「かつての「渋谷系」アーティストが発信する反グローバリズム&自然派メッセージ」を深掘りった。
本当はこちらの記事の問題https://wezz-y.com/archives/82958をもっと書くつもりだったのですが、血管キレそうなことばかりなので断念。さきにこちらの記事の問題について指摘します。
記事の趣旨としては大まかに、「渋谷系」アーティストの現在の主張を追ったもの。まあおそらく、「都会派がいきなり自然派に目覚めたトンデモ物件」という趣旨なのだと思います。
しかし面食らうのは、オザケンが反グローバリズム(別にファンでもない限り驚きというほどもないような)を主張することと、小沢牧子先生の主張を一緒くたにして述べてるところです。反グローバリゼーションと母乳神話、関係なくはないでしょうが、親子の議論を一緒くたに記述するのはどうかと。
小沢牧子先生は心理学の教授ではありましたが、ご専門は家族心理学や児童心理学。別に「オザケンの母」という仕事についているわけではなく、その分野では有名な先生です。
それはともかく本当に面食らったのは最後のまとめ
「さまざまなジャンルの音楽を切り貼りして、コラージュするテクニックに長けていた渋谷系。そんな彼らがトンデモに触れるときもまた、安易なテンプレは用いず、オシャレに上手にまとめている感がありました。音楽同様、語りも心地よく、思わず沼に引き込まれてしまいそうです。これってもはや、渋谷系の呪い?」
様々な音楽を切り貼りする方法を「リミックス」と言います(詳しくは「その音楽の<作者>とは誰か」(増田聡 2005))。実はリミックスとクラブカルチャーの進出よりも先に、「自然派」「自然派育児」の方が渋谷近辺に進出していました。正確には表参道ですが。象徴的なのが、落合恵子氏率いる「自然派育児」のパイオニア「クレヨンハウス」の設立が1976年。ヴィトンの建物のほぼ近くです。
また、「クレヨンハウス」の近くにはニールズヤード、道路を挟んで反対にはBen&Jerry's(撤退したかな)(Ben&Jerry'sの象徴的な意味は「マクドナルド化する社会」(Ritzer 1993=1995)。他にもハーブ&アロマ&オーガニックのお店が目白押し。「クレヨンハウス」近辺は「ロハス通り」と小さく書いてあり、近くには「anan」でおなじみマガジンハウスの支社がありました(今は違うはず、確か)。実際、「anan」は1984年に「自然ブーム」の特集を組んでいます。
おそらくですが、表参道を頻繁に利用するような外国人は同時にオーガニックを意識する高階層である率が高く、青山も近いところから需要も大きかったのでしょう。今も、オーガニック関係のイベントが開かれています。
もどりますが、ノジルさんの述べた時系列は正確ではなく、音楽の渋谷系より先にいわゆる「自然派」があり、渋谷系ミュージック文化はそのあとです。
何より「自然派」は彼らがオシャレにしたのではなく、もともと「自然派」はオシャレだったということです。なかでもオーガニックコスメは外国産のハイブランドがほとんどです。マガジンハウスが先導してたわけですから、そりゃそうなわけですが。高階層出身が多かった渋谷系ミュージックの担い手たちが、「渋谷のクラブで夜遊び」から「自然派」に移行するのは、意外性も何もありません。
渋谷~表参道~原宿という都市のど真ん中に、「自然派」の消費空間が生まれていたというのは興味深いところです。アメリカのシリコンバレーと比較しても面白そうな結果になりそうですね。そして、そこには「自然派」がその内側に階層間格差を含んでるという隠れた社会問題が浮上してきますが、そちらは議論に値しそうです。