大宮脱毛日記4
あの大騒ぎの初回から日が経った、私は城本クリニックの5回コースを申し込むことを決心した。
何故続けようと思ったのかは以下のとおりである。
・物凄く毛の勢いが衰えた
・生えてないのでは?みたいなエリアが出た
・この効果ならあの痛みは許容範囲にするべきであろう
毛の勢い、それはもう物凄く衰えた。しわしわのおばあちゃんもびっくりっていう程衰えた。
たった一回で驚きの衰えである、これが若返りを望んでの他の手術なら訴訟ものであろう。
そしてあの痛みに慄いたのか生える事を拒絶するエリアが出て来たように思える、まあ毛の生えるサイクルは得てして自分の想定外であるらしいからたまたまの可能性ももちろんあるが。
新たに生えてきた毛達はもうどうしたもんかという程頼りない外見で、言うならば年中さんみたいなもんだった。(分かりにくい例えだと思う、年少ほど幼くはなく、かといって年長さんほど成長していないという事が言いたいだけだ)
そして奴らは大変やる気がない、今流行りのZ世代も裸足で逃げ出すほどやる気がない、どうやる気が無いのかといえば抜けるのだ。つるりと根元からそれはもう気が付いたら抜けているのである、そのせいで私のセクシーとは程遠いパンツの中は一センチ以下のやる気のない抜け毛だらけになった。
何とも腹立たしい、換毛期の短毛種の猫や犬はこういう気持ちなんだろうかとか思いつつパンツをぱんぱん払っていたのだがふと思いついた、根こそぎ除去すればいいんじゃないか。
奴らはどうせ抜ける運命共同体なのだ、自分で抜けるか他人から抜かされるかの違いでしかない。
何をしたのか、まあ簡単に言えば私は布ガムテープを持ち出しやる気元気勇気全てが皆無の毛達を張り付け、引き剥がしたのである。
それはもう爽快な眺めであった、美しく開墾された畑を作成しているかのような気分で私はそれはもう丁寧に毛を布ガムテープで全て除去した。
私はそのやたら美しい仕上がりに大変満足していたのだがその行為は褒められたものではないという事を残念なことに知ることとなるはめになってしまった。
その後またも不死鳥のごとく生えて来たやる気のない毛を予約日前日にチャカチャカして私は大都会大宮に降り立った。
大宮は人が多く、ぼーっとしているとすぐに人にぶつかりそうになる。大宮でこれなら東京やニューヨークやらに行ったら私は挽肉になるんじゃないだろうか。
まあとかく、二回目という事でもう地図もメールも見ずに城本クリニック大宮店の扉を開ける。頼んでいた元気レディは姿が見えず、知らんお姉さんがマシーンからスリッパを出してくれて先日と同じブースで待つようにと言い残して去っていった。
前回の反省を生かし今回は三分前到着である、日本人としてギリギリのベストタイミングではなかろうか。鼻息も荒く担当の元気レディを待つが彼女は10分過ぎても現れなかった、私のいるブース以外では何やらが着々と進んでいる雰囲気を感じるのに私だけが意味もなくスマホをいじっていていいのだろうか、私の予約時間から10分分早回しで施術とかにはならないのだろうか、心に黒雲が広がってきた、痛いのをバチコンバチコンマッハ2とかでやられたら失神してしまうかもしれん、というかその前に私忘れ去られてないか?
15分経過した、うーむ。これは伝家の宝刀「あのぅ…」を使う時が来たのでは?口を『あ』の形に開ける練習をしていると奥からずざざざざざみたいな勢いで元気レディが私のブースに飛び込んできた。
おおう、いたのか。
やたらめったら米つきバッタのように詫びるレディ、いいんだよ人間生きてりゃ時間通りに行かんことなんてしょっちゅうよ。
そしてこれまたマッハで5回分の契約と支払いをし、マッハで玄関の隣にあるもう馴染みと思える天井スカスカブースに入ると早着替えである。因みに防御力-2の紙パンツは面積が広い方が前で紐が後ろだった。まあ普通に考えてそうか。
元気レディは出力前回より上げますねという鬼のようなことを微笑みながら仰る、出力上げるってどのくらいですか先生。1→2ですかそれとも1→5でしょうかあ、いったあああ!
まただ、ぎゅむと摘ままれてバチコンピリリみたいなのが延々続くこの時間が容赦なくスタート。
はあはあと痛み逃しの呼吸をしつつも昼に食べたラケルのオムライス臭くないだろうかと気になってしょうがない、マスクをすればよかった。しかし目元をタオルで覆われ口元マスクとか私ミイラでは?とか考えて呼吸しやすい方がいいよね☆とか考えていた数秒前の自分を殴りたい。絶対マスクだろう、次回はマスク手の甲にメモしておかなければ。
いてえいてえ、前回と同じく反対側の足はぴょんぴょこ動きまくり、ぐえだのおえだの通常生活しているときは世間様に聞かせない音声を駄々洩れしているこの状態。端的に言って轢かれた蛙である。
小さい方に変えますねーと元気レディが告げて少しほっとしたのも束の間、針でずびしっと刺すような痛みがデリケートゾーンに走る。ええ聞いていないよ、ねえパトラッシュどうして?前回は大きい方の方が辛かったのに、小さい端末も痛いとかこれ地獄では?
痛みから意識を逃したくて無理やり日常会話をしようと試みる施術用スカートを拳のように握りしめるゴリラこと私。
しかし鋭敏の痛みの前に日常会話なんて高等なことは出来ない、せめて!せめて肌に押し当てられるとき以外(じゃ違う場所やりまーすみたいなタイミング)で会話を試みる。
「は、はのぅけ、毛が抜けて来た時、が、ガムテーぷで抜いたんですけど」
「え?抜けてパンツについた毛をですか?」
「い、いえ、ちょろちょろ抜けるのが嫌だったんで肌にガムテープ直貼りして」
元気レディの動きが止まった、おや?
「えーっとそれは肌に色素沈着が起きますし、毛に刺激を与えてしまうのでやらないで頂きたいなと」
おおっとぉ!一番やってはいけないことをボーンナチュラルにやってしまっていたっぽいぞ。嫌な汗が脇を流れている気がする。
「あ、そうですよね!次からはしません!耐えます!」
何を言っているんだ私は。
少々動揺したのかこの正に小部屋としか言いようのない空間が妙な空気で染まったが、流石プロフェッショナル、元気レディは今の話をまるで聞きませんでしたよ?みたいに明るい声を出して施術を進めた、アンタプロだよ。正しくプロフェッショナル仕事の流儀だよ。
いてえいてえと悶えながらも施術は終了し、母親以外の方に尻をぬぐわれるという大変申し訳ない様な気持ちを抱えながら本日はお開きとなった。
最後の最後まで元気レディは遅れたことを詫びたが、きっとそれくらい詫びるという事はとても何かドラマティックな事が起きて時間が押したんだろう、何もそんなに詫びんでもと思ったが次回もまた15分待たされたら少々考えてしまうかもしれない。
さて次回はちゃんとオンタイムで施術を始める事が出来るのか!そして2回の施術後の毛はどれくらいやる気をなくすのか!
こうご期待!
写真は大都会大宮で食べたチーズソフトクリーム。ソフトクリームの上に味のしない粉チーズが掛かってるよ。鼻息で飛ぶよ、味はコーンの部分がとても美味しいよ。
中々北海道を凌駕するようなソフトには出会えないもんだ、またもやゴリラの毛抜き後のソフト探索は続く。