懸命に生きる人間のドラマ

「季節のない街」を観た。原作山本周五郎の小説を宮藤官九郎が監督・脚本で作成された、ディズニープラス独占配信のドラマである。
舞台は仮設住宅。「ナニ」(東日本大震災を想起させる)によって住居を奪われた人々が仮設住宅で暮らしており、その仮設住宅に主人公の田中新助が引っ越してくる。新助はクライアントから依頼を受けて仮設住宅の住人達の暮らしを報告する仕事をしている。
仮設住宅に住む人々は当然、裕福な暮らしなどできず、日々を過ごすことで精いっぱいであるが、そんな中、立ち退きの話が出てくるが、、といったストーリーとなっている。

電車が大好きな六ちゃんやホームレスの親子、元アイドルとファンだった夫と5人の子供の大家族など、個性豊かなキャラクターが多く登場し、それぞれのエピソードが一話ないしは二話で完結する。中でもタツヤの話がお気に入りだ。彼は母親と弟・妹を養っており、いずれは仮設住宅を出て暮らしたい想いがあった。その資金として貯金もしていたが、ある日突然、昔出ていった半グレの兄貴が訪ねてくる。そしてタツヤが大切にしていた背広を勝手に持って行ったり、母親に金をたかるなど、ろくでもない人間だった。それでも、それだからこそ、母親にとって出来の悪い息子が可愛いのだろう、母は金を渡し続ける。そして兄貴はある事件に巻き込まれ、その際に母親はタツヤに感情的になって厳しい言葉を投げかける。それを聞いたタツヤは絶望の淵に追いやられてしまう。
お互いの想いがすれ違い、死を決心したが、それでも生きようとするタツヤの姿勢に心を動かされた。タツヤだけではない。この仮設住宅に住む人々はどこかおかしくて貧しくて、それでも懸命に生きる姿に感動を覚えた。

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