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K2第478話 『跡取り修業』スーパーではない跡取り息子/ぬいぐるみが可愛い


K2 第478話『跡取り修業』

血液恐怖症の椎名先生がロボット手術に進路を求めたエピソードに端を発した帝都セブンの未来を巡るシリーズ、今回は深見くんの番。今回で単行本48巻収録分が溜まった。
47巻でスーパードクターK時代の宿題である高品龍一⇔高品龍太郎親子の因縁がときほぐされたからだろうか。48巻収録分は、まるでポストドクターKともいうべきドクターKが消えたあとの世界を予感させるエピソードが続いている。
なかでも今回は決定版、テーマはチーム医療。

深見院長のかねてからの将棋仲間田ノ上さんが食道がんを患い、深見くんに主治医が任された。
covid-19をはじめ数多い既往症を持つ田ノ上さんの食道がん手術は難オペになる。自分に出来る訳が無い!と首をふる息子に深見院長が指示したのは「食道がん治療に関わる数多くの科をチームにまとめるオーガナイズ」だった。
結果、田ノ上さんの前には主治医、執刀医、歯科医、呼吸器科医、管理栄養士、理学療法士らが入れ代わり立ち代わり波状攻撃で押し寄せることになる……

帝都大入学当初は同級生にマウントをとることに腐心していた深見くんが、チームの下支えをし、処置者が次々入れ代わることで生じる患者の不安を払拭すべく動いている姿は頼もしくて深見院長の親バカも納得の回だった。

しかし、一抹の寂しさも感じた。

思い出したのは富永先生の卒業エピソード『岐路』のことだ。
『岐路』は富永先生がKほどの速さで切断指の縫合が出来ない自分に焦燥感を募らせることをきっかけに始まる。成長していない…と思いつめてT村を離れた富永先生の、その実、烏合の研修医を統率してオペをこなす天賦のリーダーシップをキューザック博士が見出し、また、グリオーマの超難手術をKに頼らず「ひとりで」やりきるという形で個人技の高さを証明し、彼は実家に凱旋していく。
キャリアの初期段階でドクターKに出会ってしまった為もあろうが、個人的技量の高さは富永先生にとって己を一人前だと認める上で譲れない一線だったに違いない。(なかなか自分の技量を認めない富永先生を自己評価が低い…と見ることも出来るが、個人的には、彼の理想の高さの証明であり、およそ非人間的な理想と己の距離を測り続けるなんて健全な自信を持たない人には無理ではないかな?と思っている)

同じ跡取り息子でも片や深見くんは、個人的技量に拘らせることなく、初めからチームをまとめるマネジメントスキルを伸ばす育成方針の元に置かれている。

『K2』という物語のなかで、いつか「ドクターKはもう必要ない」とされる日が来るのだろうと感じるし、直近のエピソード群は更にその感触が濃かった。
だが、作中最良のキャラクターで、もしかしたらドクターKそのものよりも「理想」を体現する存在として設定されているのでは?と感じられる富永先生もまた「高い個人的技量+天賦の人間的魅力」というルート以外を登っていく深見くんの描かれ方によって、無二の正解ではないのだと相対化されていくのは衝撃的だった。

切断指を繋げる時間にこだわった若い自分を、今の富永先生は笑うのかもしれない。「Kに手伝ってもらって、なにがそんなに悔しかったんだろう?」と。グリオーマの手術だって、「俺も同じ判断をし、同じオペをする」なら「じゃ二人でやればもっと確実だね❤!」になったのかもしれない。

『バディ』回で、一人先生と富永先生が「お互いトシをとったものだな」と歳月に思いを馳せていたシーンの味わいが深まった気がする。
個人技、自分ひとりで何が出来るか何をなし得るか、に強い拘りを抱いて成長した自分たちの世代が古くなる時が来ていて、それでも違う価値観を持って育ってきた世代を抱えて、経営者として教育者として邁進しようと思える彼らが眩しいな…と思った。

現実を映すように40代半ばの氷河期世代の層が薄いK2世界のキャラクター群のなかで、富永先生と一人先生がお互いに無二の存在であって良かったなーーーー、の気持ち。

それにしても…である。

チーム医療の波が来るのがあと数十年早かったら、KAZUYAさんは命を縮めなかったのかもしれないし、一郎先生が妻を喪うことも、静江さんが自分自身を失うことも、一人先生が母と父と師匠を失って無免許医になることもなかったのかもしれない。一也くんの運命も全く違っていたのかもしれない。
個人技の象徴であるK一族の運命に思いを馳せて、切なくなってしまう最新話だった。

ぬいぐるみが可愛い

一人先生と富永先生がぬいぐるみになった。

かわいすぎる。

かわいすぎる

推しぬいを自作してみたことがある。手作りは愛着が湧く…というのは嘘だと思った。アラしか見えない。
裁縫の技術がない以上、推しぬいを持ち歩く憧れは憧れに終わると思っていた。それが……こんな……赤面してる一人先生のぬいぐるみを既製品でいただけるなんて……なんで赤面してるの?
頬を染めたデフォルメはドクターKの描写コードにひっかからないんだ…とは思ったが(ラスカルを肩に乗せるのがアリだし、赤面も許されるのかもしれない)、可愛いからいい。
12月が楽しみです。クリスマスまでに届いてくれたらいいな。

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