見出し画像

お父さんの石けん箱 田岡 由伎著


お父さんの石けん箱 田岡 由伎著

 田岡一雄3代目の顔写真に紅をさす落書きをして、誰にもとがめられることが無い人はそんなに多くない。

 著者は山口組3代目組長、田岡一雄の長女である。


田岡 由伎さん

 私は田岡3代目にお子さんがいることを全く知らなかった。宮崎学氏の『近代ヤクザ肯定論〜山口組の90年〜』を読んでいる時にその存在と、その長女に著作があることを知り、今回手に取った。


宮崎学氏の著作

 私が田岡3代目を知ったのは15歳のころで、3代目が亡くなった5年後のことだった。

 3代目が亡くなった時、私はまだ10歳で、もっとも荒くれ煩悶する切ない時期だった。そんな頃、時折り父は私を近くに呼び寄せると、「いいか……。おまえはヤクザになるかも知れんけどなあ、なるとしたらなあ、高倉健さんみたいな……」と諭すのだった。


高倉健主演映画

 父は普通のサラリーマンで、ヤクザの知人の一人も居らず、いたって真面目な堅気だった。私は何を急に言い出すのやら?と不思議に思いながらも、何となく、(それが僕のいくべき、用意されたレールなのかな?)と不思議に感じるだけだった。


高倉健さんと、田岡3代目

 この、田岡由伎さんの本を読むにあたって、正直に言うとまったく期待感はなかった。世界的に有名な父親の威光を笠に着て、ちょっとばかり非公開なネタでも書いてあるのだろう。そんな程度に考えていたからだ。

また、3代目自身のこともほとんど知らなく、見たところ、そんなに男前でもないし、この著作にもあるように、時には同伴する若い衆のほうが親分と間違われるほど、ヤクザっぽい感じでもなかった。


田岡3代目自伝

 ただ、初代と2代目の山口親子が築いた山口組の跡目を継ぎ、全国制覇を果たし、港湾事業や興業・芸能界など多くの事業を成功させたことくらいしか知らなかった。

 恐らくそう言ったことは、ヤクザかぶれの堅気の人のほうが、任侠映画や書物を読みあさり詳しいのでは無いだろうか。

 私も家族や一部のちかしい人以外には非公開で、自身のヤクザ渡世時代の作文をしたことがあるが、恐らくは、一般の人が想像する範囲では、これっぽっちもヤクザ映画のような場面のない、いかに親分や組長(親父)が自分を愛してくれたか。姐さんに可愛がってもらったか。そんなことしか書いていないのだが、

田岡由伎さんの著作は、そんな私の琴線を、びんびんハードロックのように弾くのだった。


 そこではじめて3代目の魅力を知り、多くの若い衆が命をかけるに至ったのだと知った。

 そして、3代目姐、田岡文子さんの底抜けに逞しい生き様も知ることになった。

 皆さんに広く読んでいただきたいが、特殊な世界の内容だけに、読み手の知識や価値観によって、随分と面白さは変わってしまうと想定される。

 ご希望ならば私の解説付きの読み聞かせでもして差し上げるがいかがだろうか。

山口組三代目
Amazon(アマゾン)


山口組三代目 [DVD]
Amazon(アマゾン)


血と抗争 山口組三代目 (講談社+α文庫)
Amazon(アマゾン)


三代目襲名
Amazon(アマゾン)


お父さんの石けん箱 (ちくま文庫)
Amazon(アマゾン)


さようならお父さんの石けん箱
Amazon(アマゾン)


近代ヤクザ肯定論―山口組の90年
Amazon(アマゾン)


#お父さんの石けん箱#田岡一雄#山口組3代目#田岡由伎#甲陽運輸#高倉健#極道社会#ヤクザモノ#宮崎学