泳ぐ前に読んでね β
・肌の露出はなるべく避けよう
とにかく、ラッシュガードかウエットスーツを着よう。
間違っても海パン一丁、ビキニ一丁で泳ぐなんてことはないように。
水着で外をウロウロするのは島のルールにも大違反しているし、そもそも猥褻物陳列状態で船に乗るのは、便乗させていただく立場としてありえない。
それに、ラッシュガード、ウエットスーツの着用は熱中症、クラゲ刺傷、単純外傷からも守ってくれる。
・元気よく挨拶!
「こんにちは!!!本日同乗させて頂く御蔵島イルカ調査員です!!!みなさまの後ろで、イルカを撮影させて頂きます!!!」
ゲストの皆様には元気にはきはきとご挨拶しよう。
元気すぎでいい。
「なんなの、なに、あの態度?調査員?え?なんで乗ってくるの?」
と思われるよりよっぽど良い。
愛嬌があれば周りのみんなは好意的に見てくれる。
多少の失敗も笑ってくれる!
無愛想な状態で海上で何かやらかし、ガイドの方や船長さん、お客さんの不興を買えば、もう調査員はその船を永遠に使えないかもしれない。
もちろん、挨拶なしなんか問題外だ。
・極力音を立ててエントリーしない
あなたが水中に落下、そして発したズバァアアアン!!!という音にイルカがびっくりし、Uターンして逃げて行ったとする。
そうすると、そのエントリーで誰もイルカに会えなかったのは貴方の責任になる。
そういったことを、船長もガイドさんも見ている。
・原則、お客さんの後にエントリーして、お客さんの後にエキジットしよう。
ただ、自分が降りないと後ろのお客さんが降りれない状態で、あえてお客さんを先に降ろすことはない。
静かにエントリーして、素早く船から離れて、お客さんを先にイルカの方へ行かせられるよう、道をあけよう。
エキジットも同様。
目の前に船があって、お客さんがまだ遠い位置にいる時、あえてお客さんを待つ必要はない。
速やかにエキジットしよう。
ちなみに、あとの方でエントリーすればするほど、イルカの群れの挙動を俯瞰的に見ることができる。
群れが2パートに分かれているとき、最初に来るのは特攻隊で、しんがりに来るのが重要個体、こういうことが多いように思う。
あとの方でエントリーすれば、お客さんが特攻隊と戯れている間に、貴方は重要個体をゆっくりと撮影することができる。
・イルカと極力”遊ば”ない。
”遊ぶ”というのは常連たちいわく、イルカと身ひとつでクルクル縦にまわったり横にまわったりすること、らしい。
手持ち無沙汰な採糞担当、記録担当がやりがちだ。
こういう状態を見て、
「あっ、調査員がイルカと”遊ん”で、引きとどめておいてくれた💖」なんて思うゲストはいない。
常連になればなるほどいない。
そのかわり、「自分が"遊ぶ"はずだったイルカを取られた」と思う。
ゲストはこの”遊ぶ”瞬間を楽しみにやってくる。
夏の混雑した海上、疲れ切ったイルカ達、”遊ぶ”機会は1出航に1回かもしれない。
それを取られた、と思う。
そしてゲストは宿に帰ってこう言うだろう。
「あいつらは遊ぶだけで何を調査しているのか?もう2度と乗せないでくれ」
(こういったクレームが過去にある)
遊んで良いのはゲストの皆さんとガイドさんだけだ。
じゃあ、島にいる間、1回も遊んではだめなの?
そんなことはない。
あなたが一生懸命働いていれば、いつか優しい船長さんやガイドさんが関係者だけの船に誘ってくれる。
”遊ぶ”のはその時だ。
まあでも、群れ全体のご機嫌がよくて、7分も10分もイルカがいてくれるときは、調査員だって”遊ん”でも誰もとがめないと思うけど…
・イルカを追いかけない。
イルカがこちらを見つめてアイコンタクト、親しみをこめて自分の横を並走してくれた…
そう思ってるのはお前だけだ。
はたから見れば、水煙をあげてイルカを追いかけ、ゲストのそばに来てくれるはずだったイルカを遠く遠くまで持ち去っていってしまう、単なるど下手くそ、単なるど厄介だ。
イルカが背を見せたら決して追わない。
イルカをゲストたちから遠ざけるような馬鹿な真似はしない。
真ん中の白シャツが調査員だ。見てくれ:
良い位置で待っていれば、この一瞬だけでこういう動画がとれる。
この行動に「あいつがイルカを取った!」と文句を言うゲストがどこにいるだろう。
この映像に「こんな動画じゃ識別できないじゃないか!」なんていちゃもんをつける先輩調査員がどこにいるだろう。
「タダで乗っている女性が、自分のカメラの前に陣取って、近寄ってくるイルカを横取りして遠くに追いかけていった。それが何回もあった!こっちはお金を払って乗っているのに!さすがに協会に電話をさせてもらった。」
これも、私が実際に東海汽船の2等和室で教えてもらったクレーム。
ちなみにその方はクビになった。
・フィンキックで水面に泡を立てない。
フィンキックの泡=ど下手くその証拠ですよ。
上手なスイマーは水面に泡を立てない。
泡をたてるとどうなるか?まず視界が泡泡になり、後続部隊がイルカを見られなくなる。
お客さんのカメラのレンズに気泡がつき、撮りたかったイルカの写真はピンボケで台無し。
宿に帰ったお客さんに「ごめんだけどもう2度と以下略」って言われる。
これに関しては船長もガイドさんもめちゃくちゃ見ている。
フィンキックで泡を立てない子は「きちんと泳げる子」認定され、飲み会でほめられる。
「他の子は乗せられないけど、君なら安心して乗せられるよ」なんて言われちゃうかも!(言われないか…?)
・ツアーの行程に支障をきたさない。
約束の待ち合わせ時間に調査員があらわれず、優しいガイドさんと船長さんが現れない調査員を15分くらい待ってくれ、全体のツアーの時間がおしてしまったら?
調査員がイルカを追いかけて遠くまで行って、帰ってくるのに時間がかかり、次泳ぐはずだったイルカの群れを見失ってしまったら?
調査員がGPSを海上で落とし、その探索のせいで時間がおして、エントリー1回分の時間を失ってしまったら?
調査員の具合が悪くなり、もうちょっとこれは医療スタッフに任せないとヤバイってなって、そのせいでまだゲストが2エントリーしかしていないのに、港に帰ることになったら?
イルカスイムは今現在、1回1万かかる。
東海汽船までの旅費だって、東海汽船の乗船代だって、宿代だって、断じて安くない。
1年に1回の楽しみに、遠路はるばるイルカに会いにくるゲストだっている。
その貴重な機会が無料で便乗してくる学生のせいで台無しになってしまったら… ちょっとその気持ちを想像してみてほしい。
お客さんのツアーの行程に支障をきたしてはならない。
具合が悪いなら乗るな。泳ぐな。不安定な海上、ものを膝の上なんかに置いておくな。時間を守れ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?