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TrySail3人の歌声が最高である理由をデータで分析してみる

TrySailの歌声は最高。そんなことは全人類がわかってると思いますが、何がどういう理屈で最高なのか。その良さをへなちょこDTMerなりに分析してみたくなった、という記事です。

3人の声質について

TrySailの3人は声優さんという職業柄、とても表現力豊かです。様々な声色を使い分け、曲によって表情を変えるのはさすがとしか言いようがありません。

一人ずつそれぞれ魅力的な声を持つ3人がユニット「TrySail」になったとき更に魅力的に聴こえるのは、3人の声質がそれぞれ異なる特徴を持っているからではないか。というのがこの記事を書くきっかけの仮説です。
力強く芯があり、包み込むような優しさを併せ持つ雨宮天さんの声。
伸びやかで美しく、きらびやかさや気高さを纏った麻倉ももさんの声。
聴く側に寄り添うような柔らかさと、切なさが入り混じったような夏川椎菜さんの声。

無理やり言葉にすれば、個人的な印象としてはそんな感じですが、もっとそれぞれの声の魅力をデータ的に明らかにしたい。というようなことを試みました。

分析する歌声の作成

歌声の成分を分析するにあたり、「歌声のみのデータ」を用意する必要があります。数多くの楽曲がリリースされていますが、当然さまざまな楽器と歌声がミックスされた音源なので、まずはここから歌声のみを抽出します。

歌声のみの抽出、はいくつかの方法がありますが、それを解説するのがこの記事の趣旨ではないので割愛。具体的にはオリジナル音源とカラオケ(Instrumental)音源の差分から抽出する方法や、AIによるボーカルリムーバーみたいな方法などいくつか選択肢があります。複数の方法を試して、楽曲ごとにできるだけ歌声がキレイに抽出できる方法を選びました。
(興味ある方は「ボーカル 抽出」などで検索してみてください)
なお、歌声だけ抽出したそれぞれの音声は本当にどれも美しいのですが、個人でこうやって楽しむ以外にネット公開などしてしまうと権利侵害となってしまうため、気になる方はぜひ試してみてください。

さて、どの楽曲のどの部分をサンプルに使うか、も大事です。
歌声のみ抽出したとしても、ハーモニーが重なっていたりすると「声の特性」そのものは分析しにくいので、「ハモリのない単音のボーカル」「ロングトーン」「3人ともできるだけ近い音域で歌っている」などを基準に選びました。

結果、使用したのはこちら。
雨宮天さん「衝天」ラストのロングトーン「一瞬を繋いで」の「でー」

麻倉ももさん「僕だけに見える星」ラスサビ「輝くよ」の「よー」

夏川椎菜さん「ササクレ」1サビ終わり「笑うよ」の「よー」

歌声の分析:スペクトラムアナライザー

抽出した歌声のサンプルを、DAW(作曲ソフト)に取り込みます。ここで「スペクトラムアナライザー」というプラグインを使用。これも詳しく解説するのがこの記事の趣旨ではないので割愛しますが、ざっくりいうと「音の成分のうち、どの周波数がどれくらい鳴っているかを視覚的に見る」ためのものです。
具体的にはこんなやつですね。

人間の聴き取れる可聴音域は20Hz~20000Hzくらいと言われますが、このうち一般的に「人の声」は500Hz~4000Hzくらいです。TrySail3人の歌声はどのくらいの周波数の成分がどの程度入っているのかを見てみます。

雨宮天さんの歌声

今回いちばん衝撃だったのは雨宮天さんの歌声でした。「でー」のロングトーン部分の画像がこれ。

一般的に、人が聴いて心地よい声は「倍音」の成分が多いと言われています。実際に聞こえている音の高さの周波数の整数倍、または1/2などの周波数成分を同時に含む音(といっても詳しくない方は意味わからないと思いますが・・・)たとえばドリカムの吉田美和さんとか、松任谷由実さんとかの歌声は倍音成分が多い、などと言われたりします。
サンプルに使った「でー」の部分、音階としてはC=ドの音なので1000Hz付近です。ここが鳴ってるのはもちろんなんですが、それ以外にめちゃくちゃたくさんの倍音が、しかも鋭く鳴ってるんです。

その他にもたくさんの山があります。これこそが天さんの声のふくよかさ、包み込むような優しさの成分なのでした。
もうこれだけで、雨宮天さんの歌声、奇跡の声だって言っていいと思います!

麻倉ももさんの歌声

「よー」の部分、麻倉ももさんの声の成分はこちら。

音程としては「ラ」=800Hz付近、で天さん同様に倍音成分もかなり鳴っています。特徴としては、周波数の底が高い。こういう面積の広い形の音というのは、音に芯があって他の音に埋もれにくいんです。どんな楽器が鳴っていても麻倉ももさんの声は突き抜けて聴こえてくるような力があるのは、こういう音成分のおかげなのでしょうか。

夏川椎菜さんの歌声

夏川椎菜さん「笑うよ」のロングトーン部分がこちら。

これまた特徴的です。倍音が鳴ってるのはもちろんなんですが、特筆すべきは「ひとつひとつの音の山が太い」こと。これは鳴ってる音や倍音だけでなく、その周波数周辺の音成分が多く含まれてるということで、ある意味での「音の雑味」が生まれる傾向を持っていると言えます。

「音の雑味」というのは、声質の個性やキャラクターを際立たせてくれるように働き、これが夏川さんならではの強さや切なさを感じる声になっている理由では、と思いました。

TrySail=3人の声を重ねてみる

一緒に歌ってる部分じゃないのであまり適切な分析じゃないかもですが、ここまで来たら気になるので3人の歌声を重ねてみます。音程としては、麻倉さんと夏川さんが同じ「A=ラ」の音、雨宮さんが短3度にあたる「C=ド」の音なので、重ねてもいちおうハモる組み合わせのはず。では・・・
はいドン!

どうでしょうか。青とピンクがけっこう重なり合いながら、隙間にちょこちょこ黄色が顔を出してますね。なんか3人の関係性を表してるような気がしなくもない・・・
これ大事なのは、お互いがお互いを補い合うように多くの周波数をカバーしてるっていうとこだと思うんですね。それぞれ個性あるこの3人の声が重なることでしか生まれない、奇跡の歌声と言っていいと思います。

(はじめからわかっていた)結論。TrySail3人の歌声は最高。

※半分は本気ですが半分はギャグでやってみた分析ですので音響工学とかのプロの方のツッコミはご容赦いただけると・・・笑


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