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伝説の架空球団名勝負「連勝が絶対条件のノ優勝決定戦 10.3ダブルヘッダー決戦の真実」~今明かされる舞台裏の真実~

スポーツ中継の華、プロ野球。
1978年、昭和の怪物小幡が投げ、松山がMBLチャンピオン7連覇を決めた試合の視聴率、39.6%。1995年、鶴田仁志と亀山弘嗣。夢の鶴亀対決が実現。姫路が8度目のMBLチャンピオンになった試合の視聴率、42.3%。テレビ朝日が放送し、高視聴率を記録したが、どちらも「ロビンス絡みでのMBLチャンピオンS」でのこと。

そうした中、ノ・リーグ公式戦で、視聴率35.9%を記録したゲームがあった。日本中が熱狂した、8時間13分の死闘、「10.3 姫路vs寝屋川」。
実はこの試合、全国放送の予定はなく、当然テレビ欄にも記載はない。だが、テレビ朝日が動いた!
小田キャスター「姫路球場が大変なことになっております。9回の裏2アウトランナー2・3塁・・・」
急遽放送内容を変更し、試合をLIVEで伝えた。令和のMBLで最もドラマチックな闘い。この日、姫路ウインク球場で、一体何が起こっていたのか!?

「連勝が絶対条件のノ優勝決定戦 10.3」
※この記事は架空球団の創作ドラマですので、実際には何も起きておりませんのでご注意ください。


試合前の話

2022年10月3日、この日、ただならぬ空気が姫路球場を包んでいた。
木場「ちょうどこの辺りが入場口だったんですけれども、お客さんがもうどわーっとね、並んでるんですよ。もうごった返してましたね。」
・・・と語るのは、河内紅雷會の団長、木場宣行さん。後に本にまとめるなど、凄まじい熱気に包まれていたという・・・

木場「姫路球場じゃなかったですね。はっきり言いまして
実は姫路ウォリアーズ、不人気球団として有名なのだ。姫路球場も閑古鳥が鳴く球場としても名高い。常に観客はまばら、外野の芝生席では、鬼ごっこをする子供たちも。そんな姫路球場が、平日の朝から長蛇の列!関西のあちこちでは、姫路球団と寝屋川球団主催でパブリックビューイングも行われていた。実はこのダブルヘッダー次第で、ノリーグの覇者が決まるという大一番だったのだ。

この年ノリーグは、5連覇を目指す浜松が夏場まで首位を独走。しかし寝屋川が驚異的な追い上げを見せ、ゲーム差0.5でこの日を迎えていた。浜松は豊橋との最終戦を終えたばかりで、寝屋川がダブルヘッダーを1戦でも負けるか引き分けた場合5連覇が決まる。また静岡草薙球場でも、パブリックビューイングが行われていた。ただし、最終戦を勝利しなければ、寝屋川の優勝はない。

プレイボール

午後3時、第1試合がプレイボール。

両チームのスターティングラインナップ

試合が熱を帯びてきたのは5-3と、寝屋川2点ビハインドで迎えた8回表。
寝屋川は1アウト1、2塁のチャンスを作る。ここで古屋監督が・・・

場内アナウンス『バッター柳原に代わりまして、松橋 背番号5』

代打の切り札、松橋博正を打席に送った。
実況「今シーズン、若手に打席を譲りながらも、代打で打って、何度もチームを救ったあの勝負強い松橋が今、」
(松橋ヒットを打つ)
実況「大阪の想いを乗せて!夢を乗せて!打球がどんどん伸びて、フェンスに直撃!その間に2塁ランナーが3塁回ってホームイン、さらに1塁ランナーもホームイン!!同点!!今シーズンのすべての想いを乗せて!やったぞ松橋!5ー5の同点に追いつきました!!・・・」
土壇場でようやく同点に追いついた寝屋川だが、当時のMBL規定ではダブルヘッダー第1戦は延長戦9回なし。つまり9回までに勝ち越すことが優勝への絶対条件。
実況「・・・そしてランナー満塁!バッターボックスは高浜。(高浜三振)空振り三振・・・!」
残された攻撃は、1イニングのみとなった。

どうするライナーズ、あと1イニング

横断幕『今年こそ優勝や!いてまえ河内の雷』
実況「松永です。」
(松永2Bヒットを打つ)
実況「ライトへ打ったぞ!届くか!?フェンスに当たった!松永2塁に向かう!1アウト2塁!これぞ漢松永!
ここで古屋監督は、代走にチーム1の俊足、松林を起用。松林が還れば、優勝をグッと引き寄せられる。
実況「2塁ランナーを返さなければなりません寝屋川ライナーズ!」
(ヒメネスヒットを打つ)
実況「ライト前ヒット!」松林3塁を回ってホームへ!ボールそれたか!?いや、3塁に戻る!三本間に挟まれてしまった松林!3塁誰もいない!キャッチャーが追う!追いついたアウト~!ライナーズ絶体絶命か!」
焦りが出たのか、崖っぷちに追い込まれるタッチアウト。
小柴「ホンマにあの時アウトになった時ベンチがもうガクーンとなんか、こうものすごく沈んでましたからね」
球場が静まり返る中、代打が告げられる。

最後の20世紀戦士、小柴孝義44歳の物語

場内アナウンス『バッター松橋に代わりまして、小柴 背番号8』

小柴「僕はもうその日で引退するという風に決めてましたんでね、なんかその、こう頭の中を駆け巡るようなね、感じで・・・」
小柴は思った。これが現役最後の打席になるかもしれない。
9回2アウトランナー2塁。
実況「勝たなければ優勝はありません。」
(小柴2Bヒットを打つ)
実況「センター前!ヒットになった!ヒメネス!気迫のヘッドスライディング!ボールそれた!セーーーフ!!寝屋川勝ち越し!!小柴がやった!!ヒメネスも全力疾走!!
小柴は、野球人生で初めて、ガッツポーズを見せた。

土壇場で勝ち越しに成功した寝屋川。最終回、守護神の「兄貴」こと森川友久を投入。また1塁の守備固めとして、友久の3つ下の弟、龍彦が入る。
実況「寝屋川1点リード、このままこの回を0点に抑えれば、・・・」
(際どい外角高めをボールと判定される)
(友久怒る)
しかし、審判の微妙な判定に、友久が冷静さを失う。
実況「ここで古屋監督、」

場内アナウンス『森川友久に代わりまして、浜口』

エースの浜口をマウンドへ送る。
浜口「心の準備もあまり出来てないまま(マウンドに)行ったような感じです。”よし抑えてやる!”という気持ちより、”あっ僕ですか?”っていう・・・」
実は浜口、2日前の山梨戦で114球の完投勝利をしたばかりであった。どうしても守り切りたい、1点のリード。
(森田2Bヒットを打つ)
実況「さあレフト線!1塁ランナーが2塁回って3塁へ!3塁・・・止まった!」
続くメヒアは、フォアボールで出塁、ランナー満塁。一人でも還れば、優勝は消える
実況「寝屋川、優勝のための越えなければならない大きな壁!」
(金居三振、第1試合終了)
実況「空振り三振!寝屋川勝ちました!優勝へ大きく一歩前進!!次の第2試合を勝てば、逆転優勝となります!

まさに”薄氷を踏む”逆転の勝利。
小柴「天国と地獄ですよね、もう両極端で。」
浜口「正直勝ったときは、『これで第2試合行けるな、大丈夫だな』って思いました。」

休憩時間に起きた異常事態

古屋監督「頑張るぞ!もう1試合、まだ終わっちゃあせん!」
ダブルヘッダーの休憩は、わずか20分。ここ3週間で13試合戦ってきた寝屋川ナインの疲労はピークに達していた。
その頃、スタンドの外では異常事態が・・・当時姫路球場で入場口の管理を任されていた、通称「スズキのおじちゃん(本名:鈴木隆治)」は・・・
鈴木さん「小屋の周りに全部人がいて、こう叩くんよね。窓ガラスが割れるかと思ったわ。」
満員札止めにも関わらず、チケットのないファンが球場に押し寄せていた。
鈴木さん「こう1万円を入れてね、『これやるから入れてくれー!』ってね、どうなるか分からないから怖いし・・・」

第2試合プレイボール、規定という名のハンデ

異常事態の中、午後6時13分に第2試合プレイボール。MBLの規定で、ダブルヘッダー中は投手を除き、2戦ともスターティングラインナップを変えることは出来ない
実況「寝屋川ライナーズは、今シーズン143試合目、最終戦です!」
2回の裏、早くも試合が動く。寝屋川の先発はルーキーの住田。対して姫路の5番、佐藤。
(佐藤ソロホームランを打つ)
実況「打った!ミスターウォリアーズ佐藤一閃!先に1点を取ったのは姫路!・・・」この大一番でも先制を許してしまった寝屋川。ベンチに重い空気がのしかかる。1点が奪えない・・・1点ビハインドのまま迎えた6回。
実況「・・・第1打席は三振に倒れています室井。」
(室井三振も判定に納得いかず)
この三振をきっかけに試合は大波乱の様相を呈していく・・・

首脳陣だって人間だ

(寝屋川鶴巻ヘッド、審判に詰め寄る)
実況「お?鶴巻ヘッドが審判に・・・」
(寝屋川鶴巻ヘッド、審判に猛抗議)
実況「ちょっと待ってください、険悪な雰囲気になってきましたね、審判団と寝屋川の首脳陣中心にちょっと睨み合ってます」
この抗議が寝屋川ナインに火をつけた。1番
(石村ヒットを打つ)
実況「痛ー烈!石村今日初ヒットです!」
続く田中もヒットでチャンスを広げる。
高浜はフォアボールで2アウト満塁、ここで4番モレイラjr。
実況「バイオレンスな雰囲気でいっぱいな姫路球場!4球目!」
(モレイラjrヒットを打つ)
実況「二遊間、抜けた!そのまま石村と田中がホームへ!2ー1!寝屋川、逆転に成功しました!!」
湧き上がる寝屋川ベンチ。その中に、6日前無念の骨折をした福田がいた。
福田「監督が『ジュン!ベンチ入れ』と、『絶対優勝するぞ』と。」

19歳中村優未が告げた一つの”始まり”

7回表、打席には福田の代役、ルーキーの中村。18歳ながらファーム本塁打王の実績を引っ提げて終盤に1軍に合流した。
実況「この日の為に、四條畷神社でお参りをして、この戦いに臨んでいるという中村。」
(中村ソロホームランを打つ)
実況「打った!」打球はどうか!?伸びて伸びて・・・届きました!ルーキー中村優未!・・・」
中村、プロ初のホームランを記録し、3ー1。
福田「中村・・・この子ね、普段物静かで、こんなガッツポーズするような人違うんですよ」
実況「優勝に向かって!更に追加点!地元大阪府四條畷市生まれの中村に一発が出るとは!これぞ未来の大砲!まさにミラクルライナーズ!野球というのは勝負が分からないとはこういうことでしょうね。」

続くバッターはこの年復活した8年目の捕手室井。
(室井ホールランを打つ)
実況「室井も続くか!!打球はライトへ!!入りました!!中村に続いて、今度は室井が決めました!!4ー1!更に突き放します!」
その頃、テレビ朝日が動き始める。実はこの日、大阪の朝日放送が関西地区で試合を中継しており、同時にその映像がテレビ朝日にも送られてきていた。そしてテレビ朝日は、夕方の番組で頻繁に試合速報のテロップを表示した。そんな中、編成部長の岸(偽名)は、頭を悩ませていた。
岸「このまま何もしないわけにはいかないと思い始めたのは夜8時過ぎてからでしょうかね、視聴者の電話が数百本来たんですけども・・・」
テレビ朝日には、試合経過を知った視聴者から『野球を放送して欲しい』との電話が殺到していた。しかし、テレビ朝日は今、人気番組「Qさま!!」の3時間スペシャル。
岸「看板番組のひとつで、それもスペシャルで、結構熟慮しましたけど、とりあえずなんとかQさまの内容を変えてそこから入れようと・・・」

始まった全国中継

こうして、姫路球場の熱気は全国へ伝えられることに。
横断幕『リーグ優勝 浪速の誇りよ 日本一へ突っ走れ!』
試合は7回裏、寝屋川3点リード。すると、全国放送を待っていたかのように、劇的な展開を見せ始める。
実況「・・・そして、先ほど打った中村と室井からホームランが飛び出しました。姫路は田中に代わって・・・」
(大原ホームランを打つ)
実況「・・・大原ァ!!右中間に!ライナー!吸い込まれていった!!姫路もプロです!36歳大原雅之!寝屋川のリードは2点に変わりました!姫路も反撃体制に入っていきます!」
更に次の岡澤にもヒットを打たれ、星野にはフォアボールを与えてしまう。ここで寝屋川は第1試合同様、守護神森川友久を投入。
実況「寝屋川のリード1点、2アウトランナー1、2塁。」
(鈴村ヒットを打つ)
実況「戦局を変える鈴村のバット!1点差です!姫路もこのダブルヘッダーで素晴らしいガッツを見せてくれます!3ー4!」
北川監督「ゲームの熱気というか。寝屋川の熱気に姫路も乗っかっていったというような・・・」

見逃せない展開、揺れるテレビ朝日

勝たなければ優勝はない、8回表寝屋川の攻撃。
実況「勝ちが絶対条件です。優勝するためには(倒置法)。」
バッターはここまで31本塁打の高浜。
(高浜ホームランを打つ)
実況「詰まっているが!?どうなるんだ!?入ったーーー!!!32本目のホームランです!!高浜!浪速の大砲です!リードを広げる5ー3!
優勝まであとアウト6つ。最後のマウンドを任されたのは、こちらも連投の浜口。一方テレビ朝日の岸は大きな決断を下す。
岸「もうこのまま試合を延長して、幸福時間の放送もやめなければならざるを得ないんですよね。」
番組を一つ休止、さらにこの試合にCMを入れるのは困難と判断した。
岸「もうこのまま中継に集中して、CMは飛ばすことに・・・身を切られる想いでしたね、自分はどえらいことをしてるんだ、と。」
1時間CM無し。民放局では異例の野球放送となった。するとここから一瞬たりとも目が離せない熱いプレーが連続する!

8回裏、1アウトから植田が出塁し、バッターは3番メヒア。
実況「浜口ー室井のバッテリーです。」
(メヒア、ホームランを打つ)
実況「!?どうなんだぁぁぁーーー!?ライナーが無情にもレフトスタンドへ!!同点です!浜口マウンド沈んだ!5ー5同点!姫路球場、白熱します!ドラマチックな夜になります
(金居三振)
優勝を目の前に、試合は振り出しに。
実況「8回終わって5ー5。白熱したゲームは9回にまでなだれ込んでいきます!」
9回表寝屋川の攻撃。1番石村。
(石村2Bヒットを打つ)
実況「これがいい当たり!2塁も狙う!石村今度は2ベースヒット!」
2アウトながら、勝ち越しのチャンスが到来。
この時、時計の針は9時54分をお知らせした。

(報道ステーションop流れる)

実況「一方マウンドは西岡に変わり風間!・・・」

小田キャスター「こんばんは、報道ステーションの時間です。今夜はお伝えするニュースが山ほどあるんですが、実はノリーグ優勝決定がかかっている試合が今山場、9回表2アウトを迎えていますので、ここで野球の中継をやめるわけにもいきません」
テレビ朝日は、報道ステーションの放送内容を変更、スタジオを変えてまで、10時以降も熱戦を伝えた。この英断を下したのは、当時番組プロデューサーの山中武(偽名)。

熱気は世界へも・・・

山中「この日はある意味ニュースの特異日だったんですね。統一教会の所信表明演説だったり、藤井聡太の棋王昇進だったり、愛知球団の新規参入だったりとか、非常に特別な日だったというか・・・」
更にこの日は、ウクライナ侵攻の現状を伝えるべく、キーウでの生中継という大掛かりな特集があったが、これを急遽中止した。姫路球場の熱気が、テレビマンを突き動かしたのだ。先が読めないからこそ、生で伝える意味がある。その言葉通り、放送開始直後、ビッグプレーが飛び出す。
(田中、サードにジャストミート)
実況「メヒア掴んだ!送球!This is プロ野球!!!よく止めたメヒア!9回の表終わり、裏に入ります!」
小田キャスター「"This is 報道ステーション"でございます。えー今、9回の表までお伝えしましたが裏までお送りします。どんな番組に今夜はなるか分からないんですが、伝えるニュースもいっぱいあるし、助けてください

焦りが生んだミス、そして時は経ってゆく

9回裏5-5同点。ここを抑えて延長に持ち込みたいところである。
実況「どういった形で決着がつくか分かりません!」
(佐藤、ヒットを打つ)
実況「ライト正面!ギリギリ中村が取れ、ない!佐藤1塁でストップしています。」
この佐藤が還れば、寝屋川の優勝は消える。
実況「ギリギリ一杯、取ることは出来ません中村。・・・
(大原バントを打つ)
実況「そして大原はバントで送りま、おっと!?浜口と室井が接触!記録はバント内野安打!ノーアウトランナー1、2塁!」
浜口「しまったぁ・・・こんな大事なところで何でこんなプレーしてんだろうっていう・・・」
のしかかる重圧からか、痛恨のミス。
実況「危険信号が光り始めています寝屋川!」
次のプレーで、ゲームの行方を揺るがす大事件が起きる。

北川監督の悪足掻き、忘れた頃にやってくるハンデ

実況「ノーアウトランナー1、2塁、おっと2塁に牽制!タッチは?アウト!?それたボールに飛びついた!石村!そのままランナー佐藤にタッチ!あーそこで北川監督が猛抗議!コーチ陣も詰め寄ります!」
北川監督は、2塁手石村の走塁妨害を主張し、猛抗議。
実況「北川監督も引き下がりませんねぇ」
北川監督「あはは・・・これアウトなのよ。だけど、選手が助けを求めてるから行かざるを得ないのね、そんで(ベンチに)帰ろうと思ったんよすぐ。アウトはアウトなんやから。」
だが北川監督の抗議は長引く。それは寝屋川を追い込むものだった。当時のMBL規定では、延長は無限だが、そもそもの試合の時間制限が5時間。それを超えた場合、何回だろうと新しいイニングには入らない。この試合の場合、制限時刻は午後11:13。そのタイムリミットが刻一刻と迫っていた。

小田キャスター「城戸さん、かなり北川監督も興奮してるみたいですね」
実況「そうですね小田さん、ただこのまま抗議が長引きますとね、試合時間がしたがって伸びますね、ということになりますと11時13分まで5時間制限ですね」
小田キャスター「ということは12回というよりも11時13分の方が・・・
実況「5時間の方が引っかかってくるわけですね、寝屋川ライナーズは不利になるんです。そこまで計算して北川さんがイジメにかかっているのか、古屋さんも早よやってくれとこの表情でしょう」
北川「んで古屋さんが来られて、「お前らもういいだろ」的なこと言われて、「あんたらだけ野球やってんのかこの野郎」って思って、カチンときたわ」
帰れコールが響く中、更に抗議は続く。
福田「もう・・・奥歯ガタガタなりましたよね、もう早く、早くしろって・・・」

残された時間の攻防、守護神はレフトにいた

審判「アウトと致します!」
抗議は、ほぼ2イニングの攻撃時間にあたる18分間にも及んだ。制限時間まで、残り20分。
小田キャスター「姫路球場が大変なことになっております。9回の裏2アウトランナー2・3塁、姫路の攻撃が続いております。ここで一人でも還ったら寝屋川、「コレ」でございます。城戸さん」
試合再開後、更に寝屋川は攻め込まれ、2アウト満塁。ランナーが還った時点で、寝屋川の優勝は消滅。
実況「3つのランナーが浜口を渦巻いて迎えた2アウト満塁4ー4同点。3番メヒア!」
(メヒア、フライを打つ)
実況「うわぁ、詰まっているが!ジェレミーモレイラ!万事休すかいやいや取った!ダイレクトキャッチ!よくやったジェレミー!!
奇跡の逆転優勝への夢、繋がった!!」
九死に一生のファインプレーで寝屋川が望みを繋ぐ。この10回表が、寝屋川にとって事実上最後の攻撃。ここで点を取れなければ、優勝への夢は潰えてしまう。

10回表、事実上最後の攻撃

実況「高浜から始まります。」
(高浜ヒットを打つ)
実況「打った!高浜、まずは塁に出ました!」
ノーアウト1塁。代走に増田が入り、打席には4番モレイラjr。
実況「得点がなければ、優勝は夢はかなく消えます。バッタージェレミー!」
(モレイラjr三振)
実況「フォークか!三振です!」
制限時間まで、残り5分。
実況「そして、バッターボックスに森川弟が入りました。」
どうしても1点が欲しい・・・
実況「なんというドラマチックな143試合目に寝屋川なってしまうんでしょう。命を焦がし、体内熱き血駆け巡り、漢燃え上がる、姫路寝屋川双方の勝負になりました。」
(龍彦ショートゴロ)
実況「ショートの正面!まず2塁踏んで2アウト!1塁!弟走るが!3アウト~!!!5時間が過ぎ、延長10回の表終わって、5ー5同点のまま!ということは寝屋川、勝ちはありません!寝屋川、奇跡の逆転優勝への道!渡り切れませんでした・・・!」

無残なタイムリミット、そして終戦

時間の壁に阻まれた、優勝への道。それでも寝屋川ナインはグラウンドに立たなくてはならなかった。
実況「勝ちはありません寝屋川。凌いで、守って、4ー4の引き分け。あと一歩及ばない・・・」
福田「亡くなられた鶴巻さんが、『1度も泣いたことがない』とか言ってましたけど、僕だけは見たんですよ。鶴巻さんが裏のトイレ行って、泣いたのをね。」
その後・・・
実況「フォークボール!試合終了。4ー4!寝屋川ライナーズ、5時間という時間の壁に阻まれて、奇跡の逆転優勝への夢、ならず・・・。ここで、ファンと選手の心が一つになります!」

2022年ノリーグ最終結果

こうして、日本中が熱狂した、8時間13分の死闘は幕を閉じたのだった・・・

浜松の奇跡、5連覇クラッシャーとは何者か

そしてこの年、MBL再編問題が起き、3位の豊橋ブルワーズとの合併が決まっていた浜松は来季から「静岡アンテルプス」に変わる為、寝屋川は2013年以降ブレーブスにシーズンで勝つことは出来ないことになった。
そして迎えた、クライマックスシリーズ。
ファイナルステージ9回表2アウトランナー1塁、浜松の守護神松田聖を前に、バッターは10.3の立役者、中村。
実況「フルカウント、ブレーブス最後の頂を掴む旅は、まだ終われない!ブルワーズの為にも。第8球!」
(中村2ランホームランを打つ)
実況「中村打った!打球は!無情にも浜松ファンのいるライトスタンドへ!!逆転されましたブレーブス!」
10.3の悔しさをバネに、9年前のリベンジを果たす一撃で球団史上初のチャンピオンシリーズまで駒を進めた。
そして・・・
(中村毅ヒットを打つ)
実況「中村毅彦!夢がフィールドへ!宮本ホームに還って逆転ーーー!!サヨナラーー!!長良ターミガンズ!2位からの出場で、37年ぶり3度目のMBLチャンピオン!!ノリーグ2位の寝屋川をスイープに抑えて、見事な優勝です!!」
日本の頂は同じく2位から下剋上した長良ターミガンズに譲ったが、翌年は・・・
(筧内野フライを打つ)
実況「打ち上げた!!もう大丈夫だ!!田中ーーー!!取って試合終了!!寝屋川ライナーズ!球団史上初のMBLチャンピオンに輝きました!!」
シーズンでは浜松改め静岡とのデットヒートを制し、お互いに90勝54敗ながら投手防御率の差で優勝となった。その後、チャンピオンシリーズで富山を4勝1敗で下し、ついに日本の頂に立つのだった・・・

あとがき

※何度も言いますがこの記事は架空球団の創作ドラマですので、実際には何も起きておりませんのでご注意ください。また、1988年の近鉄ダブルヘッダー10.19にかなり設定を寄せておりますので、かなり似ていたと思いますがなんせ架空球団のドラマなのでそこまで気にする必要はないかと。ただ温かい目で見てくださいましたら幸いです。

2024.6.13 Fanatari


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