リーガ再開後の展望(後編)
前編に引き続き、各ポジションごとに今後を展望していきたいと思う。今回はMFとFWを見ていく。
MF
⑧トニ・クロース
⑩ルカ・モドリッチ
⑭カゼミーロ
⑮バルベルデ
⑯ハメス・ロドリゲス
○レイニエル
アンカーは、カゼミーロの1強体制だ。相手の攻撃をことごとく潰しつつ、サイドチェンジやラモスのカバーリングなど多岐にわたる仕事を一人で背負える選手は彼しかおらず、年々その依存度は増している。控えのフェデにはポジショニングの不安があり、今季の残りもカゼミーロ以外の選択肢は無いだろう。怪我だけは絶対に避けてもらいたい、チームの最重要人物だ。
インサイドハーフは三つ巴の様相を呈していて、意外に定位置争いが過激なポジションだ。
ゲームメイカーとして不可欠だったはずのクロースはシティ戦でスタメンを外され、走力・知力・技術を兼ね備えたフェデも2月頃からはトーンダウンし、今季も攻守に奔走するモドリッチは35歳になり稼働率が低下。競争は今までより激しくなっている。
もちろん、選手の特性とチームの志向を総合的に鑑みればクロースとフェデのコンビが最有力であることは間違いないのだが、ジダンの最近のチョイスからうかがえる可能性として、このように記しておく。
また、得点力と創造性という異なる武器を持ったハメス、恵まれた体格と高い技術を持った有望株レイニエルも控えている。彼らが本領発揮をできればチームにとって大きなプラスだが、優勝争いの最中に彼らにチャンスを与えられるかどうかは不透明だ。
FW
⑦エデン・アザール
⑨カリム・ベンゼマ
⑪ギャレス・ベイル
⑰ルーカス・バスケス
⑱ルカ・ヨビッチ
⑳マルコ・アセンシオ
㉑ブラヒム・ディアス
㉒イスコ
㉔マリアーノ・ディアス
㉕ヴィニシウス・ジュニオール
㉗ロドリゴ
FWは選手数が多すぎるが、その分考察に富むカテゴリーである。少し話を掘り下げながら見ていこうと思う。
右ウイングは、絶対的な存在がおらず、最も競争が激しいポジションだ。ベイル、ロドリゴ、ルーカス、ブラヒムに加えて、アザールやヴィニシウスと併用時のイスコも便宜上はこのポジション。前十字靭帯断裂の大怪我からカムバックしたアセンシオも、このポジションでカウントすべきだろう。
この中でイスコとベイルは頭一つ抜けている印象だ。前者は流動的なポゼッションの質を高める潤滑油の役割で継続的な出場機会を得ていて、後者もコンディションが良好だった序盤戦は決定的な仕事を連発。これまでの経験値もあって両者に対するジダンの信頼は高く、今季の残りもプライオリティは比較的高そうだ。
ただ、両者とも今季の直接得点関与は少なく(イスコは3G0A、ベイルは3G2A)、もちろん他の選択肢も存在する。その筆頭はロドリゴで、イスコやベイルよりも短いプレータイムでより多くの得点に直接関与(7G1A)している事実は見逃せない。年明け頃から顕著になったプレーの消極性が消えれば、再び1番手に名乗りをあげるかもしれない。
また、先発で使うには物足りなさがあるものの途中出場であれば決定的な仕事をこなすルーカスも信頼度は高く、ジダンの構想には入っているだろう。
国王杯以外での出場機会が皆無に等しかったブラヒムと、1年も公式戦から遠ざかっていたアセンシオには与えられるチャンスはあまり多くないかもしれないが、両者とも技術に定評のある実力者だ。特に後者の久々の出場を待ち望んでいるサポーターはとても多く、大きな期待をされている。
左ウイングの定位置を争うのはアザールとヴィニシウス。大きな注目に値するポジションだ。
今季の補強の目玉だったアザールは、ピッチに立てば流石の局面打開力を披露したものの、怪我による3度の長期離脱と得点関与の少なさ(1G2A)という看過できない問題も抱えてきた。一方、19歳のヴィニシウスは課題だった視野の狭さとプレー判断の拙さを克服。もともとアザールにも引けを取らない独力での局面打開力に加えて最近は徐々にフィニッシュの精度も向上してきている(4G3A)。
本来の調子を取り戻せれば、経験値でも優るアザールの方がより多くの出場機会を得られそうだが、怪我の問題やヴィニシウスのさらなる成長次第では、序列がひっくり返る可能性も十分に有り得るだろう。
センターフォワードは、ベンゼマが引き続き先発を保ちそうだ。24試合で16Gを記録した前半戦の勢いは薄れたものの、実績と信頼は絶大。3ヶ月の休息を経た今後はさらなるゴールが期待できそうだ。
ただし、アザールとの併用時にサイドに流れすぎる悪癖は要改善。前線のターゲットとして、あまり動きすぎないでもらいたい。
控えのヨビッチは、適応に苦しみ続ける最中に自宅で骨折。その他にも外出禁止令の違反や10人以上での集会禁止の中での不用意な投稿と、軽率な行動がクラブの怒りを買っているようで、怪我が癒えても出場機会が得られる保証は無い。
むしろ期待が高まるのはマリアーノの方で、クラシコでの電撃ゴールで得た勢いを継続できれば面白い。悩まされていた血栓と決別できれば、ヨビッチの負傷中は2番手としてある程度の出場機会は得られるだろう。
また、一部メディアで報じられたアセンシオのコンバートは、今のところはお蔵入りになるのではないか。1年のブランクがあった選手を新たなポジションで試す余裕は現チームには無さそうだ。
むしろコンバートの価値がありそうなのはアザール。ゴールゲッターとしてのセンスと見た目以上のフィジカルを兼ね備えていて、実際にチェルシー時代にはこの起用でも高水準のプレーを披露していた。ヴィニシウスとの併用が可能になるのもこの起用法の面白いところで、ベンゼマ不在時のオプションにはなり得るのではないか。
最後に、余談になるがアセンシオの起用法を一つ提起して見たいと思う。それは、4-4-2の左サイドハーフだ。17-18シーズンに成功を立証済みのこのシステムは、前線にゴールゲッターを2枚並べられるメリットがある。当時のエース、クリスティアーノはもういないが、ラモスやベイル、カゼミーロなど"1発"がある選手はいるので、パワープレーを使いたい局面では有効な手段になるのではないかと思う。
ギャップ
ここまで長々と書いてきておいてなんだが、選手起用の予測はとても難しい。選手起用というものは、対戦相手によっても変わるし、3ヶ月ものシーズン中断があれば序列自体も大きく変わりうるからだ。だから、この展望はきっと外れまくるだろうし、予想だにしていなかった出来事が起こるだろう。僕は、試合が再開した時には、その「ギャップ」にも楽しさを感じながら観戦をしたいと思う。
ずっと待ち望んでいた、歓喜と絶望が紙一重のワンダーランドはもう、すぐそこだ。
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