匂いTime Machine

五感の中で、匂いが一番記憶を蘇らせるスイッチだと思う。

そう思ったのはプルーストの「失われた時を求めて」でのマドレーヌのくだりを読んだという知的な話ではなく、ぼんやり考えごとをしながらシャワー浴びていて、鼻で水を吸い込んだ(バカ)時に、ツーンという水の匂いを感じたからだ。

子供の頃のプール。無茶な飛び込み方をして鼻に水が入った時のあの匂い。一瞬その頃にタイムリープした感覚になった。

嗅覚は五感の中でも感度が高く、記憶力がいいのと脳にダイレクトに刺激が届くから他の感覚に比べて情報にノイズが入りにくいかららしい。

そうやって意識すると、僕らの周りは色んな匂いであふれていることに気づく。
錆びた鉄の匂い、雨上がりの草いきれ、金木犀の花、古びた本屋に入った時のインク、干したての布団…

そしてその匂いたちが、まるでTime Machineみたいに、瞬間の時間旅行に僕らを連れて行ってくれる。

そういった匂いたちに敏感になると、色んなTime Machineがそこここにあることに気づいて、ああ、世界は記憶でできているんだなあとちょっと嬉しくなるのだ。

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