESや一次は通過することが多いんですけど…それ以降が…

○)確かに文章力とか社会人としてのマナーは問題ないので一次まで通過するのは分かりますね…

加)そうなんですか?

○)えぇ、一次面接ではほとんどの会社ではちゃんと人として当たり前の行動をしているかを見てるんです、いざ採用をして変な行動をとられて企業イメージ下げられたら困りますからね、そういった面では加藤さんは大丈夫だと思います

加)あ、ありがとうございます…

○)でも二次以降厳しいとなると…自分をしっかりアピールしないとだめですよ?

加)アピール…?

○)会社に本当に入りたいということはもちろん、自分の長所、能力を言っていかないと

加)言ってるつもりなんですけどね…

○)そうなんですよね…だからこそ落とされたとき人格否定されてるみたいでつらいんですよね…

加)でも今までのもつらかったんですけど、今日ので堪えました…

○)…何かあったんですか?

加)面接官の人に君の代わりはいくらでもいるって言われちゃって…

○)…なるほど

加)それで精神的にやられちゃって…でもそれは事実だろうし…

○)…加藤さんの肩を持つわけじゃないですけど、その面接官は少しおかしいですね

加)え?

○)正直加藤さんがいない穴を埋めたり、代わりを務めてくれる人は他にはいないと思います

加)ほんとですか…?

○)でも裏を返せば加藤さんと違う個性、才能を持った人が山ほどいます

加)…

○)その中で加藤さんは自分にしかないもの、そして人より優れていることをアピールしていかないといけません

加)はい…

○)ましてや院生の加藤さんのほとんどのライバルは、仕事のスタートは同じ初心者なのに加藤さんより2歳も若く、給料も安く済む人材なので、そんな人と同じようなアピールをしても絶対採用してもらえませんよ

加)…

○)…すみません、何か死体蹴りみたいなことしちゃって…

加)い、いえ、全然大丈夫です!逆にためになるアドバイスありがとうございます!全然そういうところ考え切れてなかったので、本当にありがとうございます!

○)それでも、ごめんね、偉そうに言っちゃって

加)私は全然大丈夫ですけど、逆に○○さんは大丈夫なんですか?

○)何がですか?

加)人事部なのに就活生にこんなにアドバイスして…

○)…あんまりよくない…かな笑、それに一人だけに言ってますから余計に…笑

加)え…大丈夫なんですか?

○)…まぁもう正直加藤さんは特別だから別にいいですよ

加)特別…?

○)えぇ、じゃあもう夜遅くなってきたので、これで

加)ちょ、ちょっと!特別って何ですか!?

○)さぁ?何でしょうねぇ?

加)ちょっと~!はぐらかさないでくださいよ~!

○)じゃあ頑張ってね

加)ま、待って!ギュッ!

○)うおっ!どうしたんですか

加)分かんないですけど、このモヤモヤが解決するまで帰しません!

○)モヤモヤ?

加)特別って何のことかということと特別って言われたときのこの胸が締め付けられるというか苦しくなるというかキュンキュンしてもうどうしたらいいのか分からない感じがして

○)ちょっ、加藤さん?

加)プハッ!はぁはぁ…

○)そりゃ息継ぎ無しで喋ってたらそうなるでしょうよ…

加)教えてくれるまで帰しませんよ!

○)嫌ですよ、言うようなことでもないですし…

加)じゃあお泊り確定ですね!

○)なんでそうなるんですか…というか急に抱きつきに来ないでくださいよ…

加)いいじゃないですか!○○さんと私の仲なんですし!

○)またですか…いつの間にそんなに仲良くなりましたっけ?

加)いつの間にかです!

○)…結局いつなんですかそれ…

加)ぎゅ~

○)痛い痛い…

しばらくの間抱きしめられていたが、加藤さんは先ほどまで泣いていたため頭をなで続けていると…

加)スゥ…

○)…寝たかな?

腕の中で心地よく眠る加藤さんをベッドに移し、布団をかけてあげる

○)おやすみなさい、加藤さんなら絶対成長して、成功できるから…頑張ってね…

すやすやと眠る彼女に激励と期待を込めた言葉をかけ、加藤さんの家を出た○○だった…

to be continue…