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【記憶の目盛りと、自分】 〜櫻坂46 『何歳の頃に戻りたいのか?』について〜

『何歳の頃に戻りたいのか?』

櫻坂46の8枚目シングル『何歳の頃に戻りたいのか?』にタイトル曲として収録されている楽曲です。

私は、この曲の構成を以下のように捉えています。

① 1A+2A
② 1B+2B
③ 1サビ(=ラストサビ) +2サビ

この点を踏まえて、ここからは私の解釈を書いていこうと思います。


① 1A+2A

主人公である社会人の自分は、いまの生活に嫌気がさしているのでしょうか、ふと青春に想いを馳せます。頭の中にある、「記憶の目盛り」を合わせながら___

「All day ずっとソファーに寝そべって
スマホを見てる非生産的日常 
あんたを見てると腹が立つ 
一瞬 殺意さえ浮かぶ 悩み一つないなんて 世の中 舐めてるんだろう?」

「一体 何に挫折したんだろう?
目指した夢がなんだか 思い出せなくなった
腹立つあんたはよく似てる 
現状維持でいいんだ 
明日に期待しなきゃ 傷つくこともないさ」

まず浮かび上がったのは、大学生の頃の様子でしょうか。スマホを見てだらだらするという、決して有意義とは言えない時間の使い方をしている過去の姿に嫌悪感を抱き、しまいには殺意さえ浮かぶ始末。しかし現状と似たようなものも感じているようです。「現状維持でいい」 「明日に期待しなきゃ傷つくこともない」と何かを諦めたような様子は、どうやら大学生の頃から変わらないようです。

嫌なものからは目を逸らしたくなるものです。自分は慌てて記憶の目盛りを合わせ直します。美しき青春の追憶を夢見て。



② 1B+2B

すると、どうやら美しき青春の情景が蘇ってきたようです。

「夕暮れのグラウンドで一人
ピッチャーゴロに全力で走ってたあの日
間に合う 間に合わないは 
生きる答えじゃなく 僕のイノセンス」

「真っ暗なグラウンドの風は
どこかを走る列車の汽笛を運んで
行き先がどこかなんて 今はどうでもいい 
微かなリグレット」

今度は中学生か高校生の頃の様子でしょうか。ところで、ピッチャーゴロに一人で走るというのは不自然です。私は、頑張る必要はない事に対してもあえて一生懸命取り組んだ青春を表現しているのではないかと考えています。「間に合う間に合わないは生きる答えじゃなく僕のイノセンス」や、「行き先がどこなんて今はどうでもいい」といった言葉からは、意味があるかないかなど考えず心に任せてなんでもやってみよう、という若さからくる無邪気さが感じられます。輝かしく、いかにも「青春」という感じがします。しかしながら、その後「微かなリグレット」と続きます。華やかに見えた思い出は、実はそうではなかったのでしょうか。歌詞に改めて注目すると、一人という言葉があることに気づきます。ちなみに私は、青春と孤独は共存しないと考えています。仲間と切磋琢磨した部活や学業、友達と遊んだり喧嘩したりした思い出、恋人との甘酸っぱい経験、大人との対立……。青春には他者の存在が不可欠なのです。かつての自分は何らかの理由で孤独を選び、自らの信念に基づいて生きていたのではないでしょうか。当時から微かな後悔を抱きながら。ほろ苦いそんな思い出も、いまとなっては、いや、いまだからこそ美しく見えるのです。



③ 1サビ(=ラストサビ) +2サビ

「自分が 何歳(いくつ)の頃に戻りたいか
記憶の目盛りの合わせ方を忘れた
(Go on back)
最高の日々は終わった?
幸せな日々は消えた?
輝いた瞬間(とき)は遠く
(Those days)
過去に 戻れやしないと知っている
夢を見るなら 先の未来がいい」

「本当に あの頃 そんな楽しかったか?
きっと 特別 楽しくはなかっただろう
(Go on back)
思い出の日々は普通だ
目に浮かぶ日々は幻想
美しく見えるだけさ
(Those days)
大人になったその分だけ
青春を美化し続ける」

最初は幸せな思い出を求めて記憶を辿った自分ですが、結局いつが一番幸せだったのか分からなくなってしまいました。よく考えたら、昔も大して充実していなかったのではないか、とも思うようになりました。そして、いまがしんどいから青春を美化しているだけなのだと悟ります。どうやっても過去に戻ることはできないのだから、未来にベクトルを向けて生きていこうと決心します。

ちなみに、「記憶の目盛りの合わせ方を忘れた」についてですが、私は、自分が過去への羨望を二度としないために、敢えて合わせ方を忘れたのではないかと考えています。これからもつらいことが多く待ち受けているであろう自分にとって、美しい思い出を蘇らせる「記憶の目盛り」は一種の救いとなってしまいます。それをあえて無力化させ、いまを生きることに集中するようにしたのではないでしょうか。

〜おわりに〜

ところで、過去ではなく未来に目を向けることの大切さを説くこの楽曲のセンターが山﨑天ちゃんであるという事実は、非常に大きな意味を持つのではないでしょうか。グループ(当時は欅坂46)加入時から、3期生が加入するまでの長い間、最年少メンバーでありながらも頼もしい姿を数多く見せてくれた彼女が、過去にすがることなく常に未来に目を向けていくことで、彼女自身はもちろん櫻坂46というグループもより強くなっていくでしょう。



最後に、MVのリンクを貼っておきます。

https://youtu.be/7xx66mR_HeE?si=cx2Z1Xyv36wSinBi

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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