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「好き」を選ぶ物語/舞台「やがて君になる encore」感想

先日、舞台「やがて君になる」のencore公演というものを鑑賞してきました。舞台劇など普段観ることはなく、後述する軽率な気持ちで観に行ったのですが…

そこで自分はこの舞台劇の素晴らしさを存分に分からされてしまい、とにかく終始夢中で鑑賞させられる事になりました。
舞台の持つ様々な魅力が全部新鮮に感じられて本当に楽しかったんです。

パンフレットの表紙の掲載は問題ないそうです

笑顔あり、苦悩あり、苦悩あり、そして涙ありの舞台を観終えた後はどこか夢心地で、その状態のまま物販列にふらふらと誘い込まれ、いつのまにか本公演のBDを予約してしまう程でした。

座席にも恵まれ、前方の列の中央で観劇させて頂けたという事もあり、至近距離で浴びる初めての舞台劇という物にかつてないほどに激しく心を揺さぶられる。そんな貴重な体験…

イベント等の感想を文字に起こす作業は本当に苦手なのですが、今回はそんな感動を共有したい、というか自分が楽しかった気持ちを分かって欲しいという思いで慣れない感想noteに手を出した次第です。

感じた事柄を勢いで書くつもりなので読み易さは保証できません。

あと台詞とか正確に記憶している訳ではないので細かいところで違うかもしれません。アニメとか他の方のツイートで記憶の補完はするつもりですが。

また、「やがて君になる」のあらすじやストーリーの流れ等は特に説明をしないので作品を知らない方は公式サイト等で確認することをお勧めします。
ネタバレをするのでまだ展開知らない人は注意してください。


はじめに

まず初めに、何故突然舞台を見に行く運びになったのかについて。
オタクの自分語りに興味ない方は感想文まで飛ばしてください。

「やがて君になる」という作品は原作漫画・アニメも人気のある作品ではありますが、自分は決して作品のファンという訳ではなく、なんならTwitterとかで名前を聞いたことがある、程度の見識でした。

では普段から舞台劇をよく鑑賞するのかと言われると、そういう訳でもありません。人生において自分の意思で生の舞台劇を観に行くという事をしてこなかった自分が、今回舞台を観るきっかけとなったのは舞台「やが君」において七海燈子役として出演されている小泉萌香さんの存在です。

横顔、好きです。

経緯を簡単に説明すると自分がドはまりしている「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」という作品に小泉萌香さんが出演しており、そこからご本人にも興味を惹かれるようになった、という感じです。

そんな訳で、小泉さん個人の活動にも興味が出てきた頃、小泉萌香さん界隈で度々話題になる舞台「やが君」の存在を知ります。

曰く、「小泉萌香さんがあの髪型を数年間維持しているのはやが君の為らしい」「とにかく舞台そのものが良いから観て損は無い」「百合についての演出が真に迫っていて良い」「今度、その舞台の再演をするらしい」

こうまで言われては行きたくもなるというもの。
また、ここまで役者に大事にされる舞台がどんなものなのか気になったというのも事実です。




正直に告白すると「その舞台の為だけに髪型を維持している」という事は舞台が終わったら今の髪型はもう見納めなのかもしれない。最後に一目見ておきたい、なら観に行くしかないか…?というキモイ浅はかなオタク思いもありました。

早速舞台の公式Twitterの通知をONにし、最速先行抽選申込を最速で行った後にチケットを確保して舞台を観ることになりました。

冷静に考えると動機が不純過ぎる。舞台劇に関わる皆様、そして「やが君」を愛する全ての人に本気で謝罪したい…)


補足 舞台「やが君」を知らない人へ

書き忘れていましたが、舞台「やが君」は2019年5月に1度上演されており、今回のはencore公演、再演となる訳です。
また、encore公演は本当は2020年に上演する予定でしたが、色々な事情で2年延期したそうです。

2019年の公演時点では原作が完結していませんでしたが、今回の公演では既に原作が完結していることもあり、原作最終巻までの内容を踏まえたリメイクという形で上演されました。

延期は残念なことだったと思いますが、こうして延期された事があって自分はこの舞台に出会えることが出来た訳で、この巡り合わせに感謝する事しか出来ないです。



感想 アニメでは見えない景色

ここからが感想になります。前置きが思ったよりも長くなってしまった。
やが君の原作は漫画ですが、まだアニメしか見てないのでそういう基準でのお話となります。

アニメでは見えなかった景色。まあ舞台とかをよく観に行く人にとっては当然かもしれないですが、舞台って注目するキャラによって他媒体では描かれなかった景色が見えるんですね。
アニメだと描写されないシーンはお得意の妄想で補うしかない。

自分が最初にこの事を感じたのは序盤の七海先輩が生徒会選挙の推薦責任者を侑に頼むシーンです。
小糸侑(役:河内美里さん)は主人公です。

自分が推薦責任者に指名されると思っていた佐伯沙弥香(役:礒部花凜さん)、アニメだと一瞬驚いた顔が映るだけなのですが、舞台では動揺を隠せない様を表情と体全体で表現していて臨場感が半端じゃなかった。

このシーンで思わず目に入るのは侑と七海先輩なのに、目線をずらすと生きている佐伯沙弥香が目に入る。
こういうのの積み重ねが沢山散りばめられていて、自分がその世界にいるように錯覚させてくれるんですよね。これが本当に楽しかった…

文字で書くとそりゃそうだろって感じですが…

まあ見ているときはそんな複雑な事考える余裕も無く、素直に世界観に没頭していました。



・「そんな事 死んでも言われたくない。」
景色っていうのとは少し違いますが見え方の違いとしてこのシーンにも触れておきたい。
お馴染み、侑が七海先輩に対して「劇、やめませんか」「お姉さんの真似をしなくても、先輩自身の事が好きな人だってきっといますよ」と先輩の内面に踏み込んでいくシーンです。

終演してから気づきましたが、ここらへんまで物語が進んでくると、自分はほぼ完全に小糸侑に感情移入して観劇をしていました。

七海先輩にとって「お姉ちゃん」を演じて生活する事は人生において重要な事だったので、そんな侑の言葉に七海先輩は「そんな事 死んでも言われたくない」と拒絶を示すじゃないですか。

このシーン、それまで舞台上の侑とやり取りをしていたのに、舞台上の七海先輩は舞台の観客席側ギリギリに立ち、あの無表情の顔で客席に向けて静かにこのセリフを落とすんです。

少なくとも自分は小糸侑の視点から七海先輩の事を観ていたつもりだったのに、急に客席にいる自分に引き戻された様な感じがして鳥肌が立ち、思わず「えっ………?」と侑同様の困惑の声を出しそうになりました。

アニメだと侑と七海先輩が向き合って喋っているという認識のままで視聴を継続できていましたが、この迫力は舞台ならではとしか言えないのではないでしょうか。いやほんとに心臓バクバクでしたここ、もえぴが近いし怖いし。



感想 一番好きなシーン

好きなシーンをバーッと挙げてってつらつらと感想書こうかと思ったのですが、好きなシーン挙げていくときりがないので一番好きなシーンについてだけ話します。

ですが一番好きなシーンについて話す前に語りたいシーンがあります。
先程も書いた「死んでも言われたくない」の少し後の場面について

「劇はやるよ、たとえ小糸さんがついてきてくれなくても。」そう言って背を向ける七海先輩に侑は「本当は寂しいくせに!!!!!」と感情をぶつける

その後も侑が七海先輩に語り掛け、「本当はどうして欲しいのか言ってください、七海先輩」と優しく問いかけるじゃないですか。

「劇、侑も手伝って」
「———はい。」

「私といて」
「——はい。」

「寂しい時、甘えさせて」
「—はい。」

「他の人を好きにならないで、私の事を嫌いにならないで。」
「はい。」

「それから——」

このシーンです。
(アニメだとこの台詞回しだったんですけど舞台だと正確には違う可能性もある)

「私を好きになって」って言っておくれよ・・・・・・・・・・・・
実際にはこの時は言わないし、「それから——」に続く言葉は本当は「私を好きにならないで」だったんじゃないかって作中で言われてます。
そもそもこの時点では七海先輩は「誰の事も好きにならない小糸侑」が好きですからね。

このシーン、小糸侑役の河内美里さんの演技がすごい好きで、初めは侑自身余裕が無い感じで「本当は寂しいくせに!」と感情をぶつけるのに、先輩に語り掛けるうちに段々穏やかで優しい口調になっていくじゃないですか。表情も優しい。実際は侑もこの状況に焦っている訳ですが。

この緩急が凄い生身の小糸侑って感じでとても良かったし、それが真に迫っていたからこそ、その後先輩が本音をぽろぽろと零すシーンも説得力というか、リアルな感じがしたのかなあと舞台を観終わった後に思った次第です。
そりゃ好きな人にあんな優しい聞き方されたらそうもなる。

そう、小糸侑は優しいんですよね。可愛いし。
「はい。」の声も優しくてとても良い・・・

未だ「好き」を知らない侑は、先輩の事を好きになりたいと思っているのに先輩は自分を好きな人を拒絶する。
本当に苦しい・・・苦しいが過ぎる・・・・・・どうか、この人の口から「私を好きになって」と言える日が来ますように・・・。と祈る思いでこの後もずっと鑑賞を続けていました。




ここまで書くとお分かりかもしれませんが、一番好きなシーンはやはり舞台のクライマックス。七海先輩が侑に「私を好きでいて欲しい」と伝える場面です。

「好き」という言葉がずっと怖かった七海先輩
震えながら先輩が侑に改めて告白する

(まだ怖いけど、先輩は言うんだね)←この侑のモノローグ好き

「私は侑が好き」
「侑も、私を好きでいて欲しい」

本当に良かった・・・・・・
ここに来るまで本当に長かった
この言葉を聴くために苦しい今までがあったと、そう思わせてくれる素晴らしい演技でした。
これを聴くためならば何時間だって座っていられるし、尻の痛みなど知ったことではなかったです。
こんなに幸せな気持ちでキスシーンを観るのは人生で初めてかもしれない

当然のことながら、この時点で自分は既に涙ボロボロ鼻水もズルズルな訳ですが、このかけがえのないシーンを邪魔したくないという決死の思いで静かにマスクを濡らしていました。

このシーンでは「私を、好きでいて欲しい」以外のやり取りも全てが本当に素晴らしくて尊いものだったのですが、上記の台詞が本当に嬉しすぎて記憶に強く焼き付いてしまいまして…
他の台詞を正確に思い出すことが出来ない状態です。
その時鑑賞していた自分はその台詞や表情の一つ一つを噛みしめて二人の会話を聴いていたのは間違いありませんが。


あーーーーーでも「私だって変わるんです」の所も一番好きです(?)。
本当に言い出すときりがないので軽く触れますが、河内美里さんの演技で一番好きな場面はここです。
「侑は変わらないね」そう言う七海先輩を見て、自分の気持ちに蓋をして今の関係のまま七海先輩のそばにいようと自分に言い聞かせる侑。

ですがふと七海先輩の顔を見て衝動的にキスしてしまう。この気持ちの余裕のなさというかギリギリな感じが全く違和感なく表現されていて頭抱えそうになりました。

「私だって変わるんです」
「七海先輩 好きです」

「———ごめん」

苦しい……。見ている側としてはずっと侑に言って欲しい言葉であったはずなのに、その気持ちが燈子先輩に届かないのが非常に辛かったです。

その後、二人の独白が重なる
「「ばかだ、私は」」
これも心を抉られましたね





本当は佐伯沙弥香についての事も書きたい…
「駄目だよ、沙弥香…」から始まるあのシーンについて小一時間語りたい…
でも佐伯沙弥香についての感情が全然まとまらないし、文章化するのが非常に困難です。

「佐伯沙弥香について」を読んだ後になら文章化できるのでしょうか…

佐伯沙弥香って本当に作中で一番のキーマンだなって思いますし、一番複雑な感情をかかえて居ると思います。綺麗なだけのキャラではないですし。
そんなキャラクターを舞台で完璧に、指先の細かい所作まで演じきった礒部花凜さんが本当に凄い。この人が佐伯沙弥香を舞台で演じきったからこそ、自分の中で佐伯沙弥香が単なる負けヒロインではなくしっかりと心に残るキャラクターになったんじゃないかと思います。

ちなみに佐伯沙弥香の一番好きな場面は沙弥香が燈子の涙をハンカチで拭くところです。千穐楽公演では特に、あなたも涙を流しているんじゃないんですか・・・・?となり、最高に苦しかったです。

そんな礒部さんが同様に佐伯沙弥香を演じる朗読劇「佐伯沙弥香について」も早く観たくてたまりません。どこでBD/DVD買えますか・・・?

礒部花凜さんも最後のカーテンコールで言っていましたが、自分も思います。佐伯沙弥香、幸せになって欲しい~~~~~~~~!!!!

追記:書き忘れていましたが、「しょっぱい」も最高に好きな台詞です…。


予定外の二回目鑑賞へ

まあこれは見出しの通りですね。

最速で取ったチケットで鑑賞を終えた後、寝て起きても舞台やが君の事を考えている自分がいて、ロスが半端では無い事に気付きます。
もう一回観に行かねば一生落ち着かない事を悟り、再度観劇する事を決意。

あと、自分が最初観た回では、カーテンコールの挨拶は主演の河内美里さんが軽く挨拶して終わりだったんですが、せっかくなら演者の皆様がどういう考えや感情で舞台に臨んだかとか、あとは裏話とか思い出とか、演者様の声が聴きたいなあと思った訳です。そういうの大好きなので。

なんとなく最終日の公演に行けばそういうの聴けるんじゃないかと思い、なんとか千穐楽公演のチケットを確保し、無事に望み通りカーテンコールで演者様方の思い思いの声を聞くことが出来ました。

いや………聞けて良かったほんと…
あと乾杯って良いもんですね…気持ちが楽になった

特に小泉萌香さんの
「舞台が終わっても、観てくれた皆さんに、私達にも、何かが残っていて欲しいと思います。」
この言葉が聞けたのが嬉しかったです。燈子先輩……

色々な感情が残りまくっている自分ですが
これ聞いて少しは落ちつかない気持ちも収まりがついた気がしました。



おわりに

ここまで駄文を読んで下さってありがとうございました。
まだまだ書きたいことは沢山ありますが一旦これで締めようと思います。

まあ今回の体験で、舞台劇そのものが好きになったのか、「やがて君になる」という物語が好きになったのか、自分でも判断がつかない状態ですが少なくとも舞台「やがて君になる」は大好きになりました。

読みづらかったと思いますし、そもそも舞台観てない人からしたら内容すらよく分からなかったかと思いますが、なんとなく「さぞかし楽しかったんだろうなあ」というのが伝わっていれば嬉しいです。

再び「やが君」ロスに陥っている状態ですが、自分はまだ原作漫画も「佐伯沙弥香について」も前回の舞台「やが君」も観ていない状態なので楽しみが沢山残っています。
なのでこの舞台を思い出しながらゆっくり摂取していきたいですね。

出演者様全員が指の先までキャラクターをこだわって表現しているのがしっかりと伝わってくる最高の舞台でした。
それでは、公演に関わった皆様、素晴らしい舞台を本当にありがとうございました。

舞台「やがて君になる encore」お疲れさまでした!
乾杯!!!!!!!!!!!!!!!!!

勢いでメッセージノートも書いてしまった

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