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視覚に障がいをもった父のこと

緑内障の進行のため、父の目が見えにくくなって、約1年が経つ。

「周りがぼんやりと白くしか見えない」と話し、住み慣れた家の中であれば移動や食事、入浴等は一人でも可能だが外出は難しく、通院や買い物などは私が付き添っている。

少しでも視力が回復するようにと、医者には何度も手術をお願いしてきた。だが医者からは、「手術をすることで、ギリギリ繋がっている目の神経を傷つけるかもしれない」と言われてしまい、ずっと点眼治療のみを続けてきた。

そんな中、6月の通院日の際、「ますます見えなくなってきました」と父が医者に訴えた。すると最初は、「なんででしょうね〜。目薬は変わりなくつけていて眼圧も高いわけではないんですけどね〜」と困ったような雰囲気の医者であったが、その後、「では、別の病院を紹介しましょう」ということになり、新しい眼科での治療が始まることとなった。

新しい眼科は、父が住む家から車で片道1時間程かかる。運転に不安がある私ではあるが、「なんとか頑張って運転しよう!」と心に決め、父を乗せて、病院に向かった。

その眼科は「先生が良い」という評判で、待合室にもたくさんの人がいた。父の名前が呼ばれ、さまざまな検査をした後、院長らしき先生が直接父の診察をすることになった。以前、父は緑内障も白内障も手術をしていたようだが、先生は「目を見ると、良い手術ではなかったようだね」と話し、「なんで(視覚障がいの)手帳を持っていないの?」と、私の方を見た。前通院していた病院では、手帳のことは何も言われなかったため、その旨を伝えると「たぶんお父さん、視覚障がいの2級になるよ」とのことで、「次からじゃなくて、今日からレーザー治療をやるから」と、すぐに治療もしてくれた。

それから一週間後、再度診察してもらうと、レーザー治療の効果があり、眼圧が大幅に下がっていた(緑内障の人は眼圧が高めで、父は20くらいあったのが12くらいになっていた)。「下がりましたね!よかったですね!」と先生も嬉しそうにし、「もっと早くうち(の病院)に来ていれば、ここまで悪くならなかったかもしれないね」と話し、続けて私に「今日だけで視覚障がいの申請のための診断書を4通書くんだよ。それくらい、緑内障で目が見えにくくなってる人が多いんだよ」と言った。

待合室にいると、父と私のように手をつなぎながら中に入ってくる親子風の人やご夫婦、ガイドヘルパーさんにサポートしてもらいながら通院してくる人が目に入る。私自身も緑内障だが、ずっと通っていた眼科ではなく、偶然行った眼科で緑内障の診断を受けた(父からの遺伝らしい)。なので、緑内障は見つけづらく、手術や治療、説明もしにくい病気なのかもしれないが、手術をしても良い手術をしたと言われない病院、障がい手帳申請のことを伝えてくれなかった病院、緑内障を見つけだせなかった病院などもあれば、一方で、レーザー治療も障がい手帳の申請もスピーディーに対応してくれる病院もある。

「新しい眼科に行って良かったね!」と話すと、父も「そうだなー!」と笑った。緑内障は、治療をしても進行を抑えるのみで、良くはならないと言われているが、たとえそうであったとしても、ほんのちょっとでも、私は父の目の回復をずっと信じたい。

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