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進藤れんげ。29歳。進学塾で事務の仕事をしている。小さい頃は誰彼構わず声をかけるような人懐っこい女の子だったらしいが、その記憶はない。むしろ人生の大半を人見知りとして過ごしてきた。

自己紹介が苦手。特に、名前だけを言って終えようとする時の「…他に何かないの?」という追加情報を欲しがる空気が。そもそも紹介するほどの自己もないし変わったエピソードもない。

というのは嘘で、ひとつだけエピソードはある。ただそれを言うと引かれるか、笑われるか、一部の変わった男性を無駄に惹き寄せるから言わないだけだ。

進藤れんげは今、2DKのアパートで一人暮らしをしている。一人暮らしにしては広い間取りだが、使っているのはそのうち一部屋とダイニングキッチンだけだ。

残りの一部屋は、モデルルームだ。ここで言うモデルルームは、新築マンションのモデルルームという意味ではない。自分の理想の部屋をつくっているという意味の「モデル」だ。

家具や照明、カーテンや小物すべてにこだわり、自分の理想を詰め込んだ部屋。さほど多くない給料をコツコツ貯めては、この部屋に置くものに費やしている。つくりはじめてから3年、ようやく理想に近づいてきた。

仕事から家に帰って、柿ピーやチータラをつまみに安いチリワインをちびちび飲みながら、理想の部屋を眺めるのが至福の時間だ。

ただその部屋は眺めるだけで、そこで過ごすことはない。なぜなら自分はその部屋の一部として似つかわしくないから。自分が入った途端、理想の部屋のバランスが崩れるから。

新しい家具や小物を置くときと、週末の掃除以外はその部屋に入ることはない。眺めるだけだ。

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