大人のほめられ返し

ほめられるのが苦手だ。
いや、嫌いってわけじゃない。むしろ好きだ。大好きだ。事あるごとにどんどんほめてほしいタイプだ。

なのに苦手な理由は、ほめられた時の返しがうまくできないからだ。いい大人なのに、ほめられると耳を真っ赤にしながら「いや、まあ、そんなことは・・・」とゴニョゴニョしてしまう。情けない。ていうか気持ち悪い。

ついこの間も、セレクトショップの女性の店員さんに着ていた服をほめられてうれしかったのだが(「素敵な服ですね。よくお似合いです」)「あ、、、いや、はあ」と何とも間抜けな返ししかできなかった。
これだとほめた方も「あ、なんか余計なこと言ったかな」と思ってしまう。非常によくない。

なので次いつほめられてもいいように、とりあえず服をほめられた時のスマートで大人な返し方だけでも用意しておきたい。

「素敵な服ですね、よくお似合いです」
「そういうあなたも素敵ですよ」
「あら、お上手ですこと」

なんだこれは。
イメージできないにもほどがあるだろう。
スマートでもないし大人のイメージが貧困すぎる。大人ならもっとお洒落な会話のラリーが必要ではないか。

「素敵な服ですね、よくお似合いです」
「・・・本当にそう思いますか?」
「ええ、心から」
「だとしたら僕も少しは成長したわけだ」
「というと?」
「いや、この服を買った時誓ったんですよ。今は似合わなくても、いつかこの服が似合う男になってみせるってね」
「そういうことでしたら似合いませんわ」
「それはどういう??」
「だって、あなたはもうその服よりも素敵ですもの。今度は服があなたに追いつく番」
「じゃああなたにその服を選んでもらおうかな」
「私でよければ喜んで」

スマートで大人な感じってこういうことか?なんだかジャンポケのコントを見せられてる感じだ。オリジナリティがない。お洒落でもないし。
どうせなら自分にしかできない返し方を身につけたい。

「素敵な服ですね。よくお似合いです」
「覚えてませんか?」
「・・・」
「無理もない、もう5年にもなる・・・」
「・・・忘れるわけないでしょう」
「まさかここで再会するなんて」
「ホント、運命、、、いえ、すごい偶然ね」
「あの時君は、この服はあなたには似合わないと言った」
「ふふ、店員失格ね。お客様にそんなこと」
「でもそれは僕を思ってのことだった」
「ええ、だってあの時のあなた、とても悲しげだったから。この服は幸せの色をしてる。あなたの悲しみを際立たせるわ」
「でも僕はこの服を買った」
「あの時のあなたは、もっと悲しみたいように見えた。だからわざとこの服を選んだのね」
「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない」
「そうよ、きっと。で、その悲しみはどうなったの?」
「君はさっき、この服を似合うと言った。それが答えだよ」
「ようやく悲しみの雨は止んだようね」
「太陽を見つけたからね。いや見つけたんじゃない。気づいたんだ」
「気づいた?」
「そう、あの時この服を似合わないと言ってくれた人こそ、僕の太陽なんだって」
「・・・あなたは私のことを知らないからそんな風に言えるのよ。私はそんな女じゃ」
「君のそのスカーフは何色?」
「え?何の話?」
「いいから答えて」
「これはレインボーカラー・・・!」
「雨が止んだ空に太陽が輝くと?」
「・・・虹がかかる」

絶対違う。もうオリジナリティとは?みたいな気持ちになってきたし。というか大人のほめられ返しの正解っていったい何なんだ。

誰か教えてください。



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