人生とは-

体験修行

突然、「修行をするように」と指示されても、どういう内容か何も確認できないまま修行代を振り込み、数日後には新幹線に乗って会場へ向かっていたが、不安よりも期待の方が勝っていた記憶がある。問題は体の不自由さをどう補うか?移動とトイレの問題さえ解決できればなんとかなるだろうというお気楽さ(?)はいつものこと。

一日目の会場は建物の2階。夫が負ぶって上げて教室へ入れてくれた。あとは指導員に任せて帰るしかない。
「がんばるんだよ」「うん、わかった。心配しないでね」「安心して、気をつけて帰ってね」とひと言、ふた言、言葉を交わし見送った。

教室には数十人いただろうか。私たちは特訓生と呼ばれた。
初めに修行内容やスケジュール等の説明があると思ったが何もない。言われたことは「私語禁止」「自分を出すな」「黙ってやる」が基本。そして壁に貼られていた「七観行」という七つの言葉を全員で声に出して唱えること。

    七観行(毎日のことばの行)   
    一、 健康あふれた楽しい毎日です。   
    二、  家族全員がゆたかで明るい毎日です。     
    三、 希望にみちあふれた繫栄一筋の毎日です。
    四、よろこびがいっぱいの毎日です。
    五、感謝に満ちた幸せな毎日です。
    六、 いつもたのしく三法行をやらせていただく毎日です。
    七、親切あふれた生かしあい、ゆるしあう毎日です。

これが特訓中に繰り返し繰り返し行われた。私語など出るはずもなく徹底していた。そして「最高ですか」「最高です」の繰り返し。何があってもマイナスを吐いてはいけない。
そして、その部屋の床に座り、いわゆる写経(確か般若心経のような経文の上をなぞったように記憶している)。
夜は、寝室があるわけでもなく、その部屋に雑魚寝状態。
そして、二日目以降はマイクロバスに乗せられて、静岡市内の駅前広場などで通行人の方たちに「最高ですか」と声をかけたり、前日に練習した写経を書いてもらったりした。今にして思えばそれは本番に向けての度胸試しのようなもので、知らず知らずのうちに慣らされていったのだと思う。宿舎に帰っても七観行を唱えたり、二人で向き合い、「最高ですか」「最高です」と声を掛け合って「源し合い」という行為を指示通り繰り返し行った。

そして、いよいよ本番。その日は天気も良く修行日和?
マイクロバスへ乗せられて、車内でも七観行を唱えながら東名高速を東京へ向けて「いざ、出陣!」。向かう先は?
高速を下りてどのように行ったかは忘れたが、渋谷駅前のスクランブル交差点付近が行場。それぞれが道端に座り「土下座の行」。誰に何をされても一切何も言わず土下座をする。
私は車椅子なのでそのまま頭を下げていた。そして通行人の人たちに「すみません。今、私はある修行をしていまして、この経文の文字をみなさんになぞって書いていただくことをお願いしています。何文字でも構いませんので協力してくださいませんか。よろしくお願いします。」などと言って、全て書き上げたら完成。
渋谷は終電近くになると駅に向かって人が多くなるが、それを過ぎると人気が少なくなる。仲間たちはどこかへ移動したようだったが近くで塾長が見守ってくれているのが感じられた。そして、「ああ、これだ。・・・うん、これだ。」と閃くものがあった。そして、空を見上げると、煌々と照らして見守ってくれている月がいた。「おお、月さま、ありがとうございます。」と。元々、月が大好きなので見守られ、繋がっている感覚が強かった。
そして、朝方になると集合場所の宮下公園へと指導員が車椅子を押してくれた。少し小高いところで、眼下左側は山手線が走っていて、何か現実社会に戻れる喜びを感じた。
そして、来たときと同じように東名高速に乗り新富士へと帰って行った。バスの中では当然七観行と「みなさん、最高ですかー」「最高です!」の繰り返し。

そして、道場へ戻るといよいよ判定会。そんなものがあるととは知らなかったが、頭がとれたかどうかを判定するのだ。
修行開始日から初めて福永氏が登場する。そしてお決まりの言葉「みなさん、最高ですかー」と、マイクをもって大きな声で塾生に質問する。塾生は「最高でーす。」と返す。
しかし、そう簡単には合格とはならず、何度も何度も源かし合いを繰り返す。

そして、ようやく合格すると、今度はひとりひとり「天声」を聞くことになる。
その頃、夫が迎えに来てくれて待っている姿が見えた。
私は地下にある「天声の間」で天声を聞くと、とにかく外へ出るべく夫に背負われて地上へ出た。あとのことはよく覚えていないが、とにかく家に帰ったら72時間以内に「天声」に従って「天納金」を用意しなければならなかった。

が、我が家がとても懐かしく感じられて、幸福感に満たされて疲れも忘れて夫婦水入らずでお茶を味わった。

                                                            ーーーーつづくーーー


私を生かし活かしてくださりありがとうございます。
心より感謝申し上げます。




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