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K2 第476話『シリウスの光(後編)』弱さには因果がない/香水が出るジャンル


第476話『シリウスの光(後編)』弱さには因果がない


https://comic-days.com/episode/2550689798333614320
イカロスを引き継いだ手術支援ロボットシリウスが、その侵襲性の低さから遺族感情に配慮した司法解剖にも援用できる…という回。
血液恐怖症からモニター越しでしかオペを出来ない椎名先生、イカロス事件に巻き込まれた若狭先生、法医学を志した仙道くん…それぞれの進む先が示されたと同時に、石動先生や磨毛先生が育てるべき後進を得ているという、未来に向かうK2らしいエピソードだった。
帝大解剖学の内田和歌子先生の再登場も嬉しい。

だが、個人的に一番印象に残ったのは精神的に不安定でついに自死を選んだ坂本珠美さんのことだ。

前回の終わり、坂本さんの死因に疑問符がついたときには、次回で彼女が不安定になった理由や極端な選択をしてしまった理由がきっと示されるのだろうと思った。
もしかして、冴草が再登場するような…そんな事情が隠れているのかもしれない…とさえ邪推した。

でも、違った。
彼女が不安定になった理由は描かれなかった。
そこにハッとした。もしもなにか理由が描かれていたら、「それなら仕方ない」とも「そんなことで…?」とも、読みながらそこにジャッジを加えてしまったに違いない。
でも、人の心も身体も強さは千差万別で、バランスが崩れるかどうかは究極のところ運でしかない。
一人先生が糖尿病を隠していた松吉さんにも、糖尿病に罹患した原因には一切言及しなかったことを思い出した。

人はときにどうしようもなく病んでしまう。K2はどんなときでも、そこから先、未来に向けて働きかける漫画なのだな…と改めて思った。
同時に、精神の均衡を崩し、自分の本心を見極められないまま恋人を突き放し、最期のときにも寂しくてためらっていた弱い人が、その弱さをあげつらわれることなく作中に存在できる、そこが好きだなとも思った。

不可逆的に病むことがある…そこに理由を問いただしても仕方がない…というのは、一人先生の父一郎先生を物語がどう受容していくのか…にも通じるのかもしれない。

香水が出るジャンル


一人先生と富永先生が香水になった。そんなことがあるんだ。ねんどろいどetcの立体化はあるかな?と踏んでいたが、香水化は完全に虚を突かれた。
医療従事者の彼らが香水を常用することは無いだろうが、キャラクター香水はキャラクターの佇まいや生き方を香りの言語で描出する一種の二次創作だと思っているので、香水という商品自体が解釈違いということはない。
どちらかといえば、全品ランダムのくじの方が解釈違……引いたけど……S賞のマントブランケットが当たった。どうしたらいいんだ。このブランケットに一人先生の香水をふりかければ…と頭をよぎったが殆ど 「悪事」 に近い気がするのでやめておきたい。

で、香水の詳細。

私はフレグランスに知識がないので羅列された香りの名前を見ながらの雑感になるが、一人先生のミドルノートの筆頭がラベンダーなのすごく良い……。というか、ミドルノートが安らぐ花の香りで構成されているのが嬉しい。仄かなレザーは熊の毛皮かな?と思った。T村は狩猟も盛んですしね。

一人先生の魅力は多々あるが、私は彼がT村という一種の「異界」、なんらかの事情を抱えて外界から避難してきた若者たちが力を蓄える避難所の守護者である、という点がとても好きだ。
T村のことを一人先生が整えた花園のようだとも思っている。だからこの香水の構成…気が合う……調香師さんのお話を聞いてみたい。
なにかと鋭さ苛烈さドクターKの超絶技巧をもって語られる一人先生の人物像を、「慈愛」と「思慮深さ」というフレーズで表してくれたのも、分かる分かる分かると頷き続けてしまった。

富永先生の香りの構成が一人先生と共通していて、でも彼のほうがより鮮烈な雰囲気がありそうなのも良いですね。ラストノートのサンダルウッドとムスクは大人の男性を思わせるし、『バディ』回でさらっとマッカラン18年を奢る男にふさわしい。俺たちの院長は流石ですね。
ミドルノートのローズが共通しているのは、T村で過ごした日々が彼らの花でもあったということかしら。

重ねづけを前提とした構成なのだろうし、ぜひ両方買っていろいろ試してみたい。
9月13日からはプリマニアックス銀座本店でお試しや、調香のコンセプトを聞けるようなのでぜひ行ってみようと画策している。
行ったらまたここでレポをします。

Twitterを辞めた

Twitterをやめました。
複合的要因でTwitterという言論空間にほとほと疲れてしまった。じわじわと疲労が蓄積して閾値を超えたもので、なにか一つの原因に帰すものではありません。
Twitterに未練は無いものの、K2の感想を言語化するのは辞めたくないなと思った。読んで、浮かんだことを書いて、書いたことで新たな発見があって…という精読は豊かでとても大事な時間だったからだ。
なので、noteに感想を書き記していくことにしました。基本、本編更新のたびに、それ以外でもなにかトピックがあればここに書きに来ようと思います。
Twitterほどの即時性はありませんが、私はここにいます。良かったら時々様子を覗きに来てください。

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