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【SEA】ディポトさんの.540発言について考える

お久しぶりです。HBえんぴつです。

 2023年シーズンも終了し、レンジャースがWSCになったのは記憶に新しいですが、マリナーズは88勝64敗と、WCに惜しくも1勝、地区優勝にもあと2勝というところまで来ましたが、2年連続のポストシーズン進出とはなりませんでした。しかし、2021年から3年連続勝率5割3年連続88勝以上というのは、MLB全体を通してみても、ブルージェイズ、レイズ、アストロズ、ブレーブス、そしてドジャースしか達成していないので誇るべき記録ではあるのかなと思います。

さて、今回はそんな勝率に関してのお話です。PS期間中、会見に登場したマリナーズのジェリー・ディポトBaseball Operations President(以下ディポトさん)の発言が物議をかもしました。現地時間10/5の会見の中で、彼はいくつか物議を呼ぶ発言をしたわけですが、注目されたのは二つです。
まず一つ目は、

“So we’re actually doing the fan base a favor in asking for their patience to win the World Series, while we continue to build a sustainably good roster.”

この発言を訳すと、"ワールドシリーズに勝つために辛抱してもらいながら、持続的に良いロースターを作り続けることが、実はファンのためになる"となります。


この発言がもとで、彼は謝罪することになったのですが、私が気になったのがのちに発言したこの部分です。

“If you go back and you look, in a decade those teams that win 54 percent of the time always wind up in the postseason. And they more often than not wind up in the World Series. So, there’s your bigger-picture process."

日本語に訳すと、”過去をさかのぼってみると、10年間で54%の勝率をあげたチームは必ずポストシーズンに進出している。そして、ワールドシリーズに進出することも少なくない”となります。

この発言で混乱したファンも多く、(実際私もその一人)どのような真意でこの54%という数字を使ったのか気になりました。

なので今回は、ディポトさんがどのような意図でこのような発言をしたのかを掘り下げていきながら、彼が今後どのようなロースター編成をしたいのかに関して考察していこうと思います。


過去10年のデータから掘り下げる

勝率.540を超えるとどうなるのか

まず最初に勝率.540(以下.540、その他の勝率も同様の表記)を超えるとPSに進出できるのかを検証していきます。過去10年(2014年~2023年)のデータを集計した結果が下の図です。

資料1

これを見ていただければわかる通り、.540を超えると、ほぼ確実にPSに進出できています。10年間で.540を超えたチームの総数は101、対してPSを逃したのはわずか6チームで、パーセンテージにするとわずかに6%と、とても少ない数字が出てきます。すべてのチームが進出できるというわけではありませんが、高い確率で進出できるということがわかりました。また、PSに進出したチームのほとんどが.540を超えていることがわかります。
ちなみに逃した6チームの半分をマリナーズが占めています。さすがお笑い球団。

PSのボーダーライン

次はPSのボーダーラインに関してです。ご存じの通り、PSに進出するチームの枠には限りがあるわけですが、そのボーダーラインは年によってバラバラです。それをまとめてみました。

資料2
*最低勝率がWC枠のチームではなく、地区優勝チームの年もあります。

詳しくまとめると、

資料3
*2020年を除く

調べてみて驚いたのが、ボーダーが.540未満の年が意外と多いということです。また、.550のラインを設けたのは、90勝(.555)を基準にしている人が多いなという印象をX内で受けていたからです(89勝が.549)。なので基準としては申し分ないのかなと思います。

過去10年間の勝率が.540を超えたチームとPSの関係性

最後に、過去10年の合算のデータです。ここでは、10年間の勝率とPSとの関係性を見ていきます。(この作業が一番しんどかった)

資料4
*計算あってるはず、、、


資料5
*マリナーズの成績

このように、5チームが10年間の勝率が.540を超える結果となりました。例外のドジャースは置いておいて、他の4チームに関して考察していきます。
まず、PSに進出するという目標はなんなくクリアしており、最低でも5回とさすがの数字で、全チームが地区優勝の経験があります。それに加えて、.540以上を記録したのが6回と継続的に勝てていることがうかがえます。
そしてボーダーを.525以上にしてみると合計で9球団が該当します。レッドソックス以外、シーズン勝率.540を記録したのが5回以上と継続的に勝てていることがうかがえます(もちろんレッドソックスも)。
そして興味深かったのが、上位5チームは
AL東はヤンキース、中はガーディアンズ、西はアストロズ、変わってNL中はカーディナルス、西はドジャース
と各地区から1球団が選出されていることです。唯一、NL東がいませんが、ブレーブスが0.528ともうすぐ仲間入りしそうな雰囲気を醸し出しています。そしてこうしてみると、やはりAL東は魔境です。

これらを踏まえて

さて、これらのデータを見てきましたが、ディポトさんが発言した
”過去をさかのぼってみると、10年間で54%の勝率をあげたチームは必ずポストシーズンに進出している。そして、ワールドシリーズに進出することも少なくない”
は、あながち間違っていないのかなと感じます。そして、個人的な推察として、ディポトさんは、1年ではなく、今後10年間のスパンで.540の発言をしたのではないのかなと推察します。

なぜディポトさんはこのような発言をしたのかの考察

{1}持続的に勝ちながら、上振れ、下振れも含んだ結果が.540

最初に考えられるのが、10年の勝率が.540になればいいという考えです。言い換えるなら、上振れ、下振れも考慮したうえでの数字であり、1シーズンすべて.540を狙いに行くわけではないということでしょう。確かに、.540以上ならPS進出の可能性は格段に上がりますが、資料2、3にある通りボーダーラインにも上振れはあります。2019年のALはボーダーが96勝、勝率にして.593みたいな年もあります。
また、資料4にあるとおり、ドジャース以外の4チームは必ずしも毎年.540を達成しているわけではありませんが、10年のうち、6回という10回チャンスがあるうちの半分以上、そして、地区優勝も複数回と、2001年以来の地区優勝も夢ではないかもしれません。なので、辛抱強く待つというのはあながち間違いではないのかもしれません。

{2}21世紀以降、継続して勝ち続けた経験がないから

個人的に大きな理由はこれだと思います。ご存じの通り、2022年シーズンにマリナーズは21年ぶりのPS進出を果たしたわけですが、言い換えると継続的に勝ち続けた経験がほぼないのです。再建に入り、勝負期でPSを逃し、また再建のサイクルを続けてきたわけです。ディポトさん曰く、21年が勝負期前年、22年からが勝負期らしいので、去年はそのチャンスをやっとつかんだわけです。もう歴史は繰り返さないという意思表示とも捉えられます。そのためにも、持続的に勝つ目安が10年間で.540なのかなと考えます。.550のほうがもっと現実的といえますが、過去10年でそれを達成したのはわずか3チーム。あまり現実的ではないでしょう。

結論

結論として、彼の発言の中には上振れ、下振れも考慮して、継続的に勝ちながら、最終的に.540を目指すと考察します。個人的には、ディポトさんの発言に対して負の感情はなくなりました。むしろ、勝とうとしてくれているんだなと安心する気持ちにもなりました。しかし、補強しないことには勝てるものの勝てないので、この冬はお願いします。

参考資料


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