石川啄木 好きな詩

心より今日は逃げ去れり

病ある獣のごとき

不平逃げ去れり


水晶の玉をよろこびもてあそぶ
わがこの心
何(なに)の心ぞ


遠方(をちかた)に電話の鈴(りん)の鳴るごとく
今日(けふ)も耳鳴る
かなしき日かな


うすみどり
飲めば身体が水のごと透きとほるてふ
薬はなきか


人間の使はぬ言葉
ひょつとして
われのみ知れるごくと思ふ日

人といふ
人のこころに一人づつ
囚人がいてうめくかなしさ


わがこころ
けふもひそかに泣かむとす
友みな己(おの)が道をあゆめり

ふるさとの訛なまりなつかし
停車場ていしゃばの人ごみの中に
そを聴ききにゆく

かにかくに 渋民村は 恋しかり おもひでの山
おもひでの川

馬鈴薯のうす紫の花に降る 雨を思へり都の雨に



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