團伊玖磨生誕100年記念コンサート(コンサート鑑賞記録 4)

2024/5/4(土) 紀尾井ホール
指揮=齊藤一郎 演奏=読売日本交響楽団
プログラム:
歌劇「夕鶴」前奏、つうのアリア (ソプラノ=小林沙羅)
ヴァイオリンとオーケストラのためのファンタジア第1番(ヴァイオリン=小林武史)
交響曲第2番 変ロ調
祝典行進曲
混声合唱組曲「筑後川」 全曲 
合唱と管弦楽による「西海讃歌」(合唱=東京混声合唱団)

休憩含め、終演まで2時間半ほどかかる盛り沢山なプログラム。「つうのアリア」、ソプラノ独唱は可憐さ、意思の強さともこれからの「つう」役の指標となるもののように感じた。一曲のみというのがもったいない。「ファンタジア」のヴァイオリン独奏の小林氏は初演者ということもあり、音量はか細くやや頼りないものの、磨き込まれた表現がされていたように思う。氏以外の奏者にも取り上げてほしい曲。
交響曲2番は滅多に取り上げられない曲で、生演奏に接することができたのは貴重な機会。東洋(日本)風の旋律やリズムにあふれた開放的な曲で、多少長さは感じさせるものの、團氏の6曲の交響曲の中でも第6番と並んで聴きやすいのではないか。当日の演奏でもオケを豪快に鳴らした快演。個人的には、豪快さよりも芯の部分での力強さ(太さ)を求めたかったという気持ちはある。またホールが小ぶりなだけに、オケがコンパクト(確か12型)とはいえ響きが多少飽和状態だったかもしれない。
第2部では上皇・上皇后両陛下もご臨席に。祝典行進曲の管弦楽版(氏自身の編曲)は、吹奏楽を聴きなれれていると一瞬「?」と思わされる部分もある(冒頭トランペットなど)ものの、上品な仕上がり。続く2曲の合唱曲は、合唱(東混に加え、プロ声楽家による記念合唱団も参加)の繊細さと重心のある響きを持つ、充実した歌声が心に残った。最後は「花の街」を会場皆で歌って幕。
会場では直筆譜の展示、楽譜類のデジタル化など氏の遺したものを伝えていくためのクラウドファンディング告知など、単なる記念にとどまらない再評価に向けての機運も見られ、演奏の充実度とも相まって意義深いコンサートであった。

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