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戦略の創造学: ドラッカーで気づき、デザイン思考で創造し、ポーターで戦略を実行する

戦略の創造学: ドラッカーで気づき、デザイン思考で創造し、ポーターで戦略を実行する

本書の概要
本書は、欧米のビジネススクールで初めての日本人学長となった山脇秀樹氏が、イノベーションのための戦略論を解説したものです。著者は、経済学の博士号を取得した後、産業組織論と国際経済学の研究と教育に従事し、1995年に欧州から米国に移ってからは、競争戦略論にも領域を広げました。その後、カリフォルニア州立大学ロングビーチ校の経営大学院の学長に就任し、現在はピーター・ドラッカー経営大学院の学長を務めています。

著者は、学生から「新しい事業機会は、どうやって見つけるのですか?」という質問を受けたことがきっかけで、デザイン思考に興味を持ち、アートセンター・カレッジ・オブ・デザインを訪れました。そこで出会ったデザイン思考の概念とエッセンスを利用して、新しい企業モデルを構築する方法論を本書で紹介しています。

本書のモデルは、デザイン思考、ピーター・ドラッカーのマネジメント、そして競争戦略論(有名なものはマイケル・ポーターの競争戦略論やチャン・キムらのブルー・オーシャン戦略)の3つの思考から成り立っています。これらは、時と分野を隔てて構築されたものですが、そのそれぞれの本質を紡ぐと、糸になり、その糸を織ると普遍的な戦略モデルのキャンバスとなると著者は説明します。そして、3つの思考を組み合わせたキャンバスの上に、新しい世界観と意味を創り、それに基づいた目的とビジョンを達成するための戦略を構築していきます。

## 本書の内容

本書は、以下の12章から構成されています。

- 第1章 なぜ、新しいモデルが必要なのか
- 第2章 ビジネスの目的・使命・ビジョン
- 第3章 観察から洞察へ
- 第4章 顧客にとって新しい「意味」を創る
- 第5章 新しい意味を創る「予備的分析」
- 第6章 共感を生むためのツール「デザイン思考」
- 第7章 世界観と意味
- 第8章 新しい戦略モデルを構築する
- 第9章 戦略構築の土台
- 第10章 どのように目的を達成するのか
- 第11章 どこで目的を達成するのか
- 第12章 共感と未来のマネジメント

各章の要約は以下の通りです。

### 第1章 なぜ、新しいモデルが必要なのか

この章では、日本が誇る「課題解決のための発想」とデザイン思考の違いや、国際市場における日本企業の栄枯衰退と企業・競争戦略の関係、目的・ビジョンとドラッカーのマネジメントの重要性について説明しています。著者は、日本企業がイノベーションを起こすためには、技術革新だけでなく、顧客のニーズや感情に寄り添い、新しい意味を創造することが必要だと主張しています。

### 第2章 ビジネスの目的・使命・ビジョン

この章では、シュンペーターとドラッカーのイノベーション論や、政治・経済地政学の変化、GenZと技術変化の影響について解説しています。著者は、ビジネスの目的・使命・ビジョンを明確にすることが、イノベーションの源泉となると述べています。また、ビジョンは、自分の世界観や価値観に基づいて、将来のシナリオを描くことだと定義しています。

### 第3章 観察から洞察へ

この章では、観察と洞察の違いや、不調和や認識の変化を見つける方法について説明しています。著者は、観察は客観的な事実を記録することであり、洞察は観察した事実に対して、自分の感情や思考を反映させることだと言っています。また、洞察は、新しい機会や価値を見出すための重要なステップだと強調しています。

### 第4章 顧客にとって新しい「意味」を創る

この章では、購買決定の瞬間を考えることで見える「意味」や、日本を象徴するような製品・企業が創り出した「意味」について紹介しています。著者は、意味とは、顧客が自分のニーズや感情に応えるものとして、製品やサービスに与える価値の評価だと定義しています。また、意味を創るためには、顧客の心の動きや感情移入を理解することが必要だと説明しています。

### 第5章 新しい意味を創る「予備的分析」

この章では、新しい意味を創るための「予備的分析」の方法について解説しています。著者は、予備的分析とは、過去・現在・未来のデータや情報を収集し、分析し、整理することだ唱えている

第6章 共感を生むためのツール「デザイン思考」

この章では、デザイン思考とは何かや、デザイン思考のプロセスやツールについて紹介しています。著者は、デザイン思考とは、顧客のニーズや感情に寄り添い、共感を生むような製品やサービスを創造するための思考法だと説明しています。また、デザイン思考のプロセスは、エンパシー(共感)、定義、発想、試作、テストの5つのステップからなり、それぞれに適したツールがあると紹介しています。例えば、カスタマー・ジャーニー・マッピングは、顧客の心の動きをとらえるためのツールであり、マインド・マッピングは、考えや感情を理解し共感を深めるためのツールであると説明しています。

### 第7章 世界観と意味

この章では、ビジョンとは何かや、世界観と意味の関係について解説しています。著者は、ビジョンとは、自分の世界観や価値観に基づいて、将来のシナリオを描くことだと定義しています。また、世界観とは、自分がどのように世界を見ているかという視点や態度であり、意味とは、顧客が自分のニーズや感情に応えるものとして、製品やサービスに与える価値の評価だと定義しています。そして、世界観と意味は相互に影響し合い、新しい価値を創造するためには、自分の世界観を明確にし、顧客の感情移入を引き出すことが必要だと述べています。

### 第8章 新しい戦略モデルを構築する

この章では、戦略とは何かや、新しい戦略モデルを構築するための要素について説明しています。著者は、戦略とは、目的やビジョンを達成するために、どのように・どこで・誰と・何をするかということを決めることだと定義しています。また、新しい戦略モデルを構築するためには、以下の4つの要素が必要だと述べています。

- 規模の経済性:規模が大きくなるほど、単位あたりのコストが低くなること。
- サンクコスト:過去に投資したが、回収できないコストのこと。
- ポーターのファイブ・フォース分析:業界の競争環境を分析するためのツールであり、競合他社、新規参入者、代替品、顧客、仕入先の5つの要因からなる。
- 創られた価値の成分:顧客にとっての価値は、機能的価値、経済的価値、心理的価値、社会的価値の4つの成分からなるという考え方。

これらの要素を理解し、組み合わせることで、新しい戦略モデルを構築することができると著者は説明しています。

第9章 戦略構築の土台

この章では、戦略構築の土台となる要素について解説しています。著者は、戦略構築の土台として、以下の3つの要素を挙げています。

- 規模の経済性:規模が大きくなるほど、単位あたりのコストが低くなること。
- サンクコスト:過去に投資したが、回収できないコストのこと。
- ポーターのファイブ・フォース分析:業界の競争環境を分析するためのツールであり、競合他社、新規参入者、代替品、顧客、仕入先の5つの要因からなる。

これらの要素を理解し、活用することで、自社の強みや弱み、機会や脅威を把握し、競争優位を築くことができると著者は説明しています。

### 第10章 どのように目的を達成するのか

この章では、目的やビジョンを達成するために、どのように行動するかについて説明しています。著者は、目的やビジョンを達成するためには、以下の2つの要素が必要だと述べています。

- 共感と未来の戦略:顧客のニーズや感情に寄り添い、共感を生むような製品やサービスを創造すること。また、利益をイノベーションに投資し、将来に備えること。
- ビジネスモデル:自社の価値提供の仕組みや収益の仕組みを明確にすること。ビジネスモデルは、模型や図式として表現することができる。

これらの要素を組み合わせることで、目的やビジョンを達成するための具体的な計画を立てることができると著者は説明しています。

第11章 どこで目的を達成するのか

この章では、目的やビジョンを達成するために、どこで行動するかについて説明しています。著者は、目的やビジョンを達成するためには、以下の2つの要素が必要だと述べています。

- どこで目的を達成するのか【プロセス】:自社の製品やサービスの価値を高めるために、どのようなプロセスを設計するかについて考えること。プロセスは、製品やサービスの開発、生産、販売、配送、アフターサービスなどを含む。
- 消費者が見るもの:自社の製品やサービスの価値を伝えるために、どのようなメッセージやストーリーを作るかについて考えること。消費者が見るものは、製品やサービスの機能や特徴だけでなく、世界観や意味も含む。

これらの要素を組み合わせることで、目的やビジョンを達成するための具体的な行動を決めることができると著者は説明しています。

第12章 共感と未来のマネジメント

この章では、共感と未来のマネジメントについて解説しています。著者は、共感と未来のマネジメントとは、以下の2つの意味を持つと述べています。

- デザイン思考を企業のシステム優位性に結びつけること:デザイン思考は、個人やチームの思考法として有効であるが、それだけでは不十分である。デザイン思考を企業全体のシステムとして機能させるためには、組織や文化、プロセス、リソースなどの要素を整える必要がある。
- 企業の内部と外部、そして未来との整合性を保つこと:企業は、自社の目的やビジョンに基づいて、内部のステークホルダー(従業員や株主など)と外部のステークホルダー(顧客や社会など)のニーズや期待に応える必要がある。また、現在だけでなく、未来の変化にも対応できるように、イノベーションを継続的に起こす必要がある。

これらの意味を理解し、実践することで、共感と未来のマネジメントを実現することができると著者は説明しています。

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