式部

小説を投稿していきます。2024/09/19~ 紫式部に憧れた人間の末路。中身は2000年生まれのしがない大学院生。

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小説を投稿していきます。2024/09/19~ 紫式部に憧れた人間の末路。中身は2000年生まれのしがない大学院生。

最近の記事

【小説】幸せな日々

「私でも自分の出した論文が恥ずかしくなることはあるさ」 大量の本や論文が散らばった足の踏み場もない研究室で、つい5分前に起きた、四宮涼香(しのみやすずか)准教授は、寝転がりながら言った。 「先生でもそうなんですか」 30代半ばにもかかわらず学会で次々論文を発表し、すでに准教授まで上り詰めている人間でも、そのような感情があるのだなと驚いた。 実際彼女の論文は、素晴らしい。同じ人間だとは思えない。未だ大学院生の若造の俺なんて比べ物にならないなんてことは明白な事だが。 「当た

    • 【小説】普通の人間が二人

      「今の世の中は不便だよ。なぜ行きたい場所に一瞬で行けない?なぜ食べたいものが願っただけですぐに出てこない?なぜ不老不死になれない?なぜ経済を回し続けないと国家が崩壊する? 行きたい場所に一瞬で行けないからそこまで道のりで事故が起きる。食べたいものが願っただけで出てこないから餓死する。不老不死になれないから人間は人間の死によって悲しみ・憎しみが発生する。経済を回さないといけないから戦争が起きる。 馬鹿だよ。愚かだと思わないか。おっと、これもだ。なぜ文字を打つのにタイピングを

      • 【小説】6時間20分後

        深夜2時。外に出た。煙草を吸いに。家で吸うのはやめた。匂いが付くから。 10月中旬だが、気温はこの時間ということもあり肌寒い。パーカー1枚で出てきたのはさすがに間違いだった。 近くのコンビニに着き、あたたかい缶コーヒーを一本買ったあと、備え付きの喫煙所に向かう。僕以外に誰もいない喫煙所で、カチッというライターで火をつける音が響いた。意外とこの音って大きいよな。 寒さと眠気を、あたたかいコーヒー1本で吹き飛ばす。 「私は人を助ける」 女性の声だった。左を振り向くと、黒のセー

        • 【小説】カブトムシの世話

          「なにそれ」 岡田は怪訝そうに俺の持っている物体を見ながら言った。 「カブトムシの幼虫だ」 15匹と大量の腐葉土が入っている大きな虫かごは重く、腕が疲れてきたので床に置きながら俺は一息ついた。 「俺の母さんが職場でもらってきたんだよ、同僚で飼っている人がいるんだと。おすそ分けだな」 「その同僚、哀川翔?」 そのツッコミはあまり大学生っぽくはない。 「大学3年生の男でカブトムシ飼ってるのお前だけだよ、もっと大学生っぽいことしろよ、春樹」 今さっき大学生っぽくないツッコミをした奴

          【小説】できそこないの紫式部

          私は小説家。 といっても、ネットのとあるサイトでほんの少しだけ知名度がある、くらいのものだ。 昔から物語を書くのが好きで、学生時代も教室の隅でひとりでこそこそやっていた、要は陰キャと言われるものである。 そんな私を見て、クラスの奴らは、公にではないけれど、こそこそ馬鹿にしていたと思う。 私を嘲るように見るみんなのあの視線。 それで苦しむみたいなことはなかったけれど、あまり気持ちの良いものではなかった。 そんな感じで中学、高校と過ごし、友達は見事にゼロ。 大学に入って、文学サ

          【小説】できそこないの紫式部