有馬記念感想戦 武豊とルメール、名人同士の駆け引きの応手!


中山芝2500 良2:30.9 60.4-60.1(0.3H)

7.0-11.3-11.9-12.0-12.0-12.2-12.5-11.9-12.2-12.0-12.0-11.7-12.2

馬連ながし 6-1,2,5,8,12 500円
ワイドながし 6-1,2,5,8,12,13,16 700円
3連複BOX 1,6,8,12 400円

おもにタイトルホルダーが12.2-12.5-11.9を刻んで多少中弛みを作ったところで更に中弛みさせてL5地点で1.1秒差までリードを献上している。だから実際のレースはスロー進行と言える。

ルメールは戦前に残り600mで仕掛けるというわかる人にはわかる違和感のすごい発言をしていたが、つまりこういう事だったのです。
ルメールは有馬記念の時代を逆行させて90~00年代の直線競馬にしてしまった。そしてそれに応手できるのは武豊しかいなかった。なぜなら大半の騎手は経験していないから。
概ね瞬発戦と言えるが後ろから行く馬にはロングスパート要素もあったと思う。それはドウデュース&ジャスティンパレスとその他大勢での上がりの差という所に出ている。あの2頭だけが真っ当にステイヤーだった。

ちなみに映像と資料から逆算したラスト5ハロン推定個別ラップは
スターズオンアース 12.2-12.0-11.8-11.0-12.0
ドウデュース 12.0-11.6-11.4-11.0-11.9
この辺りになってそう。

2着 16 スターズオンアース ルメール

この競馬を理解するには先にルメールの狙いについて語る必要があるだろう。端的に言ってしまうとルメールは珍しく「弱者の競馬」をしたと言えるね。ワンチャンスを通しに行ったというとわかりやすいかな。
詳しいメカニズムはいずれ説明するとしてスローペースでの瞬発戦では先行絶対有利の法則が働く。つまり前にいればいるほどに優位がある。これだけならよくある話で片付くけど問題なのは舞台が有馬記念で、前方にタイトルホルダーの存在がある事だ。

ルメールがやろうとした競馬ってのはつまり「自分は逃げを捕捉できる」けど「後ろは逃げを捕捉できない」針の穴に糸を通すような絶妙な間合いの管理なのだがそれにはタイトルホルダーとコース形態が課題だったのだ。

まず速い逃げ馬に対する解答はその相手より速く走る事のみ。そしてリードを与え過ぎれば帳尻が破綻して直線で追いつけなくなる。その結果がタイトルホルダーが圧勝した21’菊花賞だね。
そしてタイトルホルダーはパンサラッサよりも危険な存在と言えるね。なぜなら距離の壁を気にせずタイムトライアルを敢行できるから。2000m帯以上では既にパンサラッサより脅威度は高く22’秋天の条件なら逃げ切りも狙える限界能力を有している。
この場合タイトルホルダーを追いかけるのが定跡となる。タイトルホルダーを放置してペースを落としすぎればいずれ追いつけないリードを与えてしまい21’菊花賞を再現してしまうから。そうやって真っ向勝負した結果が21’有馬記念だった。
もしかしたらタイトルホルダー@和生がJCと同じくスローペースを選択する事に期待していたかもしれない。本譜はそうならなかったけどね。

ここからが本題なのだけどルメールはそれでもペースダウンした。後続にタイトルホルダーを捕捉できないリスクを押し付けるためにね。これはリスクが大きすぎて普段のルメールならまずやらない。ルメールが得意とするのは鮮やかな詰め筋で一手ずつ負け筋を潰していく「王者の競馬」であるからだね。
そしてルメールは有馬記念では定跡であるバックストレッチでのロングスパートも封印した。これも3コーナーで外から馬が殺到しても手綱をブレーキング操作していたから意図的なものだろう。
当然これもタイトルホルダーに逃げ切りの可能性を与える行為に他ならないし、有馬のコース形態を考えても普通ならバックストレッチのL5地点で仕掛けるのが安定択だ。

ルメールはなぜここまでやって危険なレースメイクをしてきたのか。
つまりルメールには自信がなかったんだよ。スターズでタイトルホルダーに着いて行く競馬も、L5からのロングスパートでも勝ち切る自信がなかった。だから奇策を持ちこんできた。
普通の騎手だったら馬を信じて負けました、であったり安易な奇策で大チョンボをかますところだがルメールはクレバーでクレイジーだ。なんとタイトルホルダーをギリギリ捕捉できる射程距離を計算して競馬していたのだ。もちろんスターズがタイトルホルダーより速い時計を出せる事は当然の前提条件ではあったが。
そもそも何が起こったのかすらゴール後10分くらい僕にも理解できなかったくらい意味がわからない。しかも恐ろしいのは武豊がいなければ完璧に決まっていたという事だよ。武豊以外は完全にルメールの術中にハマってた。枠番がどうとかそういうチンケな次元の騎乗ではないのよ。
だいたい、これはタイトルホルダーがルメールの予想より少しでも遅いペースで走られていた場合その時点で逃げ切り濃厚になってしまう危険性のあるレースプランだし。

1着 5 ドウデュース 武豊

まさしく武インパクト豊リーチのごとく人馬一体タケインパクトユタカなレースだった(アレも僅差の決着だし)。
そうだなー、結局のところ99’有馬記念を経験していたかどうかだったのかな。ユタカがスペシャルウィークでウイニングラン詐欺しちゃったやつね。

凱旋門賞でも言及したパターンだけど前の仕掛けが遅れるケースでは外から動いたもん勝ちになるっていうアレですね。
昔の中山では直線競馬vs外捲りの構図が多発していてその最たる例がグラスペ99’有馬だと思ってる。
あれを経験している騎手が今はもう少なくなってしまったというのも今回の決着の肝かな。なぜなら近年の中山は仕掛けのポイントが3コーナーからもっと手前に移動して直線競馬が消滅してしまったから。11’有馬ですらもう少し動き出しが早かったもん。

ドウデュースとジャスティンパレスの差を挙げるなら武豊と武史の差であるし、2人の差を挙げるのであればそれは99’有馬を経験しているかどうかだろう。武史は98年生まれなんだから当然の話である。あれ経験してるの福永と和田より上の世代なんだからそりゃ少ないか。ざっくり言うなら経験値の差ってやつかな。

あと朝日杯から有馬勝つ馬ってすごく平成のノスタルジーを感じる。調べたら1つ前の達成者がドリームジャーニーでその前がグラスワンダーだから本当に居ない。
いい馬になったと思うよ本当に。ただし何でもできるけど特化した才能を持ってる訳ではないというのは踏まえておきたい。

3着 4 タイトルホルダー 横山和生

特に何も言うことなく良かったです。ラストランに相応しく自分の競馬を徹して能力を出し切ったし、ルメールがアシストしてくれた部分もある。
惜しむらくはJCでこの競馬ができなかった事。有馬ではタイトルホルダーでは限界があるがJCならまだ勝ち目があった。

4着 10 ジャスティンパレス 横山武史

思ったより強かった。去年の有馬は能力を発揮できてなかったという事か。ただ3角の時点で勝負が終わってしまっていた。メジロブライトの再来になってしまった。自分から届く位置に切り込んで行った武豊との差が出たな〜。
馬は強かったから来年の有馬に出るなら多分買います。

5着 2 シャフリヤール 松山

6着 13 タスティエーラ ムーア

12着 15 スルーセブンシーズ 池添

13着 8 ライラック 戸崎圭太

ただの中距離馬だったか。ライラックは意外な結果だった。

8着 1 ソールオリエンス 川田

これはちょっとショックだった。イクイノックスの延長線上に見るならここで通用するはずだったが、冷静になってみれば菊花賞が弱すぎた。ここを通用させるためにはタスティエーラには先着してなければいけなかったのに自信満々に対抗打ってしまったのは痛恨のミステイク。
キタサンからイクイノックスほど綺麗に伸びるステイヤーは出ないのかもしれない。スタミナのないジャスティンパレスみたいなもんかな。

15着 6 ディープボンド マーカンド

まず馬が頑張れてなかったのはあるが、そもそも展開が最悪すぎて仕方ない。ただしいつも通り先行できれば勝算はあったかな。騎手や脚質をコロコロ変えたりして迷走してる感は否めない。この馬は和田先生で先行させていれば十分です。それで何度も2着になるのは運命力の問題で人間にどうこうできない部分が殆ど。
強いていうならポジションも仕掛けのポイントも強気に攻めたほうが強いだろう。武豊とか案外いいんじゃない?


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