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鉄道150年特集バックステージ①・それは盆栽から始まった

月刊『東京人』2022年月号「鉄道をつくった人びと」特集に寄せて

昨年8月31日、東武アーバンパークライン・大宮公園駅に下り立ちました。駅前広場に大きなヒマラヤ杉が立っています。昔の郊外や地方の駅によく見かけた懐かしい鉄道情景が残されていますが、壁に戦後間もなく「大宮公園駅 Omiya Kouen」と大書された跡が残る1929(昭和4)年の開業時からの旧駅舎は、既に建て替えられていました。

駅の北側には「盆栽村」が広がっています。関東大震災で都内の盆栽業者が集団移転して形成されたもので、郊外住宅地と日本庭園がマリアージュしたような不思議な、しかし心落ち着く光景が展開します。15分ほど歩いた先に「大宮盆栽博物館」が。アポイントは1時間後。時間まで、見事な盆栽の数々を眺めます。なかなか面白いものです。

実は大宮盆栽博物館の館長は、立教大学名誉教授の老川慶喜先生。編集長と鉄道150年特集の相談にお伺いしたのでした。編集長からは幕末から維新期にかけての人物模様を、私は先生が交通史のみならず物流経済史にも造詣が深いことから、鉄道によって近代日本がどのように形成されたかというテーマをいかに記事化するかをご相談しました。

ここから、今回の特集企画がスタートしたのです。老川先生の記事「大隈、伊藤が鉄道建設を決断」には、「長州ファイブ」をはじめとした明治維新の若き立役者たちが、日本で鉄道を建設しようと苦闘する姿を描かれていますが、蒸気機関車をはじめとする蒸気機関の動力が、世界をいかに狭くし始めたか、そして時刻表の原型が誕生したため、旅行が計画をともなってできるようになったことを、小説「八十日間世界一周」をもとにして書かれた、たいへん魅力的な描写があります。昔のモノクロ写真を着色するのとは全く違った、文章によるイメージの広がり。それを、ぜひみなさんにご覧いただきたいのです。

https://www.toshishuppan.co.jp/tokyojin

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