やばいクレーマーのKel'tsit

 私が濃厚とんこつ豚無双の濃厚無双ラーメンを頼んだのは、純粋に好奇心によるものだったと言われれば否定出来ない。
 しかし考えてみて欲しい、豚骨ラーメンがどれほど濃厚になれるのかと言う事を。
 そして、濃厚を謳うスープに海苔が絡まる様を。
 私は食券を買うと着席する。
 その時、コップに水垢が付いていたのを見てしまった。
 それを見つけてしまった以上、それを指摘しないのは、公衆衛生として許されないのは分かっている。
 それを指摘するとき、大きな声が出たのは認めよう。
 だが、店主も弁えている。"誠意"と言う形で、ささやかな品を貰ったので、この場は穏便に済まそう。
 サービスの焼豚が追加された。
 私の動向次第で、この店の進退がはっきりする場合もあるだろう。
 それについて多くを語ることはない。
 着丼を確認すると、私は誠実に向き合う。
 誠実を言葉にすることは大切だ。
 食に対する感謝は文化的な食事の光景には重要な儀式だ。
 最初にスープを蓮華で掬う必要がある。
 しかしこの時、極めて粘度の高いスープの中に、小さな虫の存在を確認してしまった。
 公衆衛生としてこれを許すべきだろうか?
 私は冷静さを失ってはならない。
 しかし、卓上調味料は倒れる結果になる。
 君はこういう状況を見て笑うだろうな。
 だが、店主はそのような状況でも真摯だった。
 立場を弁えていると言えば良いだろうか。
 "誠意"と言う形で焼豚丼が私のテーブルに追加された。
 そういう訳で、もう一度私は大きな丼に向かう。
 そこにはワシワシとした極太麺が詰まっている。
 これでもかという勢いでそれは私に迫ってくる。
 その存在感は恐らく、ダブリンのラフシニーほどあるだろう。
 だが、その瞬間に私は殺意を感じてしまった。
 麺の中に髪の毛が混ざっているのだ。
 君なら当然理解するだろう。
 製麺の工程で人間の髪の毛が混じると言うことが何を意味しているのかと言う事を。
 流石の私も立ち上がらずを得ないだろう。
 このような事態に陥れば、店主に一言告げることは全く合理的と言えるだろう。
 君が望むのであれば、店主の謝罪する姿を、別のファイルで見る事が出来る。
 本当に君がそれを望むのならばな。

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