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就業規則を設けない会社のデメリット5つと作成方法

こんにちは。エフアンドエムクラブ事務局です。

就業規則は義務で作るだけでなく、会社と従業員を守るために設けます。また就業規則がない会社にはさまざまなデメリットがあります。作成義務がない会社でも就業規則を作成しましょう。

本記事では就業規則がない場合のデメリットと作成方法について、わかりやすく解説します。

就業規則と作成が義務となる会社


就業規則とは

就業規則とは、従業員である労働者の給料や勤務時間、職場において守るべきルールなどを、事業場ごとに定めた社内の規則集のことです。

就業規則で定めるべき内容は3種類あります。

  1. 法律で必要な「絶対的必要記載事項」

  2. 決める時は記載が必要となる「相対的必要記載事項」

  3. 任意に記載する「任意的必要記載事項」

就業規則は作成するだけでなく、見やすい場所への掲示や書面での交付など従業員への周知が義務づけられています。(労働基準法第106条)

【参考】労働基準法|e-GOV


就業規則の作成が必須の会社

従業員10名以上を常時雇用している事業場は、就業規則を作成(変更する場合も含みます)し、従業員の過半数で組織された組合または労働者の過半数からの代表者の意見書を添付して、管轄の労働基準監督署に届け出る義務があります。(労働基準法第89条、第90条)

【参考】労働基準法|e-GOV

就業規則の作成が義務化される従業員10名以上とは、企業全体ではなく、事業場単位で判断します。

複数の店舗や営業所がある会社は、従業員が10名以上いる店舗などの事業場ごとに作成が必要です。就業規則の内容が本社と同じ事業場については、本社で一括して届け出できます。

労働者の人数は正社員だけでなく、パートタイム、アルバイト、短期雇用の従業員などを含みます。

派遣社員や業務委託の従業員は含まず、繁忙期に限定した社員も含みません。

また一時的に10名未満となることがあっても、常態として10名以上の従業員がいる場合も就業規則の作成が義務化されています。


就業規則は会社と従業員を守ります

就業規則を作成し従業員の賃金や労働条件などを取り決めることで、会社と従業員とのトラブルを防ぎます。また職場内におけるルールを定めることで、従業員が働きやすい職場をつくり、従業員のモチベーションを維持することができます。

就業規則の作成は会社と従業員を守ることにつながります。


就業規則がない会社のデメリット5つ

就業規則がない会社には多くのデメリットがあります。主なデメリットは次のとおりです。

  • 未払い賃金請求・損害賠償リスク

  • ハラスメントの横行

  • 懲戒処分ができない

  • 社員の離職、採用難

  • 補助金が申請できない


未払い賃金請求・損害賠償請求リスク

勤務時間と残業時間などが不明確な職場ではサービス残業が発生する可能性があります。サービス残業時間に対応する賃金の支払い(最大2年間分)を求めて従業員が会社と争う可能性が高まります。

また長時間労働によって過労死やうつ病などを発症した場合、会社への責任を問う損害賠償請求訴訟を起こされることもあります。就業規則で健康診断などの措置を明記しておくことでリスクを減らせます。


ハラスメントの横行

2022年4月から職場でパワハラ防止措置を講じることが事業主に義務づけされています。パワハラだけでなく、セクハラ(セクシャルハラスメント)やマタハラ(マタニティハラスメント)防止も必要です。

ハラスメント行為を防止する措置が就業規則に記載されていない場合、ハラスメント行為をおこなっている社員への懲戒処分などの抑止力が働きません。

【参考】職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)│厚生労働省


懲戒処分ができない

就業規則がない会社では、勤務態度が不良で改善指導にも従わない問題社員に対しても懲戒解雇や免職がほとんどできません。また就業規則で懲戒の基準が明確化されていない場合、不当解雇を訴えた社員との争いで会社が不利となる可能性が高まります。


社員の離職、採用難

社内で守るべきルールが明確化されていないと、従業員の間でトラブルが発生しやすくなります。またハラスメント行為への抑止力が弱くなり職場の雰囲気も悪化します。そのため優秀な社員のモチベーションの低下や離職を招きます。

また就業規則が不明確な職場は、就職希望者からも敬遠されます。人手不足で売り手市場が続く採用市場においては人材採用が困難となります。


補助金が申請できない

助成金は厚生労働省の管轄が多く、申請する時の添付書類として就業規則を求められることが多くあります。就業規則の作成義務がない事業主の場合は疎明書の提出で代替できます。就業規則の作成義務があるものの作成していない会社は各種助成金を申請できません。

今後も人手不足や高齢化が進む事業環境に対処するためには、各種の助成金の活用が有効です。就業規則の添付が必要となる主な助成金は次のとおりです。

  • キャリアアップ助成金

  • 働き方改革推進支援助成金

  • 両立支援等助成金

【参考】キャリアアップ助成金のご利用にあたって、特にご注意いただきたい事項について|厚生労働省

【参考】働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)|厚生労働省

【参考】両立支援等助成金|厚生労働省


就業規則の作成方法

就業規則を作成するためには厚生労働省が公開している『モデル就業規則』が参考となります。

【参考】モデル就業規則|厚生労働省

最近の雇用形態の多様化、リモートワークの増加、社員のSNS利用の広まりについても対応できる就業規則が必要です。


絶対的必要記載事項

就業規則で必ず記載が必要な事項は次のとおりです。(労働基準法第89条

  • 労働時間
    始業および就業の時刻、休憩時間、休日、休暇ならびに労働者を2組以上にわけて後退に就業させる場合においては就業時転換に関する事項

  • 賃金
    賃金の決定、計算および支払いの方法、賃金の締切りおよび支払の時期ならびに昇給に関する事項

  • 退職
    退職に関する事項(解雇の事由を含みます)

会社で任意に取り決めることができる相対的記載事項は次のとおりです。管轄の労働局に記載すべき事項を問い合わせすることも可能です。

  • 退職手当

  • 臨時の賃金、最低賃金額

  • 費用負担

  • 安全衛生

  • 職業訓練

  • 災害補償、業務外の傷病扶助

  • 表彰、制裁

  • そのほか

【引用】モデル就業規則|厚生労働省


現行法にあわせる

労働法は改正されることがあります。近年はリモートワークの増加や働き方改革における対応などで、従業員の勤務条件なども変わっています。法律や勤務事情にあわせた改正をおこなうことで法的な違反リスクをなくし、従業員が安心して働ける職場づくりができます。

また雇用形態が多様化しているため、雇用形態と賃金、実際の業務内容に配意する必要があります。同一労働同一賃金に注意します。


労働トラブル例を参考に

働き方の多様化、さまざまな世代での認識の違いなど従業員ごとに考え方が異なる時代です。経営者が想定していないようなトラブルも発生します。

他社の労働トラブルを参考に、自社で発生しないように就業規則を見直しします。

特に就業規則に記載しておくとよい項目は次のとおりです。

  • 個人情報の取り扱い

  • 社内情報の取り扱い

  • 試用期間の延長

  • 副業、兼業に関するルール

  • 社員の健康維持のためのルール

  • 退職時および退職後のルール

  • 懲戒処分の基準、処分の内容

就業規則の見直し時に参考にしたいポイントはこちらから視聴できます。


就業規則は周知が必要

就業規則は従業員への周知が義務化されています。(労働基準法第106条

【参考】労働基準法|e-GOV

周知方法は見やすい場所への掲示、書面での交付、電子的な公開の3つです。


まとめ

就業規則を設けることは会社と従業員を守り、従業員のモチベーションを高めるためにも必要です。作成義務がある従業員10名以上の会社以外の職場でも作成が望ましいです。

働き方改革やリモートワークの増加、社員のSNS利用など、従業員の労働意識や生活習慣が変わっていることに対応できる就業規則を整備しましょう。

就業規則の確認や変更などの労務管理のお悩みは株式会社エフアンドエムがサポートします。

※まかせて規程管理はエフアンドエム社会保険労務士法人(法人番号2712006号)をはじめとする、株式会社エフアンドエムが紹介する社会保険労務士が提供します。

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