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鉄道150年特集バックステージ⑮・番外編・「昭和の鉄道を語る会」と神保町ブックフェスティバル


鉄道150年マンスリーではさまざまなイベントや展覧会が行われていますが、10月29日(土)には椎橋俊之さんのセミナー「昭和の鉄道を語る会」に行ってみました。

椎橋さんは蒸気機関車の機関士や機関助士をはじめ運転に携わった500人以上の人びとにインタビューして『「SL甲組の肖像」』や『鉄の馬と兵ども』などの著作にまとめ、2021年の鉄道友の会・島秀雄記念優秀著作賞の特別部門に選ばれました。蒸気機関車の運転とはさまざまなドラマ性を見出しやすいものですが、椎橋さんはインタビューを重ねることで、耳に入りやすい物語性に引きずられることない冷静な筆致により、説得力を高めた記録を次々に発表されました。

東北本線一戸—沼宮内間の奥中山峠は東北本線の最高地点でもあり、蒸気機関車の牽く列車はここで補助機関車をつけて、1000トン級の重量貨物列車を3両の機関車で牽く「奥中山の三重連」が、電化で蒸気機関車が姿を消す1968(昭和43)年まで走っており、末期には蒸気機関車3台が峠に挑む姿を撮影しようとたくさんの鉄道ファンが訪れたのです。

当時、椎橋さんはその一人だったわけですが、インタビュー等で著作をまとめる過程で列車の重さや機関車の性能、そしてダイヤ構成による運用(使い回し方)などによって機関車の組み合わせや連結位置などのパターンが生じることを説明。鉄道ファンたちが喜んだ、3両の蒸気機関車が力強く煙を吐いて走る姿がいかなる「必然」のもと生まれたのかについて語られました。必然と物理の法則による制限、しかし天候などの条件や社会的使命(戦時輸送や高度経済成長などの輸送の要請)などの無理が機関車乗務員に課せられることもありました。これらの事実を丹念に集め、構成する椎橋さんの仕事があってこそ、ドラマとしての感動を増すのだと痛感しました。

日本全国にあった蒸気機関車乗務員の職業の記録を横断的に残したという意味では、他の業種と比較しても他に例を見ない実績であり、鉄道愛好者以外にも、もっと知られ、もっと評価されるべきものだと考えます。


さて、29日、30日は神田神保町の「神田古本まつり」が3年ぶりに開催されるのと合わせて、すずらん通りで「神保町ブックフェスティバル」が行われました。書店商業組合の呼びかけに応じた出版社がブースを出し、再販制度の例外として「自由価格本」を設定、お買い得の価格で提供するというもの。中には早川書房のように、全てを著者サイン本として長蛇の列ができるブースもありました。

出版に携わる者にとっては、お客様に直接本を販売する機会は貴重なもので、ご意見をいただくのみならず、どんなお客様がお求めになるのか、お顔を拝見するだけでもたいへん勉強になるのです。このFacebookページも、Twitterも双方向のやりとりができる媒体です。単なる告知でなく、ご意見やアイデアを頂戴する窓口として伸ばしていきたいと考えます。今後ともよろしくお願いいたします。


わたくし(偽)は、慶應義塾大学出版会のブースで、今号「鉄道150年特集」にご執筆いただいきました中西聡先生が編著者となっている『醤油醸造業と地域の工業化』を、大変お得な値段でゲットしました。やっぱりリアルな本はいい。読むのが楽しみです!(偽)

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