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閉塞と劇薬

歩み

シーズン開幕から1ヶ月が経った。例年なら、徐々に新戦力の適応が進み、チームの色が定まってくる時期だ。だが今シーズンのマドリーには、そんな兆候は見受けられない。

コロナウイルスによる特殊な状況下、今年の夏の市場でマドリーは全く資金を投じなかった。実質的な補強はウーデゴールとオドリオソラとルニンのレンタルバックのみ、背番号の変動こそあったものの19-20とほとんど変わらないスカッド構成でシーズンがスタート。ほとんどPSMの機会も設けられなかったが、ジダンはどのようにチームを進化・深化していくのか期待があった。特に、6月以降の連勝街道はウノゼロで勝ち切る試合が多く、お世辞にも魅力があるとは言えなかったチームだっただけに、変化を待望する気持ちは強かったように思う。

開幕戦vsソシエダ。ジダンはアタッカー陣の中で唯一の新戦力ウーデゴールをトップ下に置いた4-2-3-1で臨んだ。ほとんど試行期間が無かった中だが、ジダンなりのチャレンジだった。が、しかし、カゼミーロとフェデを抜いたシステムはダイナリズムに欠け、クロースとモドリッチは低い位置に幽閉され、なかなかいい形を作れず。スコアレスドロー発進となった。

その後2試合で採用した4-3-1-2は、少しは形になったのではないかとは思う。ベンゼマの他にもう1枚フォワードを置き、幅をSBにとらせてベンゼマやイスコを有機的に絡ませるこのシステムは、得点力とWGの創造性に乏しいマドリーにとって相性のいい配置であるように映った。しかしこれも、ヨビッチへの不信感とカルバハルの怪我、そして何より「純・WG」であるヴィニシウスが結果を出したことにより本格導入はお預けに。結局は4-3-3に回帰し、結果としては3連勝を飾ることに。

ヴィニシウスやフェデの孤軍奮闘には目を見張るが、結局チームとしての形は見えてこないまま代表ウィークを明かした。続くカディス戦はホームでの昇格組相手ということで大胆なターンオーバーを敷いた。再び4-2-3-1が採用され、先発メンバーには17番も名を連ねた。この判断はやはりと言うべきか大きな裏目になり、普段より遠い距離感と絶望的なネガティブ・トランジションの遅さでチームは混乱に陥った。前半のうちに負ったビハインドを後半に巻き返すことはできず、今季初黒星を記録。

悪くなりつつあったムードを最悪にしたのが、3日後のホームでのCL初戦vsシャフタール。ラモスがいない中、ミリトンとヴァランのコンビは全くと言っていいほど機能しなかった。コミュニケーションがとれず背後のケアは覚束無く、対人守備でも後手を踏み、カゼミーロはポジショニングが高すぎてまともにフィルタリングもできず。ベンゼマを休ませた攻撃陣はまともにファイナルサードへボールを運ぶことさえ出来なかった。ベンゼマとヴィニシウスを投じた後半はスーペルゴラッソも飛び出したが組織性の無さは相変わらず。結局最後までひっくり返せず、CLで格下相手にホームで実力負けを喫する屈辱を味わった。

エル・クラシコ

バイエルンに衝撃8失点敗戦、会長の堕落したクラブ運営、そしてメッシの退団騒動。マドリーが高みの見物をしていたあの頃とはまるで状況が変わった。バルセロナはクーマン新監督の下、メッシを初めとした既存の主力メンバーとファティ、トリンカオ、コウチーニョら新加入や若手のメンバーの融合を着実に進めている。順位表でこそマドリーの方が上に位置しているが(それも1試合消化数が多い)、チーム状況には雲泥の差があると言っていいだろう。閉塞感の漂うマドリーは明らかに分が悪い。しかし、舞台はエル・クラシコだ。

クラシコは常に劇薬。劇的な回復と、そして致命傷が隣り合わせ。

19/20のように劇的な回復をもたらすか。それとも18/19のように致命的な傷を食らうか。お互いのシーズンを左右するであろう"劇薬"が明日、訪れる。

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