2.5を食わず嫌いしていたオタクが初めて文劇7を観た話

私はそれなりに長いことオタクをやっており、漫画アニメゲーム映画色々なジャンルを通ってきましたが、どうしても手が出せないものがありました。

それがいわゆる2.5次元の舞台。

そんな私が今回初めて2.5の舞台を鑑賞し、「このご時世に完全に2.5次元初履修なの逆に珍しいのでは?」と思ったので、折角だから感想を残してみようと思います。

今回観劇したのは、『舞台 文豪とアルケミスト 旗手達ノ協奏』いわゆる「文劇」と呼ばれている舞台です。今作で7作目となるこの舞台のことは1作目から知っていました。私は原作のゲームはリリース時からプレイしていましたが、最近はログイン頻度もめっきり減っておりまして。なので追えていない情報もかなり多いです。舞台自体も、過去作に友人の推しが出演していたときに何度かDVDを観ないかと誘われたのですが、断っていました。

そもそもなぜ今の今まで2.5次元の舞台を避けていたかという話ですが、
(初見の感想が見たい方はここは飛ばしてください)
大きく分けると理由は2つ。

一つ目は、キャラが「歌ったり踊ったりするのが苦手」とい不可能。私は平成を駆け抜けたオタクのため、定額小為替でラミカを買ったりウェブマネーをコンビニで買って声優さんのWebラジオを聴いたりしていたのですが、どうしても「キャラソン」を聴くことができませんでした。当時は世はまさに大キャラソン時代といっても過言ではなく、あらゆる漫画・アニメのキャラがキャラソンを歌っていました。クフフのフ。しかし、当時の私はどうしても「このキャラがこんな歌うわけないだろ!」と思ってしまい、完全にブロック。その延長で、キャラが歌って踊る2.5次元の舞台を食わず嫌いしていました。ちなみに今は昔ほどの拒否反応はありません。すべては数年前に出会った跡部様の「チャームポイントは泣きボクロ」のおかけです。ありがとうキング。ただ、それでも舞台やミュージカルを観る勇気はありませんでした。

二つ目は、「二次元のキャラクターを三次元で表現するのは不可能」と私が勝手に思っていたためです。私の脳内に存在するキャラクターの確固たるビジュアル・イメージと、現実で表現されるキャラが合致せず、どうしても「コスプレ感」を拭うことができませんでした。

そんなこんなでずっっっっっっと2.5を避けてきた私がなぜ突然観劇するに至ったのか。理由は簡単です。
登場人物8人中3人が推しだったから。
原作のゲームには80人以上の文豪が登場します。その中からたった8人しか選ばれなかったにもかかわらず、うち3人が推し。奇跡か???????
この3人は史実でもゲームでもお互い全く面識がないわけではないので、一緒にメディアミックス化される可能性は全くのゼロではありませんでしたが、それにしてもすごい。発表があったときはかなり驚きました。
しかし年季の入った2.5食わず嫌いの私は、それでもあらすじが発表されても役者さんのビジュアルが発表されてもチケットを取ることはことはせず、「観た人の感想漁ればいいか~」なんて乞食精神で構えていました。正直、個人的には珍しくビジュアルもかなり刺さってはいたのですが、文劇は時折とんでもない地獄をぶっこんでくるという情報があったので(なんか3の倍数が凄いらしいですね)完全に静観モードでした。

このnoteを書いている1週間前までは。

舞台が始まると、たくさんの感想が流れてきました。イラストや漫画もありました。私はそれらを片っ端から読み漁ります。推しが出ているので。
…………えっ、そんなストーリー?マジで??私の妄想じゃなく???
とにかくストーリーが気になって気になって仕方がない。その場面で推しがどんなセリフを言ったのか聞きたい。カッコいい殺陣が見たい。
数日悩んだ結果、ええいままよと週末のチケットを取りました。
ここまで20年近く堅牢だった牙城がよく崩れたなと思いますが、やはり推しの力は偉大。あとは文劇はミュージカルではないため歌ったり踊ったりが少ないこと、特に今回の7は殺陣がかなり多くヒーローショー的な感覚で見ることができそうだということが大きかったと思います。事前にストーリーも把握しており、今回は光の物語ということがはっきりしていたことも一役かいました。年を取ってくるとハッピーエンドが見たくなるのじゃ……

そういうわけでまさに数時間前観劇を終えたのですが、一言でいうと凄かった。ストーリーも、俳優さんも、音楽も、演出も、すべての熱量が凄かった。私はド素人なので、ほかの舞台やミュージカルと比べてどうこうといったことはまったく分かりませんが、これが生身の人間が目の前で作り上げる「舞台」というエンターテイメントなのかと圧倒されました。
特に殺陣が、刀と銃のアクションがカッコよすぎる。顔のいい男が戦う姿が大好きなので。
そして推しと推しと推しが……奇跡か????????
小並感という言葉しか出てこないので、ここからはキャラごとに振り返りたいと思います。

志賀直哉
主役。小説の神様。光の男。そして推しその1。
一体何人の文豪たちをその眩い光で焼く尽くしたんだ……今回登場した文豪たちは焼かれたうえで強い精神を持っていたので酷いことにはならなかった。よかったよかった。
とにかく「カッコいい!!」につきました。その在り方も、戦い方も、真っ直ぐ照らす光のようで、まさに主人公。いや主人公にしては強すぎやしないかい?あんだけ痛めつけられたら絶筆しててもおかしくないよ?杮落し公演に感謝しましょう。サンキューシアターH。
こんな強くて眩しい男に「生きろ」って言われたら、しかもそれがずっと尊敬し憧れていた存在なら、そんなのもう多喜二じゃなくても生きるしかない。アラジンの「Do you trust me?」くらい信じるしかない。
ムシャとの信頼関係、多喜二への友情と後悔、弴との『善心悪心』で生まれてしまったいわく、もちろんそれだけではありませんが、タイトルの協奏(デュエット)はやはり志賀といろいろな人たちに係っているのかなと感じました。
殺陣は正統派で1対多数になる場面も多く、見ごたえがありました。舞台全然分らんのですけれど役者さんめちゃくちゃお上手ですねこれ?やっぱ刀カッコいい……

武者小路実篤
志賀がみんなを照らす光なら、ムシャはそんな志賀を一番近くで支える光なんだと思いました。弴の本が侵蝕されている最中に、多喜二の有魂書に行くという彼をああやって送り出せるのは、相当な信頼関係がないとできないですよね。さすがは80歳になってもプレゼントを贈りあった仲。あそこのクイズは知ってても笑いました。かなりアドリブも多いようで、観る前に友人に「文劇のギャグやアドリブは合う合わないあると思うよ」と言われていたのですが、普通に楽しめました。シリアスになったまま沈み込んでしまいそうな雰囲気をパッと明るくしてくれる清涼剤のような存在。
あとは「志賀に会わなければ小説を書くこともなく、こんなに苦しむこともなかった」というセリフ。文章だけみると出会いを後悔しているように思えてしまいますが、ムシャはきっと一片たりとも後悔なんてしていないんですよね。彼と出会って得た楽しかったこと、嬉しかったことのほうがずっと大切だから。そしてそれはこれからも続いていく。お司書は白樺をもっと見ていたいよ……
あと、やっぱり貴族様なので戦い方はお上品なのかと勝手に思っていたのですが、意外と足癖悪いな!?剣戟の間に回し蹴りをしていたのが予想外で印象的でした。エレガントヤンキー集団白樺。刀の血を払う動作も美しい。

有島武郎
どけ!!!おれはお兄ちゃんだぞ!!!
私の観た回は噂の劇島さんがかなり漏れ出していたようで、弴が隣で寝てしまったシーン(日替わり?)の暴走っぷりが大変面白かったです。
『善心悪心』が侵蝕されてしまったということもあり、とにかく弴を第一に考えている姿が印象的でした。私も妹がいるので、志賀が有魂書にいってしまったことに対してムシャに詰め寄るシーンは何となく気持ちが分かりました。私はそんなにいい姉ではありませんが、それでも下の兄弟に何かあったときは守らないといけないという気持ちは大人になっても漠然とあります。
そして逆手持ち!!私逆手持ちで戦うの大好き!!!普通の刀に比べて間合いが取りにくかったり大変だとは思うのですが、派手な動きではないのが有島にあっている気がしてとても良いと思います。弴の武器もそうですがちょっと忍者っぽさありますよね。

里見弴
志賀やムシャに追いつきたいという焦燥感がよく伝わってきました。でも有島が言ったとおり、志賀には志賀の、弴には弴の良さがあって、お互いそれに助けられて、仲間ってそういうものなんですよね。
私は以前の出演作を観ていませんが、今回自分の著書が侵蝕されたことに対いて「自分がどうにかしないと」と奮い立ったこと、「負の感情も大切な感情」と言い切ったこと、もう立派な”漢”じゃん……胸を張ってほしい。
あと偽物さんの演技凄いですね……分かっててもあのタイミングで「やめてよ」って言われたらそら有島も手止めますわ。卑怯だぞ!
武器が短剣で飛び道具的な使い方もできるうえに、俳優さんのアクションが派手でアクティブなので、観ていてワクワクしました。体が柔らかい。

高村光太郎
個人的に舞台上で目を奪われた人No.1
あの穏やかな見た目から繰り出されるガンアクションとんでもないな!?!?撃った時の反動、近距離と遠距離を巧みに切り替える戦い方、敵を見ないでバックショット、薬莢の落ちる音、すべてがパーフェクト。観劇前は完全にノーマークだったんですけど、一目見て「これこれ!これが観たかった!!」となりました。正直戦闘シーンは高村ばっかり観てた。踏まれたい。
物語の本筋にはガッツリ関わっては来ませんでしたが、あの智恵子さんを彷彿とさせるシーンはグッときました。大切な人を思う気持ちにおいては、文豪の中でもトップレベルだと思うので。あの鏡に映るシーン、客席からは高村の右側(腰布が途切れている側)が見えるので男性、鏡に映っているのは左側なので腰布がスカートっぽくなり女性的に見えるというのをXでお見掛けして、「天才か?」となりました。
なんか文劇では白秋先生が大変なことになっているそうなので、いつか明星揃って助けに行ってほしいですね。

石川啄木
借金苦。競馬場行こうぜ~!推しその2。
登場して一言しゃべっただけで「うわ~~~~~~!啄木だ~~~~~~~!」となりました。本当に啄木。すごい。私が2.5を食わず嫌いしていた理由の一つである「コスプレ感」を完全に払拭してくれた方。いるじゃん啄木!!「働けど働けど~」が「戦えど戦えど~」になっていたのも芸細。
今回は志賀と一緒に多喜二救出班として行動してくれたわけですが、啄木側は生前確かどちらとも面識ないですよね?それでも、図書館に来てから志賀の人となりを、多喜二の作品や生涯を知ってくれて、危険を顧みず助けに来てくれた。いつもは逃げ回っているのに、ここぞというときは誰かのために、一番大変な道を選んでくれる。そんな啄木を好きにならないわけがない。
OPの広津との口上もよかったです。さすが記者コンビ。あそこで物語が始まるぞ!という気持ちがMAX高まりました。
高村とは違った短銃での戦い方も、本人のガラの悪さがアクションに出ていて好きです。喧嘩殺法。あとは多喜二の剣を使って戦うところ!武器は誰でも使えるわけではないと思うので、やっぱりシンパシー感じていたんでしょうね。ちょっと嬉しそうな啄木がかわいい。
ランブロで啄木がでなかったので買い足します。

広津和郎
ストーリーテラー。今回は多喜二救出と『善心悪心』の浄化、二つを繋げてくれる役割を持っていたのかなと思いました。この図書館の今の助手は広津なのかな?
史実の広津さんについては詳しくないのですが、たくさんの文豪と交流があったそうですね。だからこそ、図書館でもアルケミスト達と文豪の架け橋的な存在として活躍されていました。「袖でメモを落とした」はセウトかな~でも袖からメモを落とす広津はおもしろかわいかったので好きです。志賀も好きって言ってた。一見クールな真面目キャラにちょっと抜けてるところがあるのはお約束ですしみんな大好きなので。あと啄木にガッチガチに日程決めて競馬場にいこうと誘われていたのでぜひご一緒させてほしい。宝塚記念に行こう。
武器はこちらも刀ですが、白樺の二人よりも動作の一つ一つが重くしっかりしているように感じました。一太刀一太刀ゆっくり確実にダメージを与えにいっている。

小林多喜二
プロレタリアの旗手。彼を待ってた。推し3にして最推し。
正直彼を登場させるのはアニメでも舞台でも無理だと思っていました。それが満を持して、しかもメインキャラとして登場。
彼をメインで扱う以上、生前のあれやこれやは避けられないと思うのでそうするのかと心配でしたが、真っ向勝負を仕掛けてくれてなんだか逆に安心しました。最初の手紙から刺さる刺さる。誰だよ生前つらい思いをしたキャラに、転生した後にまでこんな酷い目にあわせようとしたのは……弾圧され拷問によって殺されたあと何十年幽閉・拘束しても精神が強く何をされても耐えてしまうので、そいつの大切な人を連れてきて目の前で死因と同じ拷問をして心を折り「もう逃げない」と言わせ敬語で懇願させます。侵蝕者に、人の心は、ない。こんなこと考える敵、強すぎ……?
絶望と発狂と苦痛の演技が真に迫りすぎていて、志賀磔シーンの絶叫が今もも耳に残っています。とにかく叫びっぱなしで役者さんの喉が心配になりましたが、どうやら全然大丈夫どころかリサイタルをしているようでよかったです。あの役を演じてカテコで「文劇楽しーーー!!」「もっとやりたーーーい!!」と笑顔で叫べるのは純粋に凄い。
戦闘シーンはあまりありませんでしたが、それでもわかるラスト完全体の強者感。文学を正に武器とし、戦い続けた男が弱いはずがなかった。カニソードの薙ぎ払いがつよい。侵蝕者一撃で沈んでた。これは魂分割して閉じ込めておきたくなる。
この多喜二が図書館で仲間と楽しく過ごしておいしいご飯をおなか一杯食べて健やかに暮らし時折アドリブをぶっこんでいるところが見たい。次回作以降3の倍数以外でどうぞよろしくお願いします。

アンサンブルさん
お恥ずかしいことに、舞台に明るくない私はアンサンブルというものがよく分かっていなかったのですが、まさに八面六臂の活躍と言いますか。この方々なしには舞台が成り立たないのですね。というか8人しかいないの!?ずっとステージにいたけど!?ほかの舞台は分かりませんが、明らかに8人でこなす量ではないのでは……
侵蝕者は文豪たちとは違った、明らかに人外の動きをしていて、こういう表現をするのかと感心しました。原稿用紙のような格子状のセットを黒い衣装の侵蝕者が上り下りすることで、今まさに文学が侵されていることが視覚的にも分かり。光の玉・銛・ビームサーベルなど武器もバラエティ豊かで見ていて飽きず、事前に知っていた重治と直の武器もばっちり見ることができました。

その他
2.5の舞台って、もっと映像とかプロジェクションマッピングを使うイメージがあったのですが、文劇の影での表現がとても好きです。今はなきワンマンズドリームⅡのピーターパンとウェンディが空を飛ぶシーンの影が大好きなので……今ここにいない人や著作の中の登場人物、対峙する巨大な敵を表現するのに影がすごく効果的に使用されていて、目が倍くらいほしかったです。
使用されている音楽もゲームで聴いたことのある曲でテンション上がりました。あと疾風~♪が頭から離れない。
カテコでコーレスをしたのですが、何故か「お願いします!」と言わされて司書はどんな顔をすればいいの???でも多喜二がすごく楽しそうだったからヨシ!

ここまで書いて、2.5をずっと避けてきて、でも興味をもって初挑戦した作品が文劇7で、本当に良かったと思っています。食わず嫌い、よくないですね。
まだまだある気がするのですが、如何せん1回しか観れていないことと、気付いたら何故か今日のチケットも手元にあるので、初心者なりにもうちょっと楽しんできたいと思います。

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