”太陽” 日高零奈の脆さとはかなさ

日高零奈役に蔀 祐佳さんを抜擢した電音部は最高だという話。

※ハラジュクの話書いた後にワッとなってしたためたものなので、要素の拾い漏れや解釈違いがあるかもしれません。
※ノベル第2部の内容に触れています。ネタバレ注意。
※ノベル読んでくれ! 頼む!


日高零奈という女の子

零奈の第一印象

・17歳
・オレンジカラー
・ショートカット
・快活
・コミュ強
・天才的なDJ能力
・幼少期に親が離婚
・生き別れの姉がいる

う~ん、こうして並べてみると、まぎれもない主人公属性。ノベル第1部の「あれ、またなんかやっちゃいました?」感とか、火凛に物怖じしながらも「寂しいんですね」と言い放つところとか、完全に主人公(強者)でしたよね。

キャラデザからにじみ出る明るい雰囲気や、蔀さんのかわいらしくもしっかりとした声も相まって、明るく芯が太い”太陽”のような子である印象が強いです。実際、”うさぎ”にとっては”太陽”だったわけです。

零奈の二面性

しかしながら、ノベルを読んでいる皆さんはわかると思いますが、姉からの拒絶や両親の離婚など、過去のトラウマから非常に脆い精神性をしていて、周りの人の感情に過敏であることも描かれています。第2部において、ハラジュクが襲撃された報を聞いたときや、海月と話すときなどにもそれは現れています。

周りの感情に敏感、という点は、零奈のDJプレイにも表れています。零奈の「みんなが楽しいと思うようにプレイする」スタイルは、彼女の性格の良さでもあり、聴衆の感情を過度に察知しているとも言えます。火凛の「自分のやりたいようにやったことが聴衆に刺さる」プレイとは大違いです。

相手の感情を読み取ろうとする零奈は、感情の読めない相手が苦手です。ハラジュクを襲撃した”犯人”や、感情をなくした紫杏、モブ子などは、零奈であっても戸惑いと不安を覚えていました。
海月に対する感情の読めなさは、過去のトラウマからくる苦手意識や、姉妹として仲の良かった時期とのギャップ、あるいは姉妹として近すぎるが故のものなのかもしれません。
迷子の纏や唐揚げ食べてるときの纏にそれほど戸惑いを覚えていなかったのは、あれもあれで纏の本心であったから、だといいなぁ……と思います。

第1部の強者感に対し、第2部では零奈の不安定さが際立ちます。最初はハラジュクが心配という気持ちが急いて、衝動的に行動に出ているように見えます。もちろんそれはその通りなのだと思いますが、その後のロッポンギやモブ子のくだりなどは、明らかに冷静さを欠いた行動に出ています。

零奈は感情には感情で返すタイプですが、普段は比較的冷静さを保っていて、一歩引いたような立ち位置でいることも多いです。女の子を前にした和音の方がよっぽど冷静じゃないし、ふたばの方がよっぽどバーサーカーです。
それなのに、第2部の零奈が冷静さを欠いているのは、相手の感情がわからない、ということをひどく恐れているが故なのではないかと思います。

零奈の脆さ、不安定さからは、第一印象とはかけ離れたはかなさすら感じます。ふたばや美々兎なんかより、よっぽど脆くはかない存在なのではないかとさえ思います。

振り返ると、第1部では和音とふたばの内面の成長は描かれていましたが、零奈に関しては十分描かれたとはいえません。姉妹間の因縁の解決と和解は描かれましたが、海月が過去の悲しみに区切りをつけ前進したのに対し、零奈はあくまでそれを手助けしただけとも取れます。
もちろん、その後の火凛との対決で、聴衆に合わせたDJではなく、自分の感情と本能のままのプレイをやってのけたわけですが……。ブレイクスルーがあったわけではなく、火凛に引き上げられる形でもともと持っていた能力を発揮しただけなのではないでしょうか。

ハラジュクエリミや3rdLIVEで表現された美々兎、雛、紫杏の成長と対比しても、零奈はとても脆くはかない女の子に感じます。

ノベル12話では、いよいよ零奈と纏の真の邂逅が描かれましたが、あの違法DJバトルでは零奈は勝ち目がなさそうだし、魂の破壊も美々兎以上にひどいものになりそうなんですよね……。どうなるんだホント。

楽曲について

第1部の零奈の曲(Favorite days、しあわせの魔法、夜明けのアンセム)は、大なり小なり海月への想いが歌われています。それほどまでに海月への想いが強いということでしょう。

第2部の零奈の曲はStarchild。”いつか欠かした ピースはそのままで”という歌い出し、今になって不穏に感じますね……。

”ピース”はノベル第1部の零奈vs海月の際に登場する言葉です。零奈の想いを載せたDJプレイを聴いて、ここに足りない”ピース”は自分だ、と海月が歌い出すシーンです。

また、”ピース”という言葉は、Blank Paperの中でも出てきます。

”知らぬ間に抜け落ちてたピース”
”欠けたものを探してたけど”
”代わりなんかじゃなく新しい”
”何かを見つけてみたいの”

零奈歌唱パートなので、ここは零奈のことととらえていいでしょう。
零奈の歌う”ピース”は”知らぬ間に抜け落ちてた”のですが、姉妹の仲たがいの原因となった海月の嫉妬心や劣等感は零奈にはわからなかった部分でなので、”知らぬ間に抜け落ちてた”のかもしれません。
後半部分は、海月の面影ばかりを探すんじゃなく、アキバエリアの二人という新しい友達を見つけた、というノベル序盤の展開の踏襲ととらえると、それほど違和感はありません。

これに対し、Starchildの”いつか欠かした ピースはそのままで”はどうにも不穏です。前述の通り、欠けたピースを埋めるのではなく、新しい何かを見つけてみたいと言っていた零奈が、再びピースに言及するのは意味があるはずです。一度は仲直りしたと思った海月の厳しい態度や、彼女が音楽を失ったという事件に対する零奈の動揺を表しているのでしょうか。

”私はいつになれば 体をこの街の風に預けて”
”誰かになれるんだろう”

逆に言えば、零奈は何者にもなれないという葛藤に苛まれているということです。等身大の少女の悩みといえばそうですが、零奈の内に秘めた脆さやはかなさを反映しているともとれます。

”キミが誰かの背中見つめてるとき”
”キミも誰かのポラリス”

BOOGEY VOXXパートは、キャラを特定しない誰かのセリフの代弁であると思っています。
ポラリスとは北極星のこと。北極星は地球の地軸の延長線上にあり、地球のどこから見ても北の方角に見えます。そのため、GPSなどがなかった時代は、北極星を定位に使って航海を行ったわけです。つまりポラリスは道しるべなわけです。
キミ=零奈の見つめる”誰かの背中”は今のところわかりませんが、後の”誰か”はきっと美々兎のこと、あるいは和音やふたばのことかもしれません。いずれにせよ、誰かになろうとしなくても、そのままのキミを見ている誰かがいるんだよ、ということを伝えたい。

”教えてスターチャイルド”
”いつか 閉じこんだあの笑顔さえ”
”解き放てるような”

3rdの文脈からすれば”閉じこんだあの笑顔”は美々兎のことと取れますが、閉じこんだ笑顔をしていそうな人間は他にもいますよね……。展開を経て意味合いが変わるときが来るのでしょうか。

”伝えてスターチャイルド”
”いつか この雨が止む空に光る”
”星に手を伸ばすだろう”

ここ、”太陽の子”(非公式公式)であるところの零奈が星に手を伸ばすと言っているんですよね。私はこの”星”が、”想いが産んだ星”であり、”新たな光”であり、”誰かの背中”であればいいなと思います。

あるいは、キービジュがまさにそれなのかも。零奈と美々兎の手の間にあるのは元凶ことミュージッククリスタルにも見えますが、星にも見えます。
最初、零奈と美々兎の想いを表しているのかと思っていましたが……美々兎の表情は凛々しく、零奈は驚いたような表情をしているので「ハラジュクの3人の想いで産まれた”星”に零奈が手を伸ばす」構図ととらえたほうが自然な気がします。美々兎が完全復活を遂げ、零奈に向けて星を差し出しているように、私は見えました。

”wanna be a Starchild"

誰かになろうとしていた零奈が、最後は”wanna be a Starchild"と歌っています。やっぱり太陽の子か? という冗談は意外と冗談ではないのかも。
自分の想いは自分で伝える零奈が、”教えて”、”伝えて”と、ある意味”スターチャイルド”に丸投げしていたわけですが、その”Starchild”になりたいと歌って締めるのは、少しの前向きさが感じられます。一方でCiさんのコーラスでは"You are a Starchild"と繰り返されているので、実際は零奈は既に誰かにとっての星なのでしょう。

”私には何の力もないのかなって、そう思ってた”
”でも気づいたんだ”
”音楽が私と大切な人をつないでくれる そう信じてるから”

3rdLIVEのSync My Lightsでのセリフは、Starchildでの葛藤の末に行きついた想いなのかな。

蔀さんとの親和性

冒頭に戻りますが、零奈としどみんの親和性ってめっちゃ高いと思うんですよ。

ご本人もおっしゃっていましたが、しどみんって地声は結構低いんですよね。かつ、しっかり芯のある声をしておられます。もちろん、控室でほしとドタバタ走り回って遊ぶ程度に元気いっぱいでもあります。

それなのに、歌声やパフォーマンスにそこはかとないはかなさがある。2ndのしあわせの魔法、3rdのStarchildなんかはそれが際立っていましたが、零奈の脆さ、不安定さからくるはかなさを、とてもよく表現されているように感じます。

プロジェクト開始当初や1stLIVEなんかは、新人ゆえの初々しさや緊張がむしろいい味を出していたように感じますが、3rdのしどみんは表現力がバケモン過ぎて……。

Sync My Lightsの”いつまでもそばで 見失わないで光を"の部分、はかなさと秘めた小さな決意のようなものを感じて、現地で涙が出そうになりました(こいついつも泣いてる)。

あと、3rdLIVE DAY2のシンデレラ・マジック・ステージのカバー、あれもすごかった。この曲はふたばの曲ですが、しどみんの良きはかなさがめちゃくちゃよく出ていました。現地でウワーッ!!! ってなってたオタクは私です。


やや尻切れ感がありますが、日高零奈と蔀さんについてのお話でした。
ふと「零奈っていいよな」と思いワッと書いたので、解釈違いや拾い切れていない要素があるかもしれませんが、ご了承ください。



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