週刊東洋経済 2024/1/6-13年始合併特大号(EVシフト 絶頂と絶望)
週刊東洋経済 2024/1/6-13年始合併特大号(EVシフト 絶頂と絶望)
第1特集 日本勢の巻き返しなるか EVシフト 絶頂と絶望
環境規制の強化や消費者の意識変化により、電気自動車(EV)の普及が加速している。しかし、EVシフトには多くの課題がある。資源調達や製造の面で保護主義の影響を受けることや、販売市場の停滞や飽和を見据えることなどだ。米テスラと中国BYDがEV市場を席巻する中、周回遅れの日本勢はどう動くべきか。本特集では、中国、米国、欧州の3大市場の最前線や、日本の自動車メーカーの戦略を分析する。
### [プロローグ]EV市場に入り交じる 活況と混迷
EVはエンジン車に比べて燃費が良く、CO2排出量が少ないというメリットがある。しかし、EVは高価であり、充電インフラの整備も不十分である。そのため、消費者にとってEVは使いにくい存在である。実際、アメリカでは政府による多額の購入補助金があっても、EVの在庫が積み上がっている。さらに、各国の保護主義的な政策は、EVのサプライチェーンを囲い込むことで、自動車メーカーにとって調達や製造の難題を生むことになる。このように、EVシフトには活況と混迷が入り交じっている。
### イチからわかるEVの基本 BEV、PHEV…、種類や仕組みを徹底解説
EVには、バッテリーだけで走るBEV(バッテリーEV)、エンジンとバッテリーの両方で走るPHEV(プラグインハイブリッドEV)、燃料電池で発電してバッテリーで走るFCEV(燃料電池EV)など、さまざまな種類がある。それぞれにメリットとデメリットがあり、市場のニーズや環境に応じて選択される。本記事では、EVの種類や仕組み、性能やコストなどを詳しく解説する。
### Part1 EVシフト 加速と揺り戻し
EVシフトは、各国の政策や市場の動向によって加速したり、揺り戻したりしている。特に、米国と中国はEVの先進国として、市場の拡大や技術の革新に力を入れている。しかし、EVの販売は、政府の補助金や規制の有無に大きく左右されるため、安定的な成長は見込めない。欧州では、EVの普及に向けて充電インフラの整備や環境規制の強化を進めているが、エンジン車の需要も依然として高い。本記事では、米国、中国、欧州の3大市場のEVシフトの現状と展望を紹介する。
### 自動車事業参入20年で迎えた好機 テスラとBYDがEV市場席巻
EV市場のリーダーとして、米国のテスラと中国のBYDが際立っている。テスラは、高性能で高級なEVを開発し、世界中で人気を博している。また、自動運転やソフトウェアなどの分野でも革新的な技術を持っている。BYDは、安価で高品質なEVを量産し、中国市場を中心に販売を伸ばしている。また、電池やモーターなどの主要部品を自社で生産することで、コスト競争力を高めている。本記事では、テスラとBYDのEV事業の戦略と成果を分析する。
### Part2 巻き返し狙う日本勢
EVシフトに遅れをとっている日本勢は、巻き返しを狙っている。トヨタは、当面はハイブリッド車(HV)で海外勢に対抗しつつ、EVの開発や投資を加速させている。ホンダは、EV事業の離陸に向けて、パートナーシップや新技術の開発などを模索している。日産は、EVの先駆者としての強みを生かしつつ、収益力の向上を図っている。本記事では、日本の自動車メーカーのEVシフトの戦略と課題を探る。
## 第2特集 爆騰5大商社 CFOたちの遠謀
資源市況の浮き沈みを乗り越えて、総合商社はなぜいま絶頂期を迎えたのか。その背景には、CFO(最高財務責任者)たちの遠謀がある。CFOたちは、資本効率の改善や財務基盤の強化、デジタル化やESGへの取り組みなど、長期的な視点で経営を支えてきた。本特集では、5大商社のCFOにインタビューし、彼らの思考と行動を紐解く。
### 三井物産 CFO 高橋和夫
三井物産のCFOである高橋和夫氏は、資本効率の改善に力を入れている。同社は、ROE(自己資本利益率)を10%以上に維持することを目標としており、そのために、事業ポートフォリオの見直しや投資判断の厳格化などを行っている。また、デジタル化やESGへの取り組みも、資本効率の向上につながると考えている。本記事では、高橋氏の資本効率重視の経営哲学と具体的な施策を紹介する。
三菱商事 CFO 佐々木敏
三菱商事のCFOである佐々木敏氏は、財務基盤の強化に力を入れている。同社は、自己資本比率を20%以上に維持することを目標としており、そのために、有利子負債の削減や自己資本の増強などを行っている。また、デジタル化やESGへの取り組みも、財務基盤の強化に寄与すると考えている。本記事では、佐々木氏の財務基盤強化の経営哲学と具体的な施策を紹介する。
#### 財務基盤の強化は経営の安定につながる
佐々木氏は、財務基盤の強化は経営の安定につながると考えている。同社は、資源市況の変動や新型コロナウイルスの影響など、不確実な環境に対応できるように、財務面でのリスク管理を徹底している。その一環として、自己資本比率を20%以上に維持することを目標としており、2023年3月期には21.8%に達した。また、有利子負債は、2019年3月期の4兆円から2023年3月期には3.2兆円に減らし、財務レバレッジも1.5倍から1.1倍に改善した。これにより、同社は、資金調達のコストを低く抑えることができるとともに、将来の投資やM&Aに備えることができる。
#### デジタル化やESGへの取り組みも財務基盤の強化に寄与
佐々木氏は、デジタル化やESGへの取り組みも財務基盤の強化に寄与すると考えている。同社は、デジタル技術を活用して、事業の効率化や価値創造を図ることを目指しており、そのために、デジタル戦略本部を設置し、デジタル人材の育成や投資などを行っている。例えば、同社は、AIやIoTを使って、資源事業の生産性や安全性を向上させたり、物流事業の輸送コストや在庫管理を最適化したりしている。また、同社は、ESGを経営の中核に据えて、持続可能な社会の実現に貢献することを目指しており、そのために、ESG経営推進室を設置し、ESGに関する方針や目標などを策定し、実行している。例えば、同社は、再生可能エネルギーや水素などのクリーンエネルギー事業に積極的に投資したり、環境負荷の低減や社会貢献活動などに取り組んだりしている。これらの取り組みは、財務基盤の強化にもつながると佐々木氏は語る。デジタル化は、事業の収益性や競争力を高めることで、キャッシュフローの改善に寄与する。ESGは、社会的な信頼や評価を得ることで、資金調達のコストを低く抑えることや、新たなビジネスチャンスを創出することに寄与する。また、ESGは、投資家やステークホルダーからの要望や期待に応えることで、企業価値の向上に寄与する。
財務基盤の強化は経営の安定につながる
佐々木氏は、財務基盤の強化は経営の安定につながると考えている。同社は、資源市況の変動や新型コロナウイルスの影響など、不確実な環境に対応できるように、財務面でのリスク管理を徹底している。その一環として、自己資本比率を20%以上に維持することを目標としており、2023年3月期には21.8%に達した。また、有利子負債は、2019年3月期の4兆円から2023年3月期には3.2兆円に減らし、財務レバレッジも1.5倍から1.1倍に改善した。これにより、同社は、資金調達のコストを低く抑えることができるとともに、将来の投資やM&Aに備えることができる。
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