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透明にひとり

どうして私はひとりなの
みんなに望まれて生まれて
産声あげたその日から
確かな足取りをたどって
そのまま歩けるはずだった
なのに私は今ひとり
あきれるほどにただひとり
みんなは私に目もくれず
私を通り抜けてゆく
みんなはそれぞれお似合いの
カラフルな服を身にまとい
私は私としたり顔
なのに私は透明の
服をまとって今ひとり
透けた身体を見つめます
私の身体の透明度
それはひたすら清らかで
あらゆるものを透過する
教科書 えんぴつ ダイアリー
制服 自転車 通学路
恋人 履歴書 ワンルーム
未来や希望や夢さえも
そっと静かに透過する
だから私は願うのです
誰か私をつれだして
光の中へとつれだして
天使のうたを聴かせてよ
そしたら私は透明な
私を今すぐ脱ぎ去って
自由に空を飛べるのに
だけどそんなの叶わない
世界はいつも冷酷で
思い通りに動かない
それでも私は願うのです
震えて泣いて願うのです
心静かにただひとり
星に向かって願うのです
いつかひとりにならぬよう
そしてひとりになれるよう

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