AIイラスト批判の今後

 前々から言ってたことだけど、批判する事に熱中して、そっちの方が楽しくなって来た人がちょこちょこ出てきているイメージ。
 強い言葉を言うと絵を描くよりリアクション貰えるからかしら? とか言うと、かなり露悪的だが。

 懸念事項はその一点ではあるのだけど、徐々にAI絵師(と自称してる人がどれぐらいいるか怪しいが)に対する言葉が汚く、品性を疑うような場面を見る機会が増えた。

 ここで、「君だって無断で学習したじゃないか」とか「他の作図やプログラム、翻訳に関してはどうなんだ?」と言う問いは幾らでも出来るが、こういう場面で合理的な返答が出来る人は、きちんとAIについて勉強して、自分なりのスタンスを見つけている筈だ。

 Midjourneyが出てきてもう一年近い訳だが、未だに解像度の低い批判を繰り返している人を見ると、為になるような回答が得られるとは思えまい。

 批判というのは賞味期限があるのではないかというのが近頃思った事である。
 分かりやすいのはコオロギ食批判ではないだろうか?

 最初は「コオロギとか気持悪いね」ぐらいの話だったが、給食の一件は強制ではなかったとか、補助金は他の産業と比べて異常ではないとか、パン屋はコオロギ以外にもおからや牛乳でも製品開発してたと言うのが知れ渡ると、熱烈な批判の旗色が悪くなってくる。
  そこに来て、ディープステートが日本人を殺そうとしているとか、爬虫類人間の食料だとか言う陰謀論が取り憑くに至って、いよいよコオロギ批判が「アレな人」の証しになりつつある。

 或いは反マスクなんかもそうだろう。
 マスクの義務化はなくなったが、反マスク派の今までの言動を見て、外しにくいと言う人が出てくるのも似ている。

 AIイラスト批判も、確かに尤もな面は沢山あるのだが、批判の内容に合理性のないものが目立つようになってくると、「ここに来て批判してる人ってアレ」と言う印象が持たれるようになるのではないか?

 勿論、コオロギ食にしてもAIイラストにしても、そのような陳腐な判断で答えを出すのは間違っているが、「そう言う人間の仲間になりたくない」と言う普通にあり得る懸念を払拭できうるかと言うと、それは別の話になってくるだろう。

 「AI絵師に煽られた」と言うほぼ虚偽と考えられるツイートが出てきたあたりを見ると、そろそろ潮目なのではないかと思う。

 AIに限らず、放射線とか癌とかコロナとか、脅威と思えるものに遭遇したとき、それについて無知の状態にあって批判したい人が多い。
 こういう人は、安心できる情報を仕入れたいのではなく、自分の不安を肯定してくれる情報を探す。
 AIイラストもキレのいい批判を見つけてはエコーチャンバー化しているように見える。

 イラストAIも、使う人によって非常に行儀の悪い場合もあるし、十全問題のないシステムとは言いがたいのは確かだ。
 ただ、その批判が合理性や客観性に欠くような状態が続けば、勉強した上での批判も同列に見られるようになるだろう。
 それはAIイラストにしても、イラストレーターにとっても不幸なことになるのではなかろうか?

 どれほど強い言葉を使ったとて、イラストAIが消えてなくなることはなく、何処かで妥協点を見つけるなり、自分からそれを利用していくなりするしか道はない。
 恐らく、今後は(と言うか現時点でもだが)手描きのイラストに使われる便利機能としてAIは沢山実装される。
 それを使いつつAI批判をする人も増えるだろう。

 そして更なるイラストAIが出てきた時には、厚顔にも「ここまでは許された」と言うことを言い出す人間も出てくるに違いない。
 AFのカメラが出てきた時、「AFは甘え」だと言い、デジカメが出てきたとき「味がない」と言い出してた連中を思い出す。

 AIに限らず「科学の進歩は十分なので、今の状態から先に進むべきではない」と言う人は常に出てきては消えている。
 それは自分が使える便利機能は許されるべきで、自分が使えない技術で自分より得をするのが許せないと言うだけのことである。
 そう言う批判をする人は、それが「今」であって十年後や十年前ではないと言う根拠を示せない。何故なら自分のお気持ちだからだ。

 自分の便利に使った機能で誰かの仕事が消える事、自分が便利に使った資源が環境負荷になっている事は無視して、自分が使わない事、自分には負担が増えない事には大きな声を上げる。(電気を使った音楽を作ってた人が、「たかが電気」と言ったのは印象的だった)
 そう言う自分勝手な人間は、今後も出てくるだろう。
 なので、AIイラストの問題は、今までもあった現象であり、今後も形を変えて現れる現象だろうというのが確実に言える事である。(ラッダイトや写真機批判、赤旗法などいくらでも参考事例が出てくる)

 十年も経てば――否現時点でも、こういう絵師は何処かしらでAI技術を使うし、かつて手抜きと言われていた技術を使うだろう。
 悲しいかな、今や発言には記録が残る。
 忘れた頃に大きな恥を掻く前に、一度自分のポジションや発言を見つめ直した方がいいだろう。
 批判を続けるにしても、AIを受け入れるにしても。

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