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チャート分析を極める(移動平均線)

はじめに

株価チャート分析において、移動平均線は最も基本的なテクニカル指標の一つです。単純な指標だからこそ奥深く、様々な分析手法に活用できます。この記事では、移動平均線の基礎知識から、実践的な分析手法までを幅広く解説します。チャート分析を極めたい方、移動平均線をもっと深く理解したい方、必見です。

移動平均線とは?

移動平均線は、一定期間の株価の平均値を繋いで線で表示したものです。期間は自由に設定できますが、代表的なものは以下の通りです。

期間

  • 短期移動平均線: 5日、10日、20日など

  • 中期移動平均線: 50日、75日、100日など

  • 長期移動平均線: 200日、400日など

期間の設定は、主に営業日の集合体単位で設定されることが多いです。例えば、
1週間の値動きを判断する場合には5日
1か月の値動きを判断する場合には20日(米国に多い設定)、21日、25日(日本に多い設定)
1年の値動きを判断する場合には200日
週足チャートの場合には、13週(3か月相当)や26週(6か月相当)を使うこともあります。

移動平均線は、株価の乱動を抑え、トレンドの方向性や強弱を把握しやすくする効果があります。

算出方法

単純移動平均線(SMA)
SMA=価格1+価格2+...+価格n / n​
指数移動平均線(EMA)
EMA今日​=(価格今日​×加重係数)+(EMA昨日​×(1−加重係数))
※加重係数は、加重係数=2/期間+1​ で計算されます。

移動平均線には、単純移動平均線(SMA)や直近の価格変動に重きを置いた指数移動平均線(EMA)など、計算方法の違いによって何種類かわかれていますが、基本的な見方(分析方法)については同じだと考えてください。

また、価格変動に敏感な指数移動平均線等を用いると一般的にダマシと言われる過剰反応に巻き込まれ、思わぬ損失を被ることもあるので注意が必要です。

移動平均線の基本的な見方

ここまで、移動平均線の出し方などについて解説してきましたが、この章では、その移動平均線を見てどのように判断するのか説明していきます。

VZ 日足チャート

トレンドの方向性

  • 移動平均線が上向きなら上昇トレンド

  • 移動平均線が下向きなら下降トレンド

  • 移動平均線が横ばいならもみ合い

移動平均線が右肩上がりの場合上昇トレンドと判断し、右肩下がりであれば下降トレンドと判断します。横ばいで方向がはっきりしない場合は、レンジ相場と判断します。

トレンドの強弱

  • 移動平均線の傾きが大きいほど、トレンドは強い

  • 移動平均線の傾きが小さいほど、トレンドは弱い

移動平均線の傾きによって、トレンドの強弱も判断することができます。移動平均線の勾配が急こう配であれば、そのトレンドは強く、緩傾斜であれば弱いと判断されます。

エントリーポイント・決済ポイント

  • 株価が移動平均線を上抜けた時: エントリーポイント

  • 株価が移動平均線を下抜けた時: 決済ポイント

一般的に1期間の終値で判断しますが、株価が移動平均線を上抜けた場合に買い、その後いずれかの期間の終値で移動平均線を下抜けた場合には決済するポイントとして判断します。
これは、今までの期間(例えば5日平均)の勢いよりも今の1期間(1日)の勢いが強ければ買い相場と判断し、その逆であれば市場の流れが転換したと判断し売りとなるものです。

移動平均線を使った分析手法

移動平均線を使った投資分析手法は一般的で非常にシンプルながら機能することが知られています。機関投資家を含め多くの投資家が活用しています。
他の投資家と同じ移動平均線を見て同じように判断すれば、株価も教科書通りに動きますので、人を出し抜くために違った数値を使うのではなく、一般的な設定で分析を行うことで成果につなげることができます。

トレンド分析

移動平均線の動きから、トレンドの方向性や強弱を判断します。
先ほど、移動平均線の角度で強弱を判断すると言いましたが、それに加えて株価と移動平均線の位置関係でトレンド分析をします。
また、短期・中期・長期の移動平均線を組み合わせてトレンドの判断を行います。例えば、短期・中期・長期の移動平均線全てが右肩上がりで、上から短期・中期・長期の順に並んでいれば上昇トレンドと判断します。

  • トレンドライン: 移動平均線をトレンドラインとして利用し、トレンドの方向性を分析します。例えば、移動平均線が右肩上がりで株価が移動平均線よりも上で推移している場合は、移動平均線をサポートラインと考えます。

  • ゴールデンクロス・デッドクロス: 短期移動平均線が長期移動平均線を上抜く/下抜くことを、それぞれゴールデンクロス・デッドクロスと呼び、トレンド転換のサインとされます。もちろん中期の移動平均線がクロスした場合も同様です。このクロスしたタイミングが売買のタイミングと判断することができます。

サポートライン・レジスタンスライン

過去に株価が止まった水準(サポートライン・レジスタンスライン)を、移動平均線で確認することができます。例えば、株価が50日移動平均線にタッチするたびに反発していればその移動平均線がサポート(レジスタント)ラインであると判断できます。

  • サポートライン: 株価が下落しても跳ね返る水準

  • レジスタンスライン: 株価が上昇しても突破しにくい水準

乖離分析

株価と移動平均線の乖離状況から、今後の値動きを予想します。色々なチャートを見てみるとわかりますが、一般的に株価は移動平均線に回帰するといわれています。移動平均線から株価が大きく離れる(乖離する)場合、移動平均線に近づく値動きになることが多いため、乖離の状況から今後の値動きが判断できます。

  • 乖離拡大: 今後の値戻しが期待できます。

  • 乖離縮小: 今後のトレンド継続が期待できます。

移動平均線を使った具体的な分析例

移動平均線を活用した実際の売買方法をいくつかご紹介します。基本的にはトレンド手法と言われるものになります。ご紹介するもの以外にも様々な活用法がありますので、ぜひ、ネットで調べたり、本を読んで勉強してみてください。

上昇トレンドを狙ったエントリー

上昇トレンドを活用する場合、以下の手順でエントリーするのが一般的です。

  1. 上昇トレンドを確認する

  2. 株価が移動平均線を上抜くのを待つ

  3. 移動平均線を上抜けたタイミングでエントリー

できれば複数の移動平均線を活用すると確実性が高くなります。チャートの表示で見れば、上から株価・短期・中期・長期移動平均線の順番で並んでいて、移動平均線は右肩上がりになっている状態です。

下降トレンドを狙ったエントリー

下落トレンドを活用する場合、以下の手順でエントリーするのが一般的です。

  1. 下降トレンドを確認する

  2. 株価が移動平均線を下抜くのを待つ

  3. 移動平均線を下抜けたタイミングでエントリー

できれば複数の移動平均線を活用すると確実性が高くなります。チャートの表示で見れば、下から株価・短期・中期・長期移動平均線の順番で並んでいて、移動平均線は右肩下がりになっている状態です。

もみ合いからのブレイクアウトを狙ったエントリー

移動平均線が横ばいか、方向感が定まらない場合や、同じレンジで株価が推移している状況の時に、以下の手順でエントリーします。

  1. もみ合い局面を確認する

  2. 株価がもみ合い上値/下値を上抜く/下抜くのを待つ

  3. もみ合い上値/下値を上抜く/下抜けたタイミングでエントリー

ダマシとなる場合もあるので、損切りラインを設定しておくなど警戒が必要です。できれば大きな値動きで抜けた時がチャンスとなります。

移動平均線の注意点

移動平均線は万能な指標ではありません。以下の点に注意して使用する必要があります。

  • 過去の値動きしか反映していない: 未来の値動きを保証するものではありません。

  • 他の指標と組み合わせて使用する: 単独で使用するよりも、他の指標と組み合わせて分析することで、より精度を高めることができます。

  • パラメータの設定: 期間や本数などのパラメータ設定によって、分析結果が大きく変わります。

まとめ

移動平均線は、チャート分析において非常に有用な指標です。

移動平均線でトレンドや値動きの強弱などを把握することができます。そして、株価と組み合わせることによって売買タイミングを図ることもできます。上級者と言って正しいかわかりませんが、短期・中期・長期の移動平均線だけを表示して売買を行っている強者もいます。

テクニカル分析に用いる指標は様々ありますが、その大半は過去の価格から求められるものです。
チャート分析でたくさんのテクニカル指標を表示して分析している人もいますが、あまり賢いやり方ではないと思います。
基になるデータは同じで、見せ方だけ違うものを複数表示してもあまり意味がないと私は思っています。
できるだけシンプルな手法で分析するようにしています。

機関投資家には50SMAと200SMAのみで売買している人もいます。過去検証をしてみればわかりますが、この手法で十分に利益が出せます。

チャート分析で移動平均線は王道中の王道です。
ぜひ、この記事で紹介したテクニックを参考に、移動平均線を身に着けて活用して、より効果的な投資判断ができる投資家を目指してください。

注意事項

投資判断はご自身の責任で行ってください。このブログ記事は、投資判断を助けるための情報提供であり、投資を推奨するものではありません。


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