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Cafe&Bar TONARI シリーズ 第1話 【ようこそ歓迎いたします】

街の雑踏から遠ざかる
緑に囲まれたその土地にひっそりと佇(たたず)む建物が見える
Cafe&Barのアンティークな鉄看板がゆらりと揺れていた

扉を開けて中に入ればオレンジ色の照明が
柔らかくバーカウンターや客席を包んでいる

「おや?初めましてさんですね。いらっしゃいませ。御来店ありがとうございます。」

赤い眼鏡に青い瞳 癖のある薄い色の髪を揺らし ニコニコと男性が近づいてきた

自分以外の客は今はいないらしい

「ココに辿り着いたのも何かの縁かもしれませんね。良かったらゆっくりしていきませんか?」

彼が微笑みながら近付くと ふんわりとコーヒーなのか紅茶なのかをいれていたのだろうか
柔らかい香りが鼻腔をくすぐった

「あ…お腹空きません?僕、まだご飯食べていないので、良かったら一緒に食べましょう!」

彼がニコリとすると眼鏡にかくれた泣きボクロが見え隠れしている事に気が付いた


「あれ?お腹…空いてなかったですかね?外れちゃったかな?」

しまった
泣きボクロに気を取られていたのか
返答をしていないことに彼は眉をさげていた

「いや…すみません。…いただきます。」

「!! あ、良かった!!当たってましたね。はい!少し準備するので…そうだな…あちらのカウンター席へお掛けください。」

彼はカウンターのひと席に案内をしてくれるとキッチンだろうか
カウンターの先へ背を向け歩きだした

*****

「お待たせしました!!今日のまかないです……って初めていらした方にまかないって言いながらお出しするのは気が引けますね。」

「大丈夫ですよ。寧ろ宜しいのですか?」

「え?僕が勝手にお誘いしたので…そこは大歓迎ですよ。寧ろありがとうございます!」

彼はおかしなことを言う

「何故 ありがとうになるのでしょうか?」

「うーん…ほら、こういうお店とかしてると、皆さんと一緒に食べるってなかなか無いでしょ?独りで誰もいない時に食べることが多いから…つい嬉しくって。」

「ああ…それで…。」

「ふふ、そうなのですよ。僕、誰かが食べる姿とか見ているのも好きなのですが、誰かと一緒に食べるのはもっと好きみたいです。」

ああ このヒトは 本当にソレが好きなのだなと思えるくらいに綺麗に微笑んだ

「じゃ、今日はご厚意に甘えて、ご一緒させていただきます。」

そう答えると 目の前のカウンター越しの彼は一瞬ハッとした顔をして

「ご一緒していただけて光栄です。僕との時間、まったりゆっくり楽しんでいただけたら幸いです。」

と少し茶化したように口上を述べた

「「いただきます!」」

揃った声に顔を見合わせ 彼と笑ってしまったのはいうまでもない


たまたま見つけた場所だったが
どうやら これは 長い付き合いになりそうだ


Cafe&BarTONARI

この文字を見かけたらフラッと入ってみると良い
きっと 何だか不思議な店主がニコニコしながら迎えてくれる

そういえば なんでTONARIって店の名前なのか訊ねたら

「誰かの隣って何か落ち着きませんか?僕、隣でちょこんと空気のように居たくてね。それで、気にせずのんびりまったりしてくれたら良いなぁって思ったのですよ」

とまたヘラりと笑っていた

何だか それっぽいな…と思ってしまって
つられて笑っていたのは言うまでもない…

おわり

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こちらのお話は配信アプリREALITY内にて時々朗読している(いた)ものです。

Cafe&BarTONARIという店名でカフェバーコンセプトで雑談+朗読練習や台詞練習などをゆるくしております。
そのコンセプトに沿った日常を切り取った物語を拙いなりに書いてみました。

宜しければそちらも遊びに来てやってください。


おまけ☆。.:*・゜
冒頭部分を漫画風に1Pだけ描いてみたので記載

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